2020年11月12日 (木) 05:00
昔から仲の良い幼なじみ。同じ年の|和生《かずき》、|柚菜《ゆな》、|浩輔《こうすけ》。家も柚菜の家を挟んでお隣同士。三人セットでいつも一緒にいた。
定番の遊び場は近くの公園で元気な和生の好きな海賊ごっこ、頭のいい浩輔が宝を隠して見付ける宝探し、柚菜が好きなおままごとをそれぞれ日毎、たまにはドッキングさせて遊んでいた。
この日もおままごとから宝探しを始めちょうど柚菜が探し当てた所だった。隠してあったのは子供向けのブローチ。
「今日は柚菜の誕生日だったからプレゼント」
照れた様に言う浩輔。もちろん子供向けで高い物ではないが、キラキラと輝くブローチを柚菜は本物の宝物でも見るかの様な輝いた目で見ていた。
小学5年にしては大人びている浩輔に和生は何か負けた気がした。
和生も柚菜にプレゼントを用意していたが、選んだ物は和生の好きなライダーのお菓子と柚菜の好きな動物のグミ。もちろん柚菜は喜んでくれたがブローチの時の様な煌めきはなかった。
この日を境に
和生は浩輔をライバル視する様になる…
中学に上がるとそれは一段と悪化した。表面上は仲が良いがスポーツや、テスト何かにつけて何故か浩輔と張り合おうとする。勉強の出来る浩輔と勉強嫌いな和生のテストの点には大きな差があったのに、だ。勉強を頑張るのは悪い事ではないので柚菜も浩輔も特に和生を止める事はしなかった。それどころか柚菜と浩輔は勉強会を開き和生に勉強を教えてくれる。
柚菜と浩輔は得意分野が違うのでお互いも教え合っていた。苦手といっても頭の良い二人なので問題自体、和生には解らない。
和生は疎外感を覚え何だか面白くなかった。
それから暫くして中学3年に上がったばかりのある日
和生にとって、もっと面白くない事態が起きた。
どうやら柚菜は浩輔が好きらしい。
昔から何となく感じてはいた…でも決定打がなかったから淡い期待も若干あった。あの日のブローチが柚菜の宝石箱から出てくるまでは。
少し遅れるという浩輔を今日の勉強会会場の柚菜の部屋で待っていた。飲み物を取りに行った柚菜。一人残された和生は目に入った柚菜の宝石箱をまずいかな…と思いつつも、誘惑に負けて開けてしまった。そして開けた事を後悔する。
他の貴金属を押し退け、一番目立つ場所へ綺麗な布の上に鎮座する、あのブローチ。
浩輔から柚菜へのプレゼント。
開けたまま固まっていた和生は柚菜が飲み物と共に戻った事にも気付かなかった。そんな和生を見て真っ赤な顔の柚菜が勢い良く宝石箱の蓋を閉じる。
「浩輔には言わないで…!」
和生は泣き出したい気持ちになった。
気付いてからは柚菜が誰を見てるのか解るのは簡単だった。あの日のブローチを見てた目で浩輔を見ていたから。
そして浩輔の気持ちにも気付いてしまった…
二人がくっつくのは時間の問題かもしれない。