2024年12月19日 (木) 21:57
飄然草第八部「そこに音楽があるから」を投稿しました。書きたいことがどんどん出てきて、結局全十四回とけっこうな分量になりました。一日一話ずつ公開する予定です。年をまたいで元日の夜が最終回。
振り返ってみると、今年はあまり執筆しない年でした。去年の夏に不調続きのパソコンを処分してから手書きでの執筆に切り替えたのですが、キーボードと文書作成ソフトに浸かりきって堕落した現代人には、いまさら手書きで執筆するのはなかなか厳しいものがありまして。
それで今年の夏、ついにポメラの購入に踏み切りました。キングジム社の販売している、キーボードで文章を打ち込んでテキストデータを作ることができる装置です。言い換えれば、印刷の機能のないワープロですな。スマートフォンと通信してデータをやりとりすることができるので、ポメラで執筆して、できたデータをスマホに移して、スマホで小説家になろうに投稿する、という手順になります。
私がポメラというものを知ったのは、小説家になろうで活動しはじめたばかりのころでした。あるユーザーさんのプロフィールに、ポメラで執筆していると書いてあったのです。どんな装置なのか調べて、面白そうだとは思ったものの、当時は導入にはいたりませんでした。それが、十年以上もたった今になって使うことになるとは、息の長い伏線が回収されたというところでしょうか。
さてそんなわけで我が家にお迎えしたポメラ君ですが、初期不良があって修理に出したり、操作に慣れるのに時間がかかったりで、本年はあまり成果をあげておりません。この装置で本格的に執筆した初めての作品が、今回の「そこに音楽があるから」です。
本作は、これまでの私の人生における音楽とのいろいろな関わりを書きつらねたものです。音楽を聴いたこと、演奏したこと、どちらも取り上げています。文中に登場する楽曲のジャンルもクラシック、ポップスから、アニメソング、ゲーム音楽、ボカロ曲、童謡、聖歌、はては三味線漫談にまで及びます。どんな読者を想定しているのかと言われそうですが、書きたいものを書くのが第一であって、ターゲットなんかは知ったこっちゃありませんな。
これだけ好きほうだい書いたにもかかわらず、音楽についてはまだ書き残した話題があります。飄然草の第何部になるかわかりませんが、もういちど筆をとることになるでしょう。
執筆のほうはアレだった今年ですが、読むほうは例年どおり好調で、いろいろ面白い作品に出会いました。ローマ帝国支配下のブリタニアを舞台とするロマンス
「月の戦士」(BUTAPENN作)、えげつない世界観にもとづくロボットアクション
「デッドエンド・グノーシス」(深津弓春作)、文化祭で受け持ちの生徒と組んで演奏を披露するハメになった中年教師の物語
「僕と一緒にギターを弾かないか?」(中條利昭作)、見習い魔女をめぐるいろいろな騒動
「マメーとちっこいの ~ 魔女見習いの少女は鉢植えを手にとことこ歩く」(ただのぎょー作)、人と妖怪のあいだに生まれた娘が後宮に入って暗闘を繰り広げる政治劇
「斉天公主――その一笑、四海を傾けたり」(ミナミミツル作)などなど。
出版された本では、罵り言葉の分布について調べたドキュメンタリー『全国アホ・バカ分布考』(松本修著、新潮文庫)、東ドイツに留学した日本人学生を主人公とする歴史青春小説『革命前夜』(須賀しのぶ著、文春文庫)、多元宇宙を股にかける純愛と浮気の物語『運命の人は、嫁の妹でした。』(逢縁奇演著、電撃文庫)、水滸伝内外の様々な問題を掘り下げたエッセイ『水滸伝の世界』(高島俊男著、ちくま文庫)、チンケな魔法を使う少女が国家的謀略や戦争に巻き込まれる『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』(T・キングフィッシャー著、ハヤカワ文庫)などが面白かったです。
今年は、初めて読書メーターというアプリを使って読んだ本の記録をつけておりました。それによると、今年読んだ本は六十九冊。まだ残り何日かあるので一冊か二冊は増えるかもしれませんが、多いような少ないような、微妙な数ですな。
最後に、来年はもっと多くの人が心おきなく読書を楽しむことができるようになるといいな、と祈りを述べて、本年の締めくくりといたします。みなさま、よいお年を。
『パン焼き魔法のモーナ、街を救う』は遊佐さん向きかもしれません。カバーのイラストや訳文の調子は可愛い雰囲気なのですが、物語の筋立てはかなり骨があります。
ポメラについては、私もまだ評価が定まっていません。もう少し使ってみて、どれぐらいの成果があげられるか、どれぐらいの快感が得られるか、そこらへんがポイントになるでしょう。