空色杯応募作品ライナーノーツ
2025年06月26日 (木) 22:49
カンサーです。
小説大好きぺんぎん系VTuberの天野蒼空(あまのそら)様が主催されている空色杯という企画へ、2025年2月から6月にかけて、計5作品応募したのでライナーノーツを書きました。
提示されたお題からイメージを膨らませて制作された文芸作品を募集されている企画で、基本的には「500文字未満の部」と「500文字以上5000文字以下の部」の2部門へ各1作ずつ応募できる形式であり、たまに「500文字未満の部」のみ募集する回もある、ということのようです。
なお、私の初参加は今年ですが、空色杯自体は2023年から開催されているようです。



◆空色杯ハーフタイムフェスティバル
お題:空色

【500文字未満の部のみ募集】
『階(きざはし)の瞳』
https://ncode.syosetu.com/n7526kd/

Xでたまたま見かけて、文字数が少ないのですぐ書けそうでしたし、内容も思いついたので初めて応募しました。
お題である「空色」に、単なる空の色以上の意味を持たせたいと思って書きました。
また、この頃に見た『カルキ 2898-AD』というテルグ語映画の影響もあります。映画自体は完結していないこともあってぼちぼちといった印象なのですが、陰鬱なディストピアSF描写に刺激されたので、本作もそういう話になりました。
壮大なディストピアSFを500文字未満ですっきり&きっちり終わらせる、前向きで分かりやすいエンタメにする、ということを目指しました。
塔主は本来決して私利私欲の人物ではなかったものの、長く生きるつれ手段と目的が逆転してしまったイメージです。



◆第17回空色杯
お題:提示された効果音(ヒモで引っ張るタイプの蛍光灯を点ける音)

最初、お題となっている効果音はカセットテープを再生するボタンを押す音に聞こえました。後半のチカチカした音には最初は気付きませんでした。
まず、昔プレイした『Fallout3』のようなポストアポカリプス世界でカセットテープを集める話を考えました。
後からお題のチカチカ音に気付き、「ボタンを押す→電球が点く」音に聞こえたので、ブーボックスのボタンを押すと電気が点く地下室の話にしようと思いました。
当初は500文字未満の部のみの応募のつもりでしたが、内容的にはカセットテープの話のほうが面白そうだったので、500文字以上でカセット集め、500文字未満で地下室の話をすることにしました。(結果的にそれらの要素はほとんど関係なくなりましたが。)

なお、効果音は、他の方の作品を読んでから聞き返すと、明らかにヒモを引っ張って点けるタイプの蛍光灯の音でした。

【500文字以上の部】
『ソング・オブ・プレイ/南へ渡る鷲の歌』
https://ncode.syosetu.com/n2517kj/

『Fallout3』からの連想でアメリカ、プレイ中の『ゼノブレイドクロス』からの連想でロサンゼルスを舞台にすることをまず検討しました。後にグーグルマップを見ながらCopilotに相談して、パシフィックコーストハイウェイからビバリーヒルズになりました。
カセットテープ時代のアメリカの人気曲をモチーフにしたいと思いつつも、私はよく知らないのでCopilotに相談しつつ、Spotifyでも何曲か聞いてみて、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』を採用しました。
そして、物語も、カセットテープを集める話ではなく、『ホテル・カリフォルニア』のジャケットに写るホテルを探す話になりました。
作中に実際の楽曲名を登場させることも考えましたが、何となく抵抗があったので作中では伏せています。
一応、曲のイントロ部分をお題のチカチカ音に当てはめましたが、これはかなり無理がありますね。
なお、作中で「「気楽にやれ」と無責任に歌い上げ」ている曲は『Take It Easy』です。

登場人物の名前もCopilotに相談して決めました。一応、作中では年齢や性別を明記していませんが、何となくノアはノーマン・リーダス、カイルはブラッド・ピットのイメージです。
2人の移動ルートはグーグルマップを眺めながら考えました。
内容的には、2人の感情の湿度は高いが文体は乾いている、というのを目指しました。
ノアとカイルの関係は単なる友情よりはややじっとりしているイメージです。
この世界では、人口が激減しているために他者との出会いが貴重であり、誰もが出会いを求め孤独に生きているイメージです。
今のところ公式設定ではないですが、ノアにはかつて妻と幼い子どもがいたが太陽嵐で失った、ノアはかつてそれほど家族想いではなかったが失ってから後悔した、SUVの持ち主はカイルの元カレ的存在で突然カイルの元を去り旅に出た(理由は不明だが死期を悟ったとかかも)、といったイメージを持って書いています。
世界が崩壊した原因である太陽嵐云々の設定はCopilotに相談して考えました。(設定することは必要だが本作の肝ではないため。)

ひとまずの旅の終わりの場となるホテルで、SUVの持ち主が死んでいたという結末でもよかったのですが、何となく死体を出したくなかったのと、どこかで元気にやってるかもという希望を残したかったので、行方不明にしています。
カイルがビバリーヒルズのホテルを目指したのは、元カレが旅に出るなら好きなカセットのジャケットの場所だろうという根拠の薄い仮説のためですが、作中で書いていないので分かりにくいですね。

前に見た『ウォーリアー』や『戦場のメリークリスマス』のような、「愛してると言えない男たち」映画の余韻を引きずって書いた感じもあります。
ラストシーンでタバコを吸うのは、『ニンジャスレイヤー』の『ラスト・ガール・スタンディング』の影響です。

本作は、空色杯応募作の中では割と気に入っているほうですが、読み返すと描写不足で分かりにくいところが多々ありますね。

タイトルは、洋画の『原題/邦題』のイメージです。
ここでの「プレイ」は「prey」です。
bird of prey(猛禽類)という英語がかっこいいので使いたいと思いました。
猛禽(鷲)の歌、といったイメージですが、prey自体には犠牲者という意味もあるので、犠牲者の歌とも読めます。
「鷲の歌」はイーグルスの歌を指しています。
当初はカセットを集める話にするつもりだったので、宝(獲物)を狩り集める猛禽のイメージもありました。

【500文字未満の部】
『ネスト・オブ・プレイ/比翼の止まり木』
https://ncode.syosetu.com/n3787kj/

上記の後日談です。本作単独でも読めるようにしたつもりですが、結局分かりにくいし、説明で文字数を使ってしまったことは反省点です。
お題の音=ブームボックス電球も話に生かせていないですね。
一応、2人の思い出の品ではあるし、停止ができないとか、歪に息を吹き返したとかの象徴性もあるにはあるけど。

私の過去作に『氷のお姫さまと、きれいな宝石(はらわた)』というものがあって、ひどい目にあっても頑なに旅に出たがる旅人が出てきます。
私の中で、もし「旅人はなぜ旅に出ようとしたのですか」と質問されたら、「旅人だからです」と答えよう、というストーリーがあったのですが、本作のカイルも似たようなイメージです。
カイルは旅人だから、止まり木で休むことすらあまりできず、すぐに旅に出てしまった。しかし、それでも戻ってきた。これは実はすごいことというイメージです。
もしかしたらSUVの持ち主を探しに行っていたのかもしれません。
ノアに肩入れして見ると、勝手に出て行って突然戻ってきたカイルはひどくも映るけれど、ノアがどうこう言える立場でもないと言えばないんですね。
また、ノアもただ待っているだけでなく、やがて旅に出ることにしたこともポイントです。
最後の「次は北へ行こう。それから東へ」は意味深長にも聞こえるけれど、地図を見ればカボサンルカスから陸路で新しい場所へ行くなら、ほぼそのルートしかないのが分かるというずっこけ感が隠し味です。



◆第18回空色杯
お題:提示された効果音(チョキチョキとハサミが鳴るような音)

今回のお題はすぐに何の音か分かったのでそのままハサミの音として書きました。2作ともカニが出てくるのはもう少し工夫ないんかと思うところですが、まあカニは可愛いからいいかと思うことにしています。

【500文字未満の部】
『カニ剃り』
https://ncode.syosetu.com/n3496kq/

可愛い感じの話にしようと思って書きました。
理髪店&ロンという名前の男性という組み合わせは『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』からの連想です。
作中には出ませんが、視点人物の名前を出すならフーにしようと思っていました。龍(ロン)と虎(フー)でかつて争っていたのかも、と思わせる狙いです。
カニは、『ニンジャスレイヤー』本編にたまに登場するカニ型ドロイドや、ニンジャスレイヤー公式X上でたまに登場する謎のキャラ、ゴウランガニからの連想です。
作中世界の歴史は、おそらく大戦があって、戦力として兵器生物が製造(改造?)・投入され、それらが野生化して『86-エイティシックス-』のレギオンみたいになりかけたけど、世代を重ねて無害化してきている……というイメージです。
ロンの「俺たちのように」というセリフは、ロンたちも兵器人間だったけど力や凶暴性が弱まったという意味か、あるいは憎悪や敵意が弱まった意味か、どのようにも取れるイメージです。
ラスト前にフーがロンへ絆創膏を差し出す案もあったけど文字数の関係でボツりました。
空色杯応募作の中では気に入っているけれど、読み返すと省きすぎで分かりにくいところもあって反省点は出てきますね。
しかしタイトルがぞんざいすぎる。

【500文字以上の部】
『ミアのウェディングドレス』
https://ncode.syosetu.com/n6586kq/

こちらも可愛いメルヘンにしようと思って書きました。小さい女の子も書きたかったです。
執筆中は忘れていましたが、モチーフの一つはオムニバス短編集風のアニメ映画『迷宮物語』中の『ラビリンス*ラビリントス』です。今年、近所のミニシアターの復刻上映で見ました。主人公のさちちゃんが信じられないくらい可愛いんです。サブスクにもあったりするのでそこだけでも見ましょう。時計の中に入るとかそのままですね。口紅の代わりにお化粧シーンを入れました。
内容は全然違いますが、何となく酒井駒子先生の絵本や『パンズ・ラビリンス』のイメージもあります。

また、時代を設定するのが難しかったです。時代は明記していないのでファンタジー世界なんですとか、どうとでも逃げられるとはいえ、執筆時のイメージが適当過ぎれば違和感が出ると思い、Copilotに相談したりWikipediaを見たりして、ランタンや手回し式電球の普及状況とかを軽く調べました。ざっくり19世紀くらいのイメージです。

ミアを勇敢で行動的でタフで思いやりのあるヒロインにしたかったですね。5歳くらいのイメージです。
お兄さんをヒーロー的な憧れの人ぽくする案もあったけど、ミアを一番かっこよくしたかったので、結局お兄さんはちょっと意地悪でダメそうな人、でも後から心配して見に来るような可愛げもある人にしようと思いました。
また、プロット作成中のライブ感によって、ミアと仕立屋のおばあさんのシスターフッド感をほんのり狙うことになりました。
ミアのおばあさんと仕立屋のおばあさんはかつて親密な関係で、特に仕立屋→ミア祖母への感情には特別なものがあったが結ばれず、その未練ゆえに仕立屋は縛られていたけれど、ミアが解放した、というイメージです。

ウェディングドレスも途中から生えてきた要素です。本作における夢の象徴ですね。
ミアはウェディングドレスを着ることが夢だけれど、それはシンプルに綺麗だから憧れているだけであり、現時点で好きな人がいるとか、結婚自体に憧れがあるとかではないことがポイントですね。
だから仕立屋にも「そんなにウェディングドレスが気になるならいっしょに着ましょうよ、何なら一人で着てもいいじゃない」と言うんです。
もちろん仕立屋はドレスを着られなかったこと自体が未練なわけではありませんが、何か納得したか、想い人の孫の元気な姿を見て満足したのかもしれません。

正直、空色杯応募作の中でも分かりにくいし、はっきりしたオチもないので反省点が一番多いんですが、振り返ってみると気に入った要素もありますね。
しかしタイトルがぞんざいすぎる。

以上です。
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