2018年06月10日 (日) 20:30
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「桃姫伝」23話 更新しました。
彼女が先に盾を構えた。次いでボクが抜刀した。美しき刀身の切っ先に、彼女を重ねてみる。刃が冴えて、風は音もなく裂けた。「言っておくけれど、ボクの剣は何だって斬れる」。彼女はゆっくりと一回、まばたきした。たぶん、その時すでに勝負は決まっていた。彼女は不敵に笑った。「そう。でもワタシの盾はいかなる攻撃をも防ぐわ」。結果から言うと、彼女の盾の方が上(うわ)手だった。いくら斬撃を繰り出しても、盾を斬れなかったのだ。
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
だがボクは不服を申した。この結果は、剣と盾の関係性を示したのではなく、単にボクの実力の不足によるものだと主張した。なぜなら剣は、刃こぼれ一つない。刀身は幾度弾かれようと、なお美しい。つまり、本当は、力さえあれば、剣自体は、盾をつらぬいて然るべき、硬度を誇っている。どんなに斬れる剣でも、使用者が対象に適した力を刀身に注がなければ、結果は得られない。紙を斬るには紙を斬るに足る力を――、竹を斬るには竹を斬るに足る力を――、鉄を斬るには鉄を斬るに足る力を――、使用者が出せねば斬れない。逆を言えば、相応の力を込めれば、盾は斬れるはずだ、と。彼女は笑った。「なら使い手の実力はワタシが上でアナタが下というわけね」「……いや、それは」「あら、まあ、お逃げになって? ワタシは『ワタシの盾はいかなる攻撃をも防ぐ』と言ったソレを、現に証明し得たのだわ」「だから、ちょっと待ってほしい。斬れるんだ本当は」「本気出せばできる的なことを宣う男の人って……」彼女は、やれやれポーズで深くため息をついた。
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
「……でも、剣は悪くないんだ」「だとしてもアナタに、その剣を扱う資格、果たしてあるのかしら(´・ω・)」
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
みたびガクブルなボクを見て、彼女は口元を手で隠した。「ふふ、すぐガクブルしちゃうのね。冗談よ。斬り結んだときに思ったけれど、アナタの剣筋、悪くはないんじゃないのかしら」「此後の為、する気もないような慰めは、逆効果を生むときもあるのだと知るといいよ」「あら。慰める気なんて、からっきしよ。これは率直な感想であり、期待だわ。いつかまた、あなたが相応の実力を身に着けたのなら、いつでもお相手しましょう。ワタシはそれを、ひとつ楽しみにしておいてあげる」「どうも。でも、ボクはそれをできるけど、やっぱりできないんだ」「さっきから妙ちくりんなことばかり。はっきりしないじゃない」※斬りたくないものまでは、その限りではない。なんでも斬れる剣の注意書きを目でおって、ボクは苦笑した。キミを護る盾は、そのままでいい。そう思ってしまったからだ。「だからワタシの勝ちでいいのでしょう」「いや、でも本当は……」「やっぱり口だけなのね(´・ω・)」
((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル
ボクのガクブルで震える剣に、彼女はこぼした笑みを盾で隠した。
でわまた(*'▽')