2014年03月09日 (日) 22:06
こんなSSを読みたいので探しています。どなたか御存じの方は教えていただけると助かります。出来れば50万字ぐらいはあると嬉しいです。
最初は創生する神様sugeeでやっていって、そのうち、神様降臨やって、最後は神様人間モードで降臨sugeeです。
……これを書き上げるのに、半日潰れたのは内緒だよ!
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目を覚ますと白い世界だった。
周囲を見渡す。全周囲、真っ白な世界だ。
光源は何処なのか。地面は何処にあるのか。一体、自分はなんでこんなところにいるのか。一体何時なのか。
疑問は多々あり過ぎる。というか分かることの方が少ないぐらいだ。せいぜいは自分のことぐらいか。
自分──東条勇気(とうじょうゆうき)。十八歳。今年受験という難行を迎えることになる高校生だ。
そんな自分がこんな恐怖がこみ上げてもおかしくない世界にぽつんと一人でいるにもかかわらず、恐怖がないことも恐ろしい。
「あー、夢かな」
明晰夢という言葉が浮かんだ。
夢であればすべて納得がいく。
受験勉強からの逃避が自分にこんな夢を見せているのではないか、と。
突然、僕を除いて何も色の無かった世界に色が灯った。
六十インチほどの巨大ディスプレイにパソコンやキーボード、マウスなどのセットが置かれた机。そしてすわり心地の良さそうなメッシュの椅子だ。そしてモニターには煌々とゲームのオープニングを照らし出していた。
『ファンタジーワールドメイカーⅢ』。
五年ぐらい前にはやったやりこみゲームで、どんなゲームかというとシムシティなどに代表される箱庭世界育成シミュレーションゲームといえば分かり易いだろうか。
プレイヤーは神となってファンタジー世界を作り上げていくというゲームだ。
聞きなれたやけに壮大な音楽が流れ出ている。
「ふっるいゲームだな」
思わずぼやいてしまう。
今は確か、Ⅴまで出ているはずだ。にもかかわらず、Ⅲだというのが少しばかり可笑しい。いや、これが夢だというのであれば納得がいく。自分がやったのはこのⅢまでで、それ以降のシリーズはやっていないのだから。
というのもファンタジーワールドメイカーはⅢで完結を迎えた、という者たちが多いぐらい、それ以降のシリーズが駄作になり下がったからだ。
音楽以外の製作メンバーが会社を辞めてしまったことが衰退を招いたと言われているが、僕もその意見には賛成だ。
Ⅲこそ最高だ。
馬鹿じゃないのと言いたくなるような細かな設定と多様性。
同じ世界は作れないと言いたくなるような箱庭世界は飽きることがなかった。
「久しぶりにやってみるのも悪くないよな」
夢から覚めたら、そして覚えていたら再びパソコンにインストールするのも悪くない。
僕は立ち上がる。
真っ白で床など無い世界で立ち上がるというのも変だが、自分の夢ならばこれもありだろう。
そして椅子に座った。
「ニューゲーム……あれ?」
New Gameというところにマウスを持って行ってクリックをするが、ゲームが始まらない。
「僕の夢だというのに……」
なんとなく不快だ。夢すらも自分の思い通りにいかないというのか。
「クリッククリッククリッククリック!」
カチカチカチという音が広がる。
「駄目だ」
反応がない。
そこで僕はContinueにマウスを持っていく。文字の色が変わった。
「コンテニューは出来るのか」
そしてクリック。
幾つか出来るセーブの一つにデータがあった。
そこに合わせて再びクリック。
「うわ、ひっどい世界」
広がったのは赤茶けた星だった。
「魔力素、精霊力。資源に至るまで皆無に等しいじゃ──って、これって魔大戦後じゃないか! 凄いなぁ」
魔大戦は最終戦争。現代社会で言うなら全面核戦争後だ。
これは狙ってもできるものではない。よほど計算に計算をした者にしか行き着かない世界だ。
「なるほど……夢だからなぁ。僕も目指したけど、できなかったし」
自分の夢だというのに少しばかり尊敬を覚えながら、登録ユーザー名を見る。
「ふはっ!」
思わず笑いがこみ上げた。
「創造神って! 創造神って! ははははは!」
かなり厨ニ病ちっくな名前だ。僕ではここまで恥ずかしい名前を付けることは出来ない。いや、だがこのゲームには相応しい名前かもしれない。第一、僕にはできなかった魔大戦を起こせる人物の名前なのだ。これぐらいでも良いだろう。
「はぁ、はぁ。笑える……ってここから星を元に戻さなくちゃならないのか……これは大変だな」
僕はまず世界の資源を真剣に眺める。
火、水、土、風の精霊力は皆無。光や闇などの他八種はあるけど、基本四種が皆無だというのが痛い。正直に言えば破棄して新しくゲームを始めたほうが良いぐらいだ。
でも先ほどNew Gameが出来なかったのだから、この酷い星で──
「この酷い名前でやるしかないよね」
覚悟を決めた僕は、夢が終わるまでの間、この星と付き合っていこうと決めた。
「まず最初にしなくちゃいけないことはなんだろうか」
ここまで酷い状況からの逆転劇というのがぱっと思いつかない。
「とりあえず、大陸の状況を見てみるか」
ストップをかけて時間を停止させるとマウスを動かす。
この創造神世界──名称が無いので僕が適当につけた名前だ──には大きく分けて五つの大陸がある。その大陸の状況を一覧に出してみた。
フルスクリーンモードで起動しているために少しばかり見るのが面倒ではあるが、真剣に細かな数字を眺めた僕は驚きを吐き出した。
「すごい!」
それは驚くような状況だった。
まず生命が殆んどない。
つまり様々な種族がいるこのゲームにおいて生物が殆んどいないというのだ。これは僕も心の底から驚いた。幾らなんでもここまでひどい状況はあり得ない。だが──事実だ。
資源がないのも確認したが、魔力素も精霊力もびっくりするほどない。
精霊力は自然のエネルギーみたいなもので、これがないと植物などが成長しないし、生物も病気になりやすい。
魔力素は基本となる資源で、これがあればあるほど魔法文化の発展が富む。
「どうするかなぁ。まずは……四大陸は破棄して、一つの大陸を回復させることをメインに考えるべきか」
神の御業で全ての資源を一つの大陸に強制移動させる。生物が死滅する可能性も多分にある禁断の技だが、今更そんなことを言ってられない。
神の御業も信仰ポイントを消費するために、そのポイントがあるかを調べる。これでなかったらどうしようか。僕は不安を抱きながら眺めて、安堵の息を吐いた。
「なんとかギリギリポイントはあるみたいだな……。というか全然なくなってきているのに、この頃少し上がってきているみたいだな」
折れ線グラフで推移をみていくとかなり前から0のラインを横這いしていた神への信仰がちょこっと回復して、少しずつたまってきていたようだった。
「これならなんとか行けるか。その前にえっと……」
水の精霊力が皆無のために、どの大陸の水も汚染が進み、毒に等しい状況だ。土の精霊力がないため、どこの大地でも植物が生息できないだろう。大陸はどこもそうであり、生物が生きるには過酷すぎる。
「これは……無理だ……」
全部を集めても一つの大陸を回すほどの資源がない。だったら──
僕は急いで島をピックアップする。
大小数々ある島を選ぶ。精霊力を見ながら、なんとか回せる最大の島を選ぶ。
「この辺か」
結構な時間が経ったとき──夢の世界で時間が流れているかには疑問がある──には候補として四つの島があった。その内の一つを適当に選ぶ。
「さて始めるか」
精霊力や魔力素、資源、生命などありとあらゆるものを一気にその島に移動させる。次にそれらの大陸の時間を停止させる。これで大陸に精霊力などが徐々に流れていくのを止める。そこからは細かな作業の開始だ。
島の一つ一つの時間を停止させていくのだ。
何百回にもなるクリックの後、全ての島の時間も止まった。
これでこの創造神世界で動いている島はたった一つ。全ての精霊力を集めたその島だけになったという訳だ。
「まずはこの島を回復させて、次にこの島で発生する資源を使って大陸を回復させていく……。ほんと長いなぁ……」
◆◇◆
「神は何も答えてくれない! もはや見放されたんだ!」
怒鳴り声に。そして殴打する音が後に続いた。
彼は頭を下げたまま、起こったことを頭から追い出す。
もし考えたら同意してしまうしかないのではないかと思って。
何がどうして世界がほろんだのかは分からない。彼は世界がほろんだ後に生まれた子供だったから。
空気は毒を持ち、大地に植物は実らず、水は毒を含んでいた。
種族問わず生存者はどんどんと死に絶え、それでも生きてこれたのは魔力素を用いて食料を生み出す魔学のアイテムがあったからだろう。吐き気を催すぐらい不味い食事ではあったが、それでもこれがない場所では同族食いなどすら起こって──滅びたという。
もはや神に頼るしかなかった。
しかし、どれほど祈ったところで神が助けをくれたりはしなかった。
全ての生き物は死ぬのが神の定めだと言わんばかりに。
確かにここまで世界を汚した数多の種族を神が愛するとは到底思えない。しかし、死にたくはなかった。
この期に及んで自分が助かりたいから神に祈りをささげるというのは間違っている。だからこそ神は助けてくれない。と言われても、世界がほろんだ後に生まれた彼からすれば、あまりにも理不尽な言葉だ。
彼は神の像に祈りを捧げる。勿論、彼だけではない。ここにいる生存者50名余は余暇があればいつでも神の像に祈りを捧げていた。
ぼろきれで作ったみすぼらしい像に。
──神を我らを御救い下さい。
「畜生! 畜生! これだけ祈っても神は助けてくれないじゃないか!」
「その口を閉ざせ! てめぇみたいなやつらがこの世界を汚したんだ!」
「うるせえ! いい加減、てめぇらだって神なんかいないって思ってるんだろうが!」
「糞が!」
ガツンと肉と拳が当たる音が響き、どうと倒れる音がする。
「祈ったって誰も答えてくれないじゃないかぁあ!」
泣き声が聞こえる。
続けて彼の隣でも泣き声が聞こえる。まるで連鎖するようにあちらこちらから泣き声が響きだす。
「神よ。何卒、我らに救いを──」
「泣くな! 神へ信仰を捧げることのみが助かる道なんだ!」
「それだって真実かどうかわかんねぇじゃねぇかよ!」
「最後の神巫女と言われた方のお告げだぞ!」
「昔に死んじまった女の言葉だろう! 真実である──」
ふっと世界が変わった。
変な空気だった。
いつもならする錆びついたような匂いがなく、もっと別の匂いがあった。それは決して不快な匂いではない。
ゆっくりとドラゴン族の一人が顔を持ち上げた。
「草だ」
彼もその言葉に弾かれたように顔を持ち上げる。聞いたことはあったが、目にしたことがない光景が広がっていた。大地が緑色のペンキを溢したように染まっていたのだ。
「神の御業だ」
呆然とダークエルフ族の一人が口にした。
それ以外に考えられない言葉を。