隔離病棟
2015年06月21日 (日) 07:28
お久しぶりです。
近況報告を兼ねて、ある対話談を書いてみました。
診断メーカー『隔離病棟』http://shindanmaker.com/540469 から得た設定を各主人公(作者含む)に付けてみました。
完全に魔が差しましたが、こういう物語だと思って、作者と主人公同士の会話に抵抗がない方のみ、スクロールをお願いします。

























『天川さんは025号室の男性患者。「言葉を発するたび、耳に青い薔薇の形の痣が現れ、聴力を失っていく病気」を持っています。片目に眼帯を付けていて、髪は猫っ毛です。他の病院に片思いをしている人が居ます』

とんだ中二病である。慣れない右目の眼帯を手で押さえ、その存在を改めて意識する。
片目のため視野は普段の倍以上に見えづらくなっているが、まあ、話す分には問題ないだろう。
と思ったがそもそも、青い薔薇の形、と称される痣は既に耳を中心として首と頬にまで広がっているため、これ以上言葉を発することは避けた方がいいだろう。対話にならない。
しかしまさか話せないことになるとは。ランダムとはいえ、運がなかったというべきか。
設定上、仕方ないので筆談に頼ることにする。


『ラピスさんは021号室の男性患者。「愛する人の涙を飲まなければ生きていけない病気」を持っています。青と黄のオッドアイで、髪は猫っ毛です。004号室に因縁の相手がいます』

ラピスは言葉を失ったようだ。
設定を見つめながら、口をパクパクと開けるが、言葉はない。
きっといろいろ思うところがあるのだろう。その気持ちは痛いほどわかる。
バッとこちらに振り返ったかと思えば、おなじみの真っ赤な頬で、「あ、愛する人の涙ってなんですか!」と怒られた。
こちらも肩を上げて、首をひねる。こちらとしてもどんな病気やねん、という感想しかない。
こういうことは真面目にとらえてはいけないのだろう。といっても、真面目な彼女には無理な話しなのかもしれない。
「あ、愛する・・・涙を飲む・・・!?」と一人で戦々恐々と悶えているラピスを放置しつつ、次の登場人物を見る。


『早川京子さんは001号室の女性患者。「負の感情を抱く度に、体に黒い痣が出来ていく病気」を持っています。紫の瞳を持ち、金色の懐中時計を愛用しています。010号室に双子の弟がいます』

設定を見た瞬間、早川京子の顔は真っ黒に染まった。瞬き一つの間に、である。
その変わりように悶えていたラピスも声を引き攣らせて身を引く。
早川京子の黒い痣の浸食は止まることを知らず、こちらの気もお構いなしに肩、手へと進んでいく。
その姿にドン引きである。いいや、考えていることは大方「面倒くさい」に違いないだろうが。
しかしまぁ、あんなに痣が出る程、彼女の中でどんな罵倒が繰り広げられているのか。真っ黒に染まってしまった彼女の顔からは表情は窺えない。
ため息を一つ吐いたかと思うと、壁際に座り込み、横になった。
完璧に寝る体制である。
確かに、あの浸食されていく様を見続けるぐらいなら寝てもらった方が良策なのかもしれない。


『岩瀬奈々さんは009号室の男性患者。「誰かに愛の言葉を囁くたびに、毒を持った花が体に咲き命を削られる病気」を持っています。優しい緑色の瞳を持ち、腕に包帯を巻いています。004号室に元恋人がいます』

岩瀬奈々は眉を顰めて設定をじっと見つめた後、こちらに振り返った。

「ねぇ、私の話の続きはいつ更新されるの?」

痛いところを突かれた。
というよりも、出てきていきなりそれを聞いてくるということは、中々フラストレーションがたまっている様子である。

「そもそもこんなことしているぐらいなら、私の話、一話ぐらい更新できそうじゃない?」

どうしてしないの?と、不機嫌な様子。
これには理由があるのだ。
観念して、ラピスに事前に用意していた手紙を渡し、読んでもらった。

「ええと、『この度は、このような悪ふざけにお付き合いいただき誠にありがとうございます。つきましては、【期限切れの恋】の更新が一時的に停止してしまい、読んでいただいている皆様には大変申し訳なく思っております。申し訳ありません。しかし、最後まで書き上げる所存ですので、どうかお待ちいただけるとありがたいです』・・・って」

ラピスは岩瀬奈々を窺う。しかし、これぐらいのことでは彼女の機嫌は取れなかったようだ。
腕を組み、相変わらずイライラした様子で追及してくる。

「・・・まあ、最後まで書き上げる意欲があることはわかったわ。けど、肝心の“今書けない理由”について、何も書いてないけど」

そもそも、悪ふざけしてる暇があれば、書けるんじゃないの?

視線が痛い。
彼女の言うことはごもっともである。しかし、そんなに怒られると答えにくいというものではないか。
弱り果て、彼女の横でこちらを哀れむラピスに視線が写る。
ああそうだ。うん、彼女のように誠実に答えるのがベストだろう。うん。そしたらきっと、わかってくれる。
紙に答えを書き、岩瀬奈々にじかに渡した。

「・・・はぁ?」

眉間の皺が深くなった。
どうにも失敗だったようだ。

「『二次小説にハマっているので書けません』・・・はあ?」

二度目である。
彼女は紙をくしゃっと握りしめる。
そして大きく振りかぶり、紙を放り投げた。
皺のついた紙は遠くへは飛ばず、空気抵抗によってゆっくりと落ちていき、それをあ~あという気持で眺めていた。

「あんたはそういう!終わってもないのに次の話を書き始めるとこ!悪いと思う!」

キレてる。岩瀬奈々が、頭を掻き毟ってキレている。中々ないと思ったが、そういえば大壱に二回キレていたことを思い出す。
意外と怒りっぽいのかと思いながら、ポカンと彼女の剣幕を眺めていた。

「それに私知ってんだからね!あんた他の二次小説も書いてたけど、まだ終わってないって!」

最後に更新してから何年たってるの!?

その言葉に頭の片隅に追いやっていた罪悪感がずしんと舞い戻ってきた。
それについては、本当に申し訳ないと思っている。だが、二次小説を書いていない間に一次小説を書いていたため、それだけはここで言われたくなかった。
それに話のネタはあっても書き出さないように、これでも抑えているのだ。彼女はああいうが少しは自制しているのだ。
そんな作者の気遣いも知らず、ギャーギャー言いたいことを喚く岩瀬奈々に軽く怒りを覚える。
しかし、こちらの都合で彼女が散々な目に遭っているのも事実である。だとすれば、彼女の態度も大目に見るべきか・・・。
良心の呵責に苦しみながら、彼女の言葉を聞き流す。

「大体、【養殖天然の彼女】で性転換してんじゃないわよ!私でやりなさいよ!んで、桜子との両想いエンドで終わらせればよかったのよ!」

いや、それ、略奪愛エンドでは、とツッコみたくなったところ、岩瀬奈々の体から菫色の花が咲いた。それこそ、いろいろと好き勝手喚いていた口から始め、腕から、足から、次々と芽が生え蕾を膨らませて花を咲かせる。
ああ、そういえば彼女の病気は「誰かに愛の言葉を囁くたびに、毒を持った花が体に咲き命を削られる病気」だったか。彼女も失念していたようだ。
余りの痛みに床で悶えうつ彼女を眺めながら、本当、つくづく、彼女はろくな目に合っていないと、心底申し訳なく思った。
突然の変異に怯え離れるラピスを見、相変わらず寝ている全身真っ黒になった早川京子を見、そして転がる岩瀬奈々を見、誰も異論も言葉も無い様子だった上に収拾がつきそうになかったので、ここで話し合いを終わることにした。





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