2025年05月08日 (木) 11:04
「さくらちゃん。このお守り、よかったら、あげるよ。」
「え…?えと…。//」
その人に、白い小さな紙の袋に包まれた何かを差し出され、私は、躊躇いながら受け取った。
なんだろう?
カサカサッ。
ドキドキしながら紙の袋から、中身を取り出すと、桜の花びらが描かれたピンク色の可愛いお守りが出て来た。
「わあ…!かわいい…✧✧」
目を輝かせた私に、その人はお守りの効能を説明してくれた。
「それ、全てが上手くいくお守りらしいよ?よかったら、さくらちゃんが持ってて?」
「お兄さん、ありがとう…。」
「いえいえ。」
私がお礼を言うと、その人はおっとりと優しい笑顔を向けてくれた。
小さなお守りの感触と、その人の声、笑顔、微かな男の人の匂いに、私の胸はトクトクと小さくときめいていた。
隣にいる彼の彼女さんが、それは実は安産祈願のお守りと教えてくれて、その人はそれを知らずに間違えて渡してしまったのだと分かったけれど、この素敵なお守りを手放す気にはなれなかった。
頼み込んでそのまま貰う事にした。
小さい頃から男性には苦手意識があったし、さっきは怪しい男の人に追い掛けられて怖い思いをしたばかりだけど……。
大きい体に低い声の制服姿のその人は全く怖くなくて、強くないのに私を守ってくれて、私が不安に思っているとお守りをくれて……。
今までの男の人へのイメージが大きく覆されていくのを感じた。
こういう男の人もいるんだぁ……。
こんな男の人なら、私、嫌いじゃないなぁ……。どっちかというと、す、好き……かな……??///
そう思った時、何故だか頬も心も燃えるように熱かった……。
✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽✽
そして4年後―。
「(良二さん……。香織さん……。)」
車で二人に会った場所を通る時、小学生高学年になった私はカバンにつけられたお守りを握り締めた。
「さくらお嬢様。また、お二人の事を考えていらっしゃるのですか?」
「権田さん……。はい。つい、この道で
またお会い出来るのではないかと思ってしまいますが、もうお二人は高校を卒業してらっしゃいますよね。
変わらず睦まじい素敵なカップルでいらっしゃる事でしょうか……」
運転席の権田さんに聞かれ、私は幸せそうな二人を思い浮かべ、目を閉じた。
そう。良二さん達に会うまでは、父や兄、権田さんも男性故に苦手だったけれど、関係が改善され、何でも打ち明けられるような仲になったのだった。
そして、日々ある努力も重ねていた。
「メイドさん達に教わって、北欧料理も大分上手になりましたし、いつかお二人にお礼に手料理をご馳走出来たら最高に嬉しいです」
私はそう言ってうっとりとため息をつくと、権田さんも感慨深く頷いた。
「本当に素敵なお二人でしたから、お嬢様の夢、お嫁さんになりたいと共に、叶うとよいですね」
「はい。いつか、良二さんのような優しいお顔と声、匂い、手の形、DNAの方のお嫁さんになりたいです」
「DNAでございますか?! そ、そのレベルですと、良二様という方のお嫁さんになるしかないのではございませんか??」
驚いてそんな事を言ってくる権田さんに私は笑って否定した。
「ふふっ。いやだ、権田さん。良二さんのお嫁さんは香織さんだから、私はお嫁さんにはなれませんよ〜。
DNAと言っても似ている位でいいんです。80%位な?」
「そそそ、そうでございますか。失礼致しました。(二卵性双生児でも確かDNA一致率は約50%でしたね。 良二様に一卵性双生児のご兄弟がいらっしゃればいいのですが……。これは旦那様にご報告しなければなりませんね!)」
権田さんは何故か青褪めてコクコクと頷き……、そしてこんな事を言われた。
「まぁ、この世の中、将来がどうなるかなんて誰にも分からないですからね?
権田はさくらお嬢様の幸福な結婚を迎えられますようお祈りしていますよ?」
「ふふっ。ありがとう。権田さん」
私はいつも私の気持ちに寄り添ってくれる頼もしい運転手さんに笑顔を向けた。
その5年後に一夫多妻制法案が可決、翌年施行し、香織さんが白鳥と一夫多妻婚。
そして、その3年後には良二さんと再会&婚約、翌年には幸せな結婚をする事になるとはこの時は思いも寄らない事だった――。
✽あとがき✽
読んで下さりありがとうございます!
さくらちゃん視点の小さい頃(7才→11才)の話でした。
この話のさくらちゃんをイメージしたAIイラストをみてみんに投稿していますのでよければご覧下さいね。
https://42432.mitemin.net/i961816/
本作品昨日2000pt達成しました!✧(;_;)✧
応援下さった読者様には本当に感謝です✧✧
最終話までこのままのスケジュールで投稿していきたいと思いますので、最後まで見守って下さると嬉しいです。
今後ともどうかよろしくお願いしますm(_ _)m