2021年10月06日 (水) 21:46
(ミケ視点)
「匠が朱音に告白? あら、すてき。やっとね!」
まったりとくつろいでいるアタシとシロの傍では、夜乃が手を叩いてはしゃいでいる。
朱音と匠のことを見守っていたのは、人間だけじゃない。
アタシやシロ、それに五王家の座敷童の夜乃もだ。
ほんとにやっとだよなぁ……
何度、おまえらつき合えよと思ったことか。
「匠の告白がうまくいくといいけど」
「うまくいくんじゃない? 朱音、匠のこと好きだし。ねぇ、シロ」
「うん。僕もそう思う。それにご主人様、お守りを持って行ったし」
「……お守り? 匠のやつ、縁結び神社にでも行ってきたのか?」
告白を前に神頼みも匠らしいなぁと思いながら、シロを見れば首を左右に振っている。
「えっ、違うよー。ずーっと前から持っていたんだ。今朝、スーツの胸ポケットに入れていたよー。ミケおばあちゃん、見てない?」
「見てない」
「あの紙なんだっけー? えっと……あっ、そうそう。婚姻届ってやつ」
「「なんだって!?」」
私と夜乃の声が綺麗に重なった。
婚姻届だって?
匠、持っていってどうするつもりなんだ!?
「えっ、さすがに匠も朱音に告白する時に婚姻届けを出さないわよね? いくらあの子だって……ん? 匠だから出すのかしら? もうわからなくなってきたわ」
「もし、告白と一緒に婚姻届見せられたら二度見するよな」
「二度見どころか、三度見するわよ。しかし、長年五王家の座敷童をしているけど、こんなにも告白結果が気になるのは匠だけだわ。歴代ダントツ。まさか、婚姻届け記入済みじゃないでしょうね?」
「記入済みだよー」
「「記入してんのかよ」」
またアタシと夜乃の声が綺麗に重なってしまう。
お付き合い越えて結婚しろよ! と何度も思ったことはある。
でも、匠が婚姻届を書いているなんて知らなかった。
朱音、どう返事するんだろうか……?
気になる。すごく気になる。
たしか、夕食は店を予約しているって言っていたな。
明日から匠は出張だから、帰宅は遅くならないだろう。
よし、時間見て玄関で待機するか。