2018年12月03日 (月) 18:30
バームベルク公爵領、本日の更新分は結婚式でございます
AパートとBパートに別れておりまして
Aパートはなろうさん
Bパートは書籍で読めますが
それぞれ読まなくても話はつながるようになっております
どちらもお読みいただくと裏話などもすべて理解できる仕様です
明日発売です
どうぞよろしくお願いします
***
今日ご紹介するのは
「中世ヨーロッパの結婚式は教会の玄関ポーチでやっていた」
…というお話
”結婚式は教会の前で行われた時代もあった(図24)”
指輪の文化史 浜本隆志 P55
”教会の戸口で結婚式が行われ、そのあと教会の中でミサが行われた。”
西洋結婚史
”イングランドでは、しばしば教会の扉(以前の建物には素晴らしい教会のポーチがいくつか追加されていました)に霊的重荷を与えるために教会の近くで結婚しましたが、これには必ずしも司祭が関与していませんでした。 ”
Love and marriage in medieval England

おそらく14世紀ごろ、メリュジーヌの結婚、フランス国立図書館
イラストだと確かに教会の中ではなく外で行われていますね。
この図をよく見ると、結婚する男女の両手に、黄色い布のようなものが巻かれているのがお分かりでしょうか?
これは『握り合った両手をストラで巻いて神父が祝福する』という儀式です。
現代のカトリック式の結婚だとだいたいこの方式が採用されているようなのですが
通常は教会の中で行います。
なんでまた外で?
と思われるかもしれませんが、この当時は教会のミサは結婚する二人の男女のためだけに行われていたのです。
また、このころはまだ結婚式の典礼が
カトリックの中でも統一されていなかったので、
時期や地域によって式の進行に微妙な差異があります。
結婚する両人の手をストラで巻いて祝福する方式の他にも、
パリウムなどで包んで祝福することもあったようです。
”婚礼のパリウムとは、カトリックの儀式で「祝福」の儀礼のあいだ新郎新婦の上を覆う布のことである。”『服飾の中世』徳井淑子 P104

同上 P105
この図示右側のイラストのパリウムの使い方は、
現代のユダヤ教の結婚式に継承されています。
フッパーの下でラビの祝福を受ける花嫁花婿
『世界・ブライダルの基本』財団法人日本ホテル教育センター編 P128
その他、パリウムの祝福方法はこれ以外にも存在しまして、
結婚する男女の頭上にまとめてかぶせてしまう方法もあったようです。
…。
このあたり、歴史小説ではどうやって処理しているのだろうと思いまして
実在の女性の伝記などにも当たってみましたが
結婚式の詳細などは一切なく、財産目録を引き写してお茶を濁していました
…。
まあ、史実しか書けないとなったらそうなりますよね…。

ラファエロの絵画、聖母の婚約
こちらも屋外で、結婚する男女の手を司祭が握り合わせようとしている図です
近世に入るとカトリックは教会の礼拝堂の中で式を挙げるようにだんだん変化していきますが、
プロテスタントは結婚の意思がある男女と牧師さえいればどこでも式を挙げられるとする教義になっているので、むしろ礼拝堂以外で挙式を行うことも多いそうです。
というわけで本日のトリビアは
「中世ヨーロッパの結婚式は玄関ポーチで行われていた」
でした
>結婚式を教会でしたらロマンチックなのに。(親たちは)葬式みたい
あー、カナダは…。
まったく分からないので軽くググったところによると、ちょっとうかつなことを言えない感じのこんがらがり具合でした…。
アン自身はスコットランド系移民のカナダ長老会派プロテスタント? のようで…。
長老会派はサクラメントに結婚式が入っていないのに対し、イングランド系移民の監督派イギリス国教会はカトリック寄りで結婚もサクラメントに入れていたので、それで余計に「監督派の真似事なんて馬鹿らしい」というような発言になったのではないかな、と思います…。
カトリックは儀式などにこだわりがあって、結婚式の典礼なども派手派手なのですが、プロテスタントはそれを否定する立場でしたので…。
赤毛のアンについては昔むかしに読んだだけで全然分からないのですが、その発言だけ聞くとどうもアン自身は割と宗派の違いとかどうでもいいと思っていたような感じがしますね…。
可愛ければなんでもオッケー、みたいな…。
若い女の子の感覚というか…。