無計画なオレたちは!!  第三章の雑感
2021年11月17日 (水) 21:32
第三章-どうしてこうなるんだ異世界-の裏話や雑感です。


・第三章のコンセプトについて
 アステルを離れてしまったらどうなるかを書いた章であり、そして仲間が真の危険に晒されたらイキョウがどうなってしまうのかという章でもあります。
 新天地と新しい登場人物との関係ということで、話が長くなってしまいました。
 登場人物が多いので、一部の書ける分だけを書きます。
 
 そして、ようやくイキョウという人物が変な奴であるという掘り下げが出来た章です。

・イキョウについて
 主人公らしからぬ登場人物として書いてます。無駄と矛盾が多い人物でもあり、物語の主軸すらもブン投げる。そんな人物を物語の主軸にしているのがこの物語です。
 よくあーだこーだ言ってますが、イキョウが真に怒りを覚えるのは、とある一点を除いて、自分の周りの者が純粋に汚されたときです。
 やろうと思えば人物分析も、人の心も暴くことも出来ます。あの目をすれば。
 上っ面が厚くて、心の奥が見えないんです。
 普通の人と思っていた奴が、実は歪んでいて、段々とズレを見せて行く。そのズレの第一歩が第三章のイキョウです。
 元々、まともな道を歩むことが出来ない人物です。
 多くは語れませんが、この男の本質は第五章で見られると思います。
 ただ、バカです。これはずっと揺るぎません。

・ソーエンについて
 主人公らしからぬ登場人物の相棒として書いています。絶世の美貌を持った故に、まともな道を歩むことが出来なくなってしまった、イキョウとはまた違った歪み方をしている人物です。
 ソーエンだけが唯一イキョウの歩みに歩調を合わせることができます。
 実は、元来からおかしいイキョウと比べると、変遷を経て歪んだソーエンの方が常識的な人物でもあったりします。が、結局のところソーエンもおかしいので二人ともおかしいです。
 こちらも多くは語れませんが、イキョウとずっと対等で、双璧を成す存在でもあります。
 そしてバカです。揺らぎません。

・ラリルレについて
 物語の構成における大貢献者です。ラリルレが居なかったら、あの二人が暴虐武人に振舞って収集の付け方が分からなくなるところでした(書いた部分でも、書いていない部分でも)。
 七名奈那の中で、唯一人ではなくなってしまったという主題に悩みを持てる人物であり、その葛藤を経て『産まれ持った人間というアイデンティティを失った自分は何なのか』を書くことが出来ました。
 少し話は逸れますが、人とはなんなのかという話になりまして。
 一般的に『人』とは『人間』という種を指すのが、生物学上では当たり前の常識ではあります。しかし、理論ではなく感情で、生物学的な話ではなく個人の感情として、姿形が変容しても言葉が通じて心を通い合わせることが出来るなら、見た目は変わっても心は人間なんです。
 そのことを訴えかけたのがイキョウであり、ラリルレはラリルレである限りそれ以外の何者でもないから気にする必要は無いと訴えかけたのがソーエンです。
 種族ではなく、在り方を説いた二人によって、ラリルレは現在の在り方を受け入れました。
 人やドライアドという『種族』ではなく、『個人』という自分の人格こそが自分を証明するということを理解したんです。
 そして、あの二人が初期から今まで自分の体や種族が変わってしまったことに対する疑問をまったくと言って良いほど持っていないおかしさをひっそりと対照的に画けました。

・キアルロッドについて
 異世界において、一部の例外的な存在を除いて最上位の戦闘力を持つ人物です。
 ギルハラッシュ(現クライエン国王)とは親友でありお互いに掛替えの無い存在です。
 王国編ではイキョウと対等に接してくれる実力者という立ち居地で書いていました。
 第三章のキーマンであり、今後の展開においても重要な役割を果たす人物となります。
 キアルロッドの変遷を大まかに書くと。
 産まれ持った天性の才能ゆえに人生がつまらない→人生がつまらないから何事にも本気になれず飄々とテキトーに過ごす→少年期の頃から色々な伝を作ってちゃらんぽらんな日々を過ごす→ちゃらんぽらんに生きても何でも上手く行くからやっぱり人生がつまらない→暇つぶしで食い扶持を稼ぐのに面白そうな騎士団に入隊する→その頃には魔法も武術も兼ね備えていた為騎士団の訓練に意味を見出せずサボっていた→騎士団の規律がある中で規律をこっそり破ることに一抹の楽しみの楽しみを覚えていた→そんなときに自分と似たような男『ギルハラッシュ』に出会って日々が少し面白い方向へ傾き始める→このまま面白い日々をダラダラと過ごして行くのかと思った矢先、ニーアという少女に出会う→何事にも本気になれなかった自分が、本気でこの少女を救いたいと思う→少女を救う為に人生で初めて本気というものを出す→使えるものは全て使ったがニーアを救えない→そこで挫折にも似た無力感を味わい、しかしニーアを救う為に全身全霊で身を潜めて強かに機会を伺う。
 といった感じです。
 ニーアが本当に大切で、ニーアの為なら全てを擲っていいくらいには大事にしています。
 キアルロッドにとってニーアは、人生で初めて本気というものに向かい合わせくれた存在で、救ってあげたかったのにどうすることも出来なかった存在で、いっつも気にかけていた子供です。
 ニーアが居なければ現在の、騎士であり最強であり等身大で人と向き合えるキアルロッドは存在しなかったことでしょう。

・ニーアについて
 確かな戦闘力を持つ瀟洒な戦闘メイドです。
 幼少期は普通の子供でしたが、親を失ったことにより自分の中のモノを全て失いました。それほどに、子供のにとって親とは大事な存在なんです。
 親という掛替えの無い存在を失ったことで全てを喪失したニーアが唯一持っていたものは、犯人への復讐心でした。
 しかしそれもキアルロッドの仇討ちと嘘により消え去ってしまいました。もう、その時点でニーアの中には何もありませんでした。
 そんななか、キアルロッドがニーアを導いてくれてとある人物と引き合わせてくれました。それがナターリアであり、同時にメイドというアイデンティティを自分の中に確立させました。
 メイドとしてナターリアに尽くすことが生きがいであり、ときには友人、ときには主人と従者として関わることがニーアにとってどれ程大切なことか。己の全てはナターリアの為にあると思ってしまうほどには執心しています。
 自分には何も無い故に、他人に尽くすことで自己を見る、依存にも似た性質を持っています。

・ナターリアについて
 外面は良いグータラ姫です。それ以上でもそれ以下でもありません。
 ナターリアの上手くこなしながらそつなくサボる性格は、実はギルハラッシュ譲りの由緒正しい血質です。
 運動は苦手で、様々な文学に興味深々な、若干天然な部分がある等身大の女の子です。
 ニーアとは親友であり主人とメイドです。
 自分の素を見せられる家族やニーアを心から大切にしていて、だからこそ見放されることを何よりも怖がって居ます。
 確かな美貌と人当たりの良い外面をしているため、異性からのアプローチや他国からの縁談がひっきりなしに来ていますが、グータラな本性を見せるわけにはいかないので全部断っています。
 そのため素の状態で異性と関わるのはソーエンとイキョウが初めてで、尚且つ共通点が多いソーエンに対して親近感と好感を持っています。
 ヴァンパイアのソーエンは、王族という立場や皇女の品格というものを見ず、そして素の自分を受け入れてくれて更に友友となったので、自分の胸の高鳴りを興奮や興味、楽しいというワクワクが全てを占めていると思っています。
 ソーエン×ナターリア……キテル……。
 本文では描写はありませんが、ラリルレとお茶をしてキャッキャウフフな女の子をしてました。ロロはそれをラリルレに抱かれながらジッと聞き流していました。

・コロロについて
 声が良い。イキョウが心底気に入るほどには声が良い。顔もスタイルも良いけどそれ以上に声が良い。
 愚直な勇者オタクです。
 キアルロッドが緩い性格なので、団長に変わって騎士団全体を引き締める役割を果たしています。

・スターフについて
 心根が綺麗な男であり、キアルロッドの同僚権よき理解者です。
 人を真っ直ぐ見られる常識人であり、人のことを慮れる優しい人物です。
 騎士団全体の調和を保つ役割を果たしています。

・ザレイトについて
 自分が大きい故に、小さいものが何でも好きな可愛い大男です。
 口数が少なく、ヘルムで顔が見えないため団内では無愛想な印象を受けがちではありますが、皆を守る堅牢な背中に姿に憧れる者達は少なくありません。
 他の四騎士に比べると、表立って発言することは少ないため団員にアレコレいうことはほとんどありません。
 発言ではなく出で立ちで騎士とは何たるかを語る人物です。
 防御能力においてはキアルが到達できないほどの実力を身につけています。
 王国の矛がキアルロッドなら、王国の盾はザレイトです。

・マレックについて
 頑張った父親です。

・ムーについて
 かわいいね。

・バレーノについて
 あいつ頭おかしいよ。

・第三章について
 雑感の初めにも書きましたが、新天地と登場人物増加により想定していたよりもずっと長い章になってしまいました。
 第一、第二章においてイキョウのおかしなところをほとんど見せなかった挙句、一人称ゆえに変なところが目立たないように描写をしていたのには訳がありまして。
 一つはこの小説がギャグメインの物語だと知ってほしかったから。
 もう一つは、一人称ゆえに訳を語らず、急に本性の一端を現したイキョウの姿に気持ち悪さを感じて欲しかったからです。
 物語内においてコロロ視点で描写したように、あのボロボロで奮闘する虚ろなイキョウの姿を見てカッコ良さや憧れを感じる者など居ません。
 助けに来たはずなのに問答無用で脅して、血を垂れ流してるはすなのに平然と動いていて、皆を救おうとしているのに自分は捨てている男の姿は、何も知らないものから見れば歪に歪んだ得体の知れない姿に映るはずです。
 その印象を持って欲しくてずっと隠していました。
 もし一端でもイキョウの過去を描写してしまったら、行動原理やその姿に納得が生まれてしまって、訳の分からなさや得体の知れなさ、気持ち悪さが逃げてしまうと思ったので一切描写しませんでした。寧ろサムイと思ってもらえるくらいには変なものを書きました。
 イキョウもイキョウで記憶に蓋をしていたので、第一章と第二章では重要な過去を語る事はしませんでした。
 面白さや出で立ちを、主人公らしからなぬ主人公として書きたかったので、素直な主人公描写はあまりしないようにしています。決める場面を決めない。それがイキョウという人物です。
 最初から本性をひけらかしたイキョウや、ソーエンをソロで主軸において主人公にしたほうが、よっぽど素直で筋の通った物語がかけそうではありますが、その二つはただのダークファンタジーになってしまうので別物の小説になってしまいます。
 イキョウにはソーエンが、ソーエンにはイキョウが、何より周りに皆が居ることであの二人はただのバカで居られます。
 だから皆が居ればあの二人は奔放なバカです。そんな二人の物語が書きたいんです。
 結局の所、この物語は日常的なアホなやり取りを主軸にしていて、メインストーリーは物語を進めて終らせる為の添え物としています。

・最後に
 
 お気に入りの登場事物はロロとソーキスです。
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