2014年07月26日 (土) 20:00
「私、メリーさん。今、あなたの前にいるの」
…………。
「私、メリーさん。今、あなたの――――」
いや、おかしいよね。
「え?」
え?
「おかしいって何が?」
普通、後ろに出るもんだよね?
「え?」
え?
「なんで後ろに出ないとダメなの?」
いや、別にダメとは言わないけどさ。
「うん」
後ろに立たれないと、あんまり怖くないと言いますか……。
「え? 人形が目の前で喋ってる時点で普通に怖くない?」
まあそうだけども。
「でしょ?」
でも、人形が目の前に現れてだよ?
自分、あなたの目の前にいますって自己報告されても、反応に困るじゃない。
「まあ、そうかもしれない」
じゃあ、最初からやり直そうか。
「わかった」
俺はメリーさんを抱えて、ごみ捨て場へ向かった。
※
家に帰ると、電話がかかってきた。
「私、メリーさん。今、ごみ捨て場にいるの」
そこで電話が切れた。
こんどは上手くやってくれると良いのだが……。
「私、メリーさん。今、犬にくわえられてるの」
な、何があったんだメリーさん。
「ごみ捨て場にいたら、犬がやってきて、なんかこうなった」
大丈夫?
「私、メリーさん。つちのなかにいるの」
大丈夫じゃなかった。
犬に埋められちゃったよ、この子。
「タスケテ」
わかった。
※
「私、メリーさん。土の中から掘り返してもらって、泥だらけの体を洗ってもらったり、服を洗濯してもらったの」
事後報告はいいから。
もう一度やり直すよ。
「無理。トラウマになったの。もう嫌なの」
俺は嫌がるメリーさんを抱えて、ごみ捨て場へ向かった。
※
「私、メリーさん。今、ごみ捨て場にいるの」
そこで電話が切れた。
「私、メリーさん。ゴミ収集車に入れられたの」
大事故じゃないか。
「死にかけた」
むしろ、よく死ななかったね。
「苦難の連続なの。でも、必ずあなたを呪い殺して見せる。じっちゃんの名に懸けて」
某名探偵の決め台詞で犯罪予告するのやめようよ。
「私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの」
窓から外を見ると、ゴミ収集車が家の前を通りすぎていった。
「私、メリーさん。今、あなたの家の前にいたの」
知ってるよ。
見てたよ。
「タスケテ」
無理でしょ。
自分でなんとかしなさい。
「私、メリーさん。今、ゴミ処理施設にいるの」
大丈夫なの?
「私、メリーさん。焼却されたの」
大丈夫じゃなかった。
「私、メリーさん。お星さまになったの」
窓から夜空を見上げれば、ひときわ輝く一等星が。
「私、メリーさん。今、あなたを見守っているの」
おしまい。
なろうのメリーさんはホラーよりも萌えキャラとして扱われることの方が多いですよね。
ここでは燃えキャラとして焼却されてますけど(上手いこと言ったつもり)
僕は自分にセンスがあるなんてこれっぽっちも思ってません。むしろ、小説に関しては無才の部類に入ってると自覚しております。
ではでは。