連載作品が行き詰まったから気分転換に拙作な小説書きます。(1000文字)
2014年07月26日 (土) 20:00
「私、メリーさん。今、あなたの前にいるの」

…………。

「私、メリーさん。今、あなたの――――」

いや、おかしいよね。

「え?」

え?

「おかしいって何が?」

普通、後ろに出るもんだよね?

「え?」

え?

「なんで後ろに出ないとダメなの?」

いや、別にダメとは言わないけどさ。

「うん」

後ろに立たれないと、あんまり怖くないと言いますか……。

「え? 人形が目の前で喋ってる時点で普通に怖くない?」

まあそうだけども。

「でしょ?」

でも、人形が目の前に現れてだよ?
自分、あなたの目の前にいますって自己報告されても、反応に困るじゃない。

「まあ、そうかもしれない」

じゃあ、最初からやり直そうか。

「わかった」

俺はメリーさんを抱えて、ごみ捨て場へ向かった。



家に帰ると、電話がかかってきた。

「私、メリーさん。今、ごみ捨て場にいるの」

そこで電話が切れた。
こんどは上手くやってくれると良いのだが……。

「私、メリーさん。今、犬にくわえられてるの」

な、何があったんだメリーさん。

「ごみ捨て場にいたら、犬がやってきて、なんかこうなった」

大丈夫?

「私、メリーさん。つちのなかにいるの」

大丈夫じゃなかった。
犬に埋められちゃったよ、この子。

「タスケテ」

わかった。



「私、メリーさん。土の中から掘り返してもらって、泥だらけの体を洗ってもらったり、服を洗濯してもらったの」

事後報告はいいから。
もう一度やり直すよ。

「無理。トラウマになったの。もう嫌なの」

俺は嫌がるメリーさんを抱えて、ごみ捨て場へ向かった。



「私、メリーさん。今、ごみ捨て場にいるの」

そこで電話が切れた。

「私、メリーさん。ゴミ収集車に入れられたの」

大事故じゃないか。

「死にかけた」

むしろ、よく死ななかったね。

「苦難の連続なの。でも、必ずあなたを呪い殺して見せる。じっちゃんの名に懸けて」

某名探偵の決め台詞で犯罪予告するのやめようよ。

「私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの」

窓から外を見ると、ゴミ収集車が家の前を通りすぎていった。

「私、メリーさん。今、あなたの家の前にいたの」

知ってるよ。
見てたよ。

「タスケテ」

無理でしょ。
自分でなんとかしなさい。

「私、メリーさん。今、ゴミ処理施設にいるの」

大丈夫なの?

「私、メリーさん。焼却されたの」

大丈夫じゃなかった。

「私、メリーさん。お星さまになったの」

窓から夜空を見上げれば、ひときわ輝く一等星が。

「私、メリーさん。今、あなたを見守っているの」

おしまい。
コメント全2件
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青鬼
2014年07月28日 00:47
喜怒哀楽さん。コメントありがとうございます。

なろうのメリーさんはホラーよりも萌えキャラとして扱われることの方が多いですよね。
ここでは燃えキャラとして焼却されてますけど(上手いこと言ったつもり)

僕は自分にセンスがあるなんてこれっぽっちも思ってません。むしろ、小説に関しては無才の部類に入ってると自覚しております。

ではでは。
何だこのメリーさん……全然怖くないぞ
というか、ちょっと可愛いと思ってしまったw

青鬼さんの、このセンスは好きです!