2018年04月25日 (水) 14:00
ミツイ氏は舟の上でとても良い匂いに気が付いた。
それは揚げ物の放つそれであり、氏は思わず辺りを見回した。
そして少し離れた島の上空に、コロッケらしきものが浮いているのを氏は発見した。
なぜ揚げ物が浮いているのか。その疑問を解決するつもりはなかった。なぜならば、氏が航海をしているのは電子の海だからである。さらに言うなれば、その海域の中でもとりわけ何事をも起こり得る "なろう海域" である。
コロッケくらい、浮いていたって何もおかしくないのだ。
島に上陸した氏は上を見あげる。
浮かんでいるのは巨大な巨大な、コロッケ。空に浮かぶ雲と比べても遜色のない大きさのそれは、なぜだかとても威厳に満ちていた。
島はとても静かだった。
なのに、香しさだけは常にある。
上空に浮かぶあの揚げ物がそうさせるのだろう。
街も変わらず静かだった。
公園のベンチに見つけた一作の物語。氏は、これを読まねばならないと直感した。
ころっけぱんださんの、
『カニクリームコロッケ、空を飛ぶ』を読み、氏は理解した。宙に浮いているのはコロッケではない。カニクリームコロッケだと。
氏は混乱した。
笑えば良いのか、畏れるべきなのか、恐怖をその身に感じるべきなのか分からなかった。
ただ、様々なものがないまぜになった感情を抱えて、舟を出すために浜へと戻り、考察のために寝転がった。
物語はオモシロかった。これは事実である。
事実は速やかに認めなければならない。
カニクリームコロッケ。
言葉のイメージに殴られ、そしてカニクリームコロッケの恐ろしさを目の当たりにする。
カニクリームコロッケが引き起こす人類の危機を見て、そしてカニクリームコロッケ仕掛けの神が降り立ち、世界をカニクリームコロッケに沈めていった。
あらすじだけでこの破壊力。
しかしながら、内容はかなりシリアスなのだ。人間愛を描いている部分もあり、描写はえぐい。もう、なんというか、えぐい。
その描写の差に氏の脳は混乱した。分解し、理解し、脳内で再構築するまでにインカコーラ2本を要した。
しかしオモシロかったのだ。それは認めなければならない。
息を吐いて起き上がり、氏は次の島目指して旅を始めた。
○ ○ ○
ども、三衣 千月の実務担当、もう若くないということをペヤングに思い知らされた方、ミツイです。
大盛はもう食べきれない。そう悟りました。
揚げ物も同様でしょうね。ゆえに、カニクリームコロッケはそんなに多くは食べられないのです。
やあ、怪作だった。
ころっけぱんださんの、
『カニクリームコロッケ、空を飛ぶ』。
混乱しますよ!
マジで! 割とマジで!
さて、明日もどんな作品が読めるでしょうか。
それでは明日もお楽しみに!
あまりにも理不尽。そして神の存在の偉大さと、その動機の小ささに怒りを覚えたら、作者の術中に嵌っているのでしょう。神めッ! と叫びたくなりますね。