天才になれなかった少年と、天才にならなかった少年の話
2024年09月23日 (月) 17:58
本日更新ep.210間章・3「実際さ」の後がたりになります。
本編未読の方は読んでからお越しください。

蛇足と言うか、答え合わせ的なやつです。

例によって読みたくない方向けにちょっとスペース明けますね。
















幼少期の話は書くと(私が)ゲロ吐くので一旦飛ばしまして……

龍哉の中で「天才じゃなくてごめんなさい」の話は、大学3年時に区切りを迎えています。
後期課程に進級し、学部生としてギフテッド支援施設の見学を行い、現在の様子を自分で見聞きし、自分の中できちんと終わらせることが出来ました。

ところで大学卒業の時に、本書は10周年となります。
前後してメディア化の話が膨大に来ました。
彼の中では終わったのに、世の中が終わらせてくれなかったわけです。

いい加減に全て終わらせて欲しいと思った彼は大学卒業後、メディア化の許可を出します。
乱立はさせたくないという希望があったため、一手に全て引き受ける大手を介する事になりました。
その結果が「映画化に合わせたノベライズとコミカライズの同時進行」となります。

お分かりいただけると思いますが、初期企画段階が死ぬほど忙しいです。

結果として彼はプレイ時間と強さが直列で繋がっている異世界型MMORPGを継続することが困難になり、アウトロープレイの中ではトップ勢であったファーストクロニクルオンラインを引退します。

EFOのプレイでも、6章でちらっと書きました通り「ストーリーは裏でやっておく」と宣言して配信では行っていません。
ボンレスハムが時間のかかるアイテム収集などは代行しキャリーしています。


さて、トラキチといえば異常聴力ですが、彼のこの異常聴力はダイヴVR下でのみ発揮するVR過剰適応症の一種です。
彼は現実世界では手に入れることの叶わなかった才能を、VR環境下で手に入れます。
他者に真似できない才能を存分に発揮したスーパープレイを実現しました。

日々積み重なる当時の状況の確認業務。天才にはなれず、秀才として齧り付いてきた幼少期のフラッシュバック。紛うことなき天才の1人として君臨できたVRゲーム。

そんな中行われた第一回PvP大会で、彼は一人のプレイヤーに敗北します。

リーダーは一般には天才プレイヤーの枠ですが、本人が「訓練でなんとかなるラインギリギリ内側にいる(ep.99)」「反応って反復訓練だから、ぶっちゃけプレイ時間依存だよ。(ep.195)」などと言っている通り、どちらかというと秀才型のプレイヤーです。
もちろんセンスのある秀才ですが、抜きん出た天才ではありません。


映画企画などのために自身の書籍を読み返し、当時を反芻して精神的に不安定になっている最中に、
VR過剰適応症による才能を持っているはずの自分が、
秀才のプレイヤーに負けたわけです。

才能のある自分が努力の人に負けることは、かつて血のにじむ努力の果てにそれでも天才に並べなかった自分自身の否定になります。
何よりも幼い頃の自分の為に、彼は最強でなければなりませんでした。

乱立する打ち合わせで自分の自由にならないプレイ時間。自分が出られればすぐに終わるのに、メンバーに任せきりのためなかなか思うように進まないレア素材の収集。プレイ時間圧縮のために招いた上位陣のファイターはかの人の足元にも及ばないプレイヤーばかり。
日々の苛立ちは言動の端々に上り、視野を狭くしていきました。


6章は、ここから半年先の話になります。



ロイドの話もしましょう。
彼は天才になれたかもしれない人です。
セリスほどの突き抜けた才能はありませんが、適切な環境があれば頭角を現した可能性があります。
あくまでかもしれない、可能性がある、程度の範囲になります。

純粋に頭が良かったため、当時としては当たり前に周囲から「ギフテッド学級に通わないのか」と言われていました。

初期のギフテッド支援施設はトラの出身が「関東支援校」という言い方をされている通り非常に数が少なく、通うためには引越しが必須でした。
そうすると父は仕事のために単身赴任となるでしょう。仕事の人である父親が、自分のために仕事をやめたり転勤したりする未来はみえませんでした。
ただでさえ日本語のやや不自由な母を父から引き離す決断を、彼はできませんでした。
転校先のオンライン学校で初めてできた友達と離れてまでギフテッド学級に行きたいとも思えず、ズルズルと時間が過ぎていきます。

自分の勉学適性が他者より高いと言うことが明るみになるにつれ、周囲からのどうしてギフテッド学級に行かせないのか、それは教育ネグレクトではないのかという心無い言葉は母親に常に向き続けました。

そして中学2年の頃、一冊の本が刊行され、突然風向きが変わりました。

その本は教育の話題が大好きな人達の口を軒並み縫い付けて喋れなくし、明らかに無理に笑っていた母の顔は穏やかになりました。

「勝手に救われた」と言われればその通りですが、彼は確かにあの本に救われた一人でした。


ロイドがトラ小屋の配信からトラの生育環境を知るのは、トラキチがサザンクロスに加盟してからさらに半年後のことになります。




さて、ソロアサを読んでくれている友人複数人から11章頃に聞かれたことについて、当時はごにょごにょと濁したのですが、ここに正式に回答を置きたいと思います。


Q.トラって案件来るんだ……?

A.激重案件抱えてます。
コメント全2件
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高鳥瑞穂
2024年09月25日 00:00
>祀さん
"信頼できる代理人"が傍にいましたので、持ちこたえました。
案件ってレベルの話ではないのは本当にそうですw

ロイドはなんやかんやあってある程度落ち着いた彼のことを認めているからこそ、そこに躓いたのですよね。
荒れている状態の彼のままだったら、どれだけ強かろうと相方を譲ろうなどとは考えなかったと思います。
2024年09月23日 19:21
トラさん波乱万丈過ぎるというか、よく立ち直ってくれたんやなあ(^_^;) 案件ってレベルじゃねえww
ロイドはロイドで尊敬してるけど、拗らせまくってる時期の本人と揉めて、なんやかんやあってからもそこに躓いててって数奇何てレベルの状況じゃなかったのかww