2021年10月15日 (金) 12:19
「もう、一年前なんですね」
「……そうだな」
9月のある日のこと、隣に立つ白河小夜《しらかわさよ》の呟きに、俺こと江波戸蓮《えばとれん》は静かに返した。
視界には、なんやかんやではっきりと覚えてるなんてことのない道路が映っている。
俺と小夜はここで出会った。
あの頃の俺は、何もかもを諦めていた。
姉貴を覗いて身の回りには人の影は無く、ただ孤独の中に迷い込んでいた。
もう今や懐かしく、そして実はその頃の心境はちょっとした黒歴史に感じている。
……実際、今の俺も昔の俺も、対して変わらないかもしれないが。
でも、昔と違って今は一人じゃない。
少なくともそれは明確であり、断言出来る。
偶然、虐めを受けた後だったらしい小夜が道中で土砂降りの雨に打たれていて。
放っておくと目覚めが悪くなる、というひねくれた理由でたまたま傘を押し付けて。
そしたら、一年経って心が晴れやかになっていたという。
本当に懐かしい思い出だ。
最近時が経つのが異様に遅く感じてしまうのは、まあ気のせいだろう。
……まあだからって。
なんで今年も暴風警報にはならないレベルの台風が直撃してるんだ……!?
この時期に台風が来ること自体珍しいのに、去年と全く同じ条件になるものなのか。
「……早く帰らないと風邪ひくぞ」
そんなことを考えながら、俺は隣で目を細めている小夜にそう声を掛ける。
俺との出会いを懐かしんでくれるのは嬉しいし、その海のような瞳は大変美しいのだが。
小夜の提案で立ち止まったはいいものの、少しずつ体が濡れてきてしまっているのだ。
傘があるにしても1本だし、風が吹いているからあまり意味を成してないのも良くない。
……とりあえず色々な意味で言っておこう。
台風マジでふざけんなよ、と。
雨雲を見る目が遠くなった俺だった。
「蓮くんが、ですか?」
そんな俺に、小夜はそう返した。
風呂も入らず布団に飛び込んだことの馬鹿さを思い出してしまう。
……実際に馬鹿は風邪を引かない体質で人間できていて欲しかった。
意味不明な有り得ない考えを抱きつつ、俺は小夜から目を逸らす。
「ふふっ、冗談ですよ。帰りましょうか」
「……そうだな」
趣味の悪い冗談だよ全く。
そう眉を顰めるが、何だか嫌な視線で見られているような……気の所為だと思いたい。
小夜を見ないようにしつつ、雨に濡れないよう俺は少しだけ歩く位置を変えたのだった。
というわけで、「小説家になろう」だとこの作品が公開されて丁度一年が到達致しました!
この作品は一応、さーどの処女作故にとても感慨深く思っております。
……ただ。
とりあえず祝っておこうと思って短いストーリを書きましたが、祝うとしてもなにしよう?
読者様からの質問(作品設定など)とかに憧れてましたし、一定数来たら別の場所で公開しましょうかね。
まあ多分1件も来ないけれど。Twitterとかできまぐれ裏設定暴露とかしてますし。
とにもかくにも、更新が最近激遅ですが読んでくださってる皆様、大変ありがとうございます。
不定期になるかと思われますが投稿は続けていく所存ですので、どうかこれからもよろしくお願い致します。
……ちなみに、次の投稿は未定ですがハロウィンSSは執筆しようと考えています。
ではまた……と言いたいところですが、最後に宣伝を←おい。
実はさーど高校生でして、二ヶ月前開催された「カクヨム甲子園」に応募しておりました。
LS部門、SS部門両方カクヨムで投稿しておりますので、宜しければぜひ。
LS部門「永遠(ぜったい)に勝たせてくれない幼馴染な君。」⤵︎ ︎
https://kakuyomu.jp/works/16816700427242473477
SS部門「愛が重い幼馴染と穏やかな朝のひと時。」⤵︎ ︎
https://kakuyomu.jp/works/16816452221406110660
どっちも幼馴染系だという指摘は受け付けておりません。
今度こそ、ではまた……