2020年10月25日 (日) 15:23
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良い点
途中までは、展開も早いし、それなりに楽しめていた気もします。作者は現役の薬剤師なのでしょうか、なかなか物分かりの悪いお客様を相手にしていると苦労も多そうで、心中お察しいたします。職業の経験が生きているのか、主人公のスタンスがとても先進的ですし、近代(なのかどうかは歴史に疎いのでわかりませんが)医学的で、その思考が世間によい影響を与えそうです。
どんな影響を与えるか、本職っぽい方ですので楽しみです。
気になる点
しかし、冷徹貴族が登場してからというもの、『冷徹貴族の近くに行きたくない』、『貴族のたしなみなんてどうでもいいから、薬作りたい』ばっかりで話がワンパターンになりがちです。
どこの国がモデルかはわからないものの、身分が違えば人の扱いもこういう風になるでしょうし、ディズニーやドラクエみたいに王族や貴族と気軽に話しかけられる世界観のほうが間違っているのは重々承知ですので、あの冷徹貴族を出すな! とは思いません。ですが、それにしたってねちねちと性格が悪い描写が続くために苦痛でしかなく。
それが一回や二回ならまだしも、四回もありさすがに疲れてしまいます。RPGの負けイベントが4回もあるような気分で、アンパンマンのように新しい顔を得て逆転するようなフラグでもありません。
また、主人公が貴族となってからは物語の進み方が非常に遅くなり、勉強、試作、勉強、貴族の常識を確認、勉強、冷徹貴族に会うみたいな感じで今は何を目的に動いているのかすら見失ってしまいそうなほど。平穏に生きたいとは言いつつも、その目標は非常にふわっとしており、物語がどこを目指しているのかわからない、主人公が最終的にどこを目指しているかが明確ではない。『大目的』、がないんです。
例えば、平穏に暮らすためには
1:貴族でも飾らなくていいという風に意識を変える
2:貴族の身分を捨てて、元の平民に戻る
3:冷徹貴族をバレないように毒殺に持ち込む
4:諦めて慣れる
みたいなゴールを設定する。それが大目的。そして、大目的を達成するために小目的や中目的が必要なんです。それがあれば物語がより楽しくなります。
大目的:魔王を倒すために
中目的
1:聖剣を手に入れるために→聖剣の噂を調べる→聖剣の修理に必要な材料を探す→材料を掘るための坑道に住み着いた魔物を排除
2:空へ浮かぶ魔王の城への移動手段を得るために→七つの宝玉を集め、不死鳥をよみがえらせる→宝玉を探す→宝玉を譲ってもらうために各地の人達の頼み後を聞いたり、宝玉を守る龍を倒す
3:仲間を探す→上記の二つも兼ねながら各地で人助けを行う→そこで凄腕の戦士や魔法使い、僧侶などを探し、また国の兵士、騎士団などに自身の力を認めさせる
と、こんな感じで、1つの大目的、、三つの中目的、そしてそれぞれの中目的に小目的がいくつか。こんな感じで構成されているべきなんです。
大目的:平穏に暮らすために
1→なんやかんやして薬の腕で信頼を勝ち取る→平民の協力なしじゃ作れない薬を作る(抗血清とか?)→冷徹貴族「平民の血液から作った薬だなんて!」→抗血清を使わない冷徹貴族死亡→なんやかんやあって、抗血清をきっかけに平民との交流が増える→ハッピーエンド
2→なんやかんやして薬の腕で信頼を勝ち取る→この薬は現地で調合しなければ……→遠い地で監視付きで材料の採取→見張りに吹き矢かなにかで眠らせる→逃げる→遠くでの生活が始まる……ハッピーエンド?
3:なんやかんやして薬の腕で信頼を勝ち取る→いろいろあって、冷徹貴族の薬を作ることに→ヒ素の毒、この世界ではまだ試されていないようだし、奇病ということにしてちょっとずつ盛って殺しちゃえ→死んだ、ハッピーエンド!
4:なんやかんやして薬の腕で信頼を勝ち取る→さらに信頼を得る過程で、隣国との戦争が起こり、籠城戦となる→主人公は疫病に対する衛生指導(手を洗う、マスクする、死体を焼く)を的確に行い、逆に敵にはうんことか死体を投げつけて疫病をばらまいて籠城戦に勝利する。→病から民衆を救い、逆に病を用いた武勲により冷徹貴族でも簡単に手出しできない身分となるor後ろ盾を得る→主人公を信用しなかった冷徹貴族は死亡→ハッピーエンド
2と3、4と1は同時に進行してもいいかもしれませんね。1を目指しつつ、ダメなら4を目指そう。2を目指すために、厄介な冷徹貴族を始末する3を遂行するというスタンスなら、どちらのルートへも逃げられますし。ところで、こんな感じでどんなルートでもなんやかんやして『薬の腕で信頼を勝ちとる』必要があるので、これが一つの中目的。そのほかのルートでも、中目的が一つは必要になるはず。
と、まぁ……最終的に私が言いたいのは、まずは大目的を定めること。そして中目的を定めること。そうすれば、自然と小目的も定まっていきますので、主人公が目指すべき方向性が見えてきます。
また、世界観を垂れ流したいのはよくわかりますが、勉強や日常生活ばかりを描写するばかりではなく、物語を進めるための行動を描写するべきだと思います。
まだ、『初めての魔法』までしか読んでいませんが、主人公がだらだらと流されるだけのお話に疲れてしまいました。感想を書くという約束がなければ、第二章に入る前にギブアップしていたかもしれません。
最後に、私よりも三幕構成に関する説明をうまくしてくれる方の動画があるので、動画内で説明されている各作品と合わせてごらんください
https://www.nicovideo.jp/watch/sm34764041
一言
私も歴史に詳しいわけではありませんが、天秤は紀元前5000年前からありますし、ピラミッドの壁画やギリシャ神話の星座になるほど古くから存在するものが存在しない世界ってどうなんですかね……薬の扱いについての知識なんかは良いのですが、そういったことへの知識へもつけたほうがいいと思います。
あと、間を表現するのに『……』を使いすぎない、開業を利用し過ぎない。記号や改行に頼らない表現方法を身に着けたほうがいいと思います。