2021年07月25日 (日) 20:41
こんばんは。
いつもお世話になっています(*^_^*)
番外編書きましたのでお時間ある時にでも!
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(朋佳の弟・景視点)
――暑いなぁ。
太陽の光がアスファルトに反射しているせいか、じりじりとした暑さが体に伝わってくる。
隣を歩く龍馬兄さんもそれを感じているようで、「暑っ」と言いながら手で扇いでいた。
いま僕達は映画館などの商業施設が多く連なっている場所に遊びに来ているんだけど、すれ違う人は小型の扇風機を持ったり扇子を持ったりしているのも珍しくない。
「なぁ、景。冷たい飲み物を飲みたくないか?」
「賛成です。近くのカフェに入りましょう」
「たしかあっち側によさそうなカフェあったよな。そこ行くまで怖い話でもしてくれ。涼しくなりたい」
「朋佳姉さん並のむちゃぶりやめて下さいよ……僕、霊感ないので恐怖体験なんてしたことないです。お祖父様に聞いて下さい」
「お祖父様ここにいな――あ」
「どうしたんですか?」
龍馬兄さんが突然足を止め、とある方向を見始めたので僕も彼に続く。
すると、原因がわかった。
――あぁ、なるほど。匠兄さんがいたのか。
少し先に街路樹が連なっていて日陰になっているところがあるんだけど、そこに匠兄さんが立っていた。
綺麗な女性達が三人ほど匠兄さんを囲まれて。
女性達は頬を染めて匠兄さんに話しかけているので、なんとなく察した。
「誘われていますよね、アレは」
「そうだなー。よし、声かけて助けてやるか。匠と会うのも久しぶりだし」
そんなこんなで僕達は匠兄さんの方へ向った。
少しずつ距離が近づくにつれ匠兄さんの声が聞こえてきたんだけど、そのせいで龍馬兄さんの足がピタッと止まってしまう。
「ごめん。俺、婚約しているんだ」
そう言って匠兄さんが薬指に嵌められている指輪を女性達に見せたんだけど、それを見て龍馬兄さんが目を大きく見開いている。
かと思えば、僕の両肩を掴んで声を荒げた。
「匠って婚約したの!? 俺、知らなかったんだけど! 仲間はずれ!?」
「してないですよ」
「えっ、じゃあ指輪は……?」
どうやら龍馬兄さんは匠兄さんの指輪について知らなかったようだ。
僕はお祖父様から聞いて知っていたけど。
大学では朱音さんの事が知られているから誘われることはないんだけど、会社では誘われる事が多いらしいので女性避けに指輪をつけているらしい。
僕がその説明をしようとした時、匠兄さんの言葉が聞こえた。
「近々結婚予定だし、いま新居探し中なんだ。彼女のことを愛しているから毎日会いたいし毎日声が聞きたいので他の女性について考えられない。だから、ごめん」
匠兄さんは眉を下げながらそう言うと女性達を避けて先に進もうとしたため、ばっちりと僕達と目があってしまう。
「あれ? 龍馬兄さんと景じゃないか。久しぶり!」
元気に手を振りながらこちらに来る匠兄さんと違い、僕達は困惑した表情を浮かべているだろう。
――新居探しはさすがに嘘ですよね!? 怖い!
「どうしたんだ? 二人とも」
「匠。お前、新居探しているのか?」
「聞こえていたの? 探しているよ。さっきも内覧会見てきたばかりなんだ。ほら」
そう言って匠兄さんが手に持っていた紙袋からパンフレットを取り出して見せてくれた。
ここにお祖父様がいなくて良かった。
「物件巡りしているのかっ!?」って叫んできっと取り乱していただろうから。
「龍馬兄さん。僕、少し涼しくなりました」
「安心しろ。俺も涼しくなった。まさか、身内に人怖系がいるなんて。物件探しって気が早すぎるだろ」
引き攣った顔をした龍馬兄さんは、匠兄さんの肩に手を伸ばして軽くトントンと叩く。
「いいか、匠。一人で物件選んだってしょうがないんだぞ。朱音ちゃんと見なきゃ」
「やっぱりそう思う?」
「そうだよ!」
「じゃあ、朱音誘ってみるよ」
「違う。そうじゃない」
龍馬兄さんが大きく首を左右に振った。
お祖父様が匠兄さんと朱音ちゃんが結婚できなかったら怖いって言っていた時があったんだけど、大げさだなぁって思っていた。
でも、今ならその意味がわかる。
愛が重すぎるよ。匠兄さん……!
「龍馬兄さん達、暑くない? この近くで美味しいかき氷屋があるんだ。朱音とこの間行ったんだけど、果物いっぱいのっていて美味しかったよ。一緒に行かない?」
「ちょうどいい。その指輪の話も聞きたかった。そこでじっくり聞こう」
「いいよ。この指輪、朱音に選んで貰ったんだ」
「それは本当に朱音ちゃんなのか? 現実の朱音ちゃんなのか?」
「えっ、何。急に怖いこと言わないで欲しいんだけど。朱音は現実にいるよ。何度も会ったことあるじゃないか」
匠兄さんが朱音さんと付き合うことになっても、きっといとこ達は全員朱音さんに確認するだろうなぁ。信じられないから。
そんな僕の予想は数年後に的中し、匠兄さんから報告を受けたいとこ一同が全員で朱音さんに連絡を取ることになる。
いなかったらいろんな意味で涼しくなりますよね!
ほんと朱音が実在してみんなほっとしていると思います(*^_^*)