2015年11月15日 (日) 04:57
漫画の最終巻を読むのが辛いと、そんな事がある子供でした。
あんなに好きだった漫画が、二十数巻も、三十巻も追った漫画が、他の巻は何度も読み返すのに、最後の巻だけは読み返せないという事がありました。
あの頃は、どうしてそうなのか、自分でも良く分からず、疑問に思う事も無いままに過ごしていました。
今にして思えば、あれはきっと、物語に置いていかれる事が辛かったのだと思います。
長い時間を共に歩んできた主人公達は、きっとこれから、物語の世界の中で、物語の間より幸せな時間を生きていく――けれど自分は、その時間を共に歩むばかりか、知る事さえも出来ないのだ。そういう事を思い知らされるのが辛くて、逃げていたのではないかと思います。
桜と村雨の旅は、描かれる部分は終わりました。
書き始めた頃に考えていたこの終わりは、途中の形を多いに捻じ曲げながらも、基本的な部分は変わらず、細かい肉付けだけが施されて、向こうから私の目の前に差し出されてきました。
最後の戦いを描く私は、桜と村雨の心情を、完全には理解していません。
ただ、目の前にそういう生き物が二人いて、そういう感情を放っている。そんなものをなんとなく感じ取って、自分の文章に乗せていったような、そんな感覚です。
雪月 桜という傍迷惑な女は、とうとう最後の話になるまで、作者にさえ、自分がどういう人間かを教えてくれませんでしたし、村雨も最後の最後まで、そんな桜をどう受けとめるのか教えてくれませんでした。
が、今はもう、全てが私の頭の中にあります。
これから先、二人がどんな旅をして、どんな風に生きていくのか、その全てを思い描き、夢に見る事が出来ます。
私はやっと、私を置き去りにしていかない物語を手にする事が出来ました。
三年と数か月、書いていて、楽しい事ばかりでした。
展開が思いつかないと悩む事さえ、楽しい事でした。
一切、苦痛の混ざらない純粋な娯楽を味わい続けて、最後まで辿り着いた、この幸福は滅多に味わえないものじゃないかと思っています。
小説を読むたびに、これやってみたいなーと思っていた、後書きもこうして書いていますしね。
さて、殺しに殺して、生かしに生かして、百二十万文字も書いて、ようやく一つの物語が終わりました。
次はどんなお話を書きましょうか。
追記
エゴサーチで楽しんでいたところ、なんとも嬉しい評価を見つけました。
「灰色の少女と黒い女は百合じゃなくて、ガチレズエログロスプラッタホラー」
……これだ!私に求められているのはこれだ!
次作はこの方向性でいこうと思うのでありました。
最後の、あの一戦の為だけに、ここまで書いてきたようなものでございました。
そして私の脳内の物語は、もう私だけのものです。世界全てにざまーみろ。
今後もまた、生き死にの沙汰をやすやすと踏み越えていくような隙間産業の物語を書いていくかと思いますので、その時にはよろしくお願いいたします。