BOT作品です
2019年12月17日 (火) 17:31
異次元の魔術師 あらすじ
白馬優

ごく普通の小市民に生まれ。ごく普通の生活を送り、数少ない幸福に満たされ。
数少ない不幸を体験し。今まで生きてきた私達人類は或るとき。想像だ。にしなかった。
異常現象が起こり。突如空の切れ間から幻想空間である虹色の光がこぼれ落ち。日本呑み
ならず。世界各地を飲み込んでいった。

そして日本とその他の国々は幻想空間に飲み込まれてしまい。幻想都市として生まれ変わり。人間が普通に住めるようなごく普通な国とは全く違う。幻想虫が入り乱れ。異元種が
溢れかえる地獄絵図のような世界へと変貌を遂げるのであった。

エピソード0 異元種覚醒

「僕はどうして生きている。家族の皆は。此処は一体どこ?」

我を失った青年は荒野に誘われるかのように高速道路の真ん中をてくてくと呆然と前を見据えながら歩いていた。そんな時。彼の体に突如変化が訪れた。体中に蚊のような生物が充満して
いき。青年の体を包み込み。青年は自我を完全に失い化物と化すように。道路端に
いる罪なき人間を殺し尽くしていった。

「あははっ。まるで人間がまるでゴミのようだ。体が軽い。俺はもう自由だ」
「さぁそれはどうかしら」

不意を突かれるように青年の体は一瞬にして拘束用ロープで頑丈に縛られ身動きがとれなくなってしまった。けれど化物となった理性を完全に失っており。そのロープを素手で解こうともがき喘ぎながら。ただ一点を見つめていた。

「てめぇ一体何してくれる。許さねぇ!殺してやる!」
「どうぞご自由にけれど死ぬのは貴方の方」

青年の目の前に現れたのは急発進してくる大型のトラックだった。もう手遅れか。と息を
荒げながら何とか拘束ロープをとこうとするものの。横転を繰り返すばかりで解除不可能。
そして急発進してきたトラックは急にギアを変えて猛スピードで青年の眼前へと差し掛かかり。そのまま青年の体は無残にも轢き砕かれ。意識をロストした。
翌日。青年は一度死に喪に服すようにベッドで寝ているはずだった。けれど軌跡的というか傷が夜中の内に完全回復を遂げており、記憶は完全に消し飛ばされているが。意識を
取り戻していた。

「おはようどうやらお目覚めのようね」
「此処はどこ?」
「病院よ」
「どうして僕が此処に」

青年にはこの間の記憶はすっぱりと削除されているようだ。事故のショックが原因なのか。
それとも暴走した力による副作用なのか定かではない様子だった。混乱した頭を抱えた青年は椅子に腰掛けている黒い軍服を身に纏い。腰に剣を据えている。黒髪の美少女を見つめていた。

「何よ。そんなにジロジロ見つめて厭らしい。質問があるならさっさと言いなさい。
答えられる範囲なら答えてあげるわ」
「この間のことがさっぱりで、俺何かとんでもないことをしたのか?」
「えぇ。まぁ言うなれば通行人をずたずたに引き裂いていたわね。まぁ私達が止めたのだけどあのままいけば貴方人間に戻れなくなっていたかも」
「人間に戻れなくなっていた?」
「あっと私としたことがつい口が滑り過ぎたかしら。とにかくここで安静にしておくこと。
まだ麻酔が効いていて動くにも動けないでしょうから。それと貴方今現在日本軍の監視下に置かれてあるから下手に暴れたりしたら今度こそ殺されるわよ」
「あのそれって・・・・」
「それじゃ私は用事があるから」

青年は戸惑っていた。もしかしたら今自分はヤバイ状況にあるじゃないか。軍の監視下に置かれているのならいつ処刑されてもおかしくないということ。それに俺は一体何者だ。
どうして俺が人を殺さなくてはいけない。何も思い出せない虚しさが青年の体を徐々に蝕んでいき。緊張感による冷や汗が増していくのだった。

一方青年の体の様子を見終えた軍服の美少女。日本軍。第一防衛部隊。直属の綾波凪颯中将は日本軍機密機関。(マリオネット)。に出向き。異元種A(先ほどの青年との接触)の報告に向かった。機密本部の正門ゲートを通り抜けると、そのまま会員証を翳しゲートを潜り抜け。生体認証の確認を終えると。会員証を翳し。日本機密情報室の室内へと入室し。機密情報部の最高取締諜報部長である。鐘崎秀五郎監視長に報告を述べた。
「異元種Aとの接触の報告を伝えます。異元種Aの青年には事故後のショックによる
記憶障害を起こしており、未だあの暴走の意図は掴めないままです。今後も継続的に
異元種Aとの接触を試みようと思っておりますが確証を得る情報を得られないかと」

「使えない諜報部員だな。俺だったらもっと上手く」
「ジェームスお前は黙っていろ。儂は今凪颯と話しているのだ」
「へい。分かりましたよ。なら一つ凪颯。お前機密情報を彼に話していないだろうな
もしお前が情報漏洩で疑われるようなことがあれば」
「はいその点に置いては大丈夫です。手筈通りに済ませ置きましたから」
「ふむなら良い。凪颯引き続き異元種Aとの接触を試み給え」
「はい謹んでお受けいたします」

凪颯はその後日本機密情報室を退室し。ただ気に食わぬようにジェームスの方を睨みつけながらてくてくと歩いていった。凪颯中佐は機密情報部でもエリート中のエリートとして
この先の監視長候補にも名が挙がるほどの逸材だと機密情報部で取り沙汰されたことがあるくらいなのだが、上官であるジェームスクロスフォード大佐はそんな凪颯中佐を快く思っていないらしく。いつも上から目線で罵ってくる。そんなジェームス大佐を凪颯はむきに
嫌っているのだ。

いやいやながら一息入れようと。情報部室の近くある休憩所で、自動飯場機で炭酸ジュースを買い。ベンチに座りごくごくと一気に飲み込んだ。流石に肺につまり少し咽せたがお構いなく。飲み終えるとそのまま缶に怒りを込め強く握り潰すと。近くのゴミ箱に入れ。その場を立ち去ろうとした。時だった不意に後ろから声が聞こえたのだ。

「珍しいですね凪颯姉さんが炭酸ジュースを頬張るなんて、いつもなら大人の苦いブラックコーヒーに手をつけるはずなのに」
「お前は確かアメリカに転勤していたはずだが・・・・」
「はい!私こと四宮伊織は愛する凪颯姉さまのことが心配でここ日本に舞い戻りました」
「全く。相変わらずなのだな。お前は」
「凪颯お姉さんこそ何かあったのですか?そんなに考え込んだ顔して」
「そんな風に見えるか、やっぱり」
「元気だして下さい!凪颯姉さんが元気でないと私も任務に励めません。これ飲んでください!お礼なんて要りませんから私は凪颯姉さんが元気であればそれだけで十分ですから
早く良くなって下さいね」
「あぁありがとう。伊織。いつか必ず礼をする」

一方都立の病院ではベッドの中で悶え苦しみ。恐怖に怯えるあの青年の姿があった。
自分は何者であるのか思い出せそうでいるが、昨夜のことは何も思いせず。ただ目の前には
ぼんやりとした病室の景色が写りこんでいた。
青年の体には麻酔が打たれ包帯でぐるぐる巻きにされ身動きが完全に取れない状態だった。
無理矢理でも体を起こし外に出ようと思い行動してみようとするがやはり、不可がかかりすぎて自分の力では限界があった。
それに黒髪の軍服の美少女が言っていた。今は日本軍の監視下に置かれていること。そして
自分が逃亡することがあれば再び束縛され処分されてしまうかもしれない状況。そんな中で病室を抜けることなど出来やしなかった。

「おりこうね。ちゃんと待っていられたじゃない」
「あぁそうだな。なあ教えてくれ俺は一体何者だ。どうして俺が人を殺した」
「本当に何も覚えていないのね。分かったわ。ご褒美として明日。此処から出してあげる。
そして貴方の本当の正体を教えてあげるわ。「本当に何も覚えていないのね。分かったわ。ご褒美として明日。此処から出してあげる。
そして貴方の本当の正体を教えてあげるわ。だからそれまで今日はゆっくりお休み」」
「あぁ。そうする」

彼女の言葉に安心したのか自然と楽になれた気がして、今まで自分を蝕んでいた嫌な疲れがとれ。急に強い眠気に襲われ。そのままベッドの上で深い眠りにつくのであった。


 

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