吸血鬼のアレ
2016年05月07日 (土) 21:16
 もう、二か月も前のことになってしまいましたが、鳥と魂という題材で、ちょっとマニアックな文章をエッセイとして投稿いたしました。
その際に、次は吸血鬼について一本書いてみたいなどと申しましたが、いや、資料を読み込んでみますと、思いのほかややこしく、どういう構成で行けばよいのか、酷く思い悩むことになりました。
単純に資料を読んで、それを引きうつしてもそれは“なろうのような場所に挙げる作品”ではありませんし、既に多くの優れた資料サイトが仕上がっております。“自分が連想したこと”を書けば良いのかも、ですが、それを書くためにはそう思うに至った背景(情報)も書かねば読者には伝わりません。 そうれば、今度はいわゆる 長文乙、と…… 忙しい読者に読んで頂けるものに仕上げられる自信がない……(汗)

 とりあえずは、吸血鬼について、読んでくれた方が、あこの設定面白い、盛り込んでみよう、等と思える小ネタを語っていければよいなァとは思うのですがね。
あるいは、現在の幻想作品における吸血鬼像形成までの蘊蓄も…… 余計な情報まで盛り込みたくなる自分、添削者が自分のみというのが、非常に不安です。

とりあえず、前章っぽい所が書きあがったのでこちらに晒してみる



 吸血鬼、現在の幻想《ファンタジー》作品においては、“夜、闇にまぎれて人の血を啜る、知能が高く高貴な怪異”、そのようなイメージの元、きわめて人気のある怪異キャラクターになっております。
 おそらくそのキャラクタの成立は19世紀―20世紀初頭に西欧(及びアメリカ)で発表された幻想文学・舞台・映画等の影響が多大なもののようにございます。
代表的な作品として注目するべきは、吸血鬼小説の嚆矢にしておそらくは貴族然とした吸血鬼のイメージの元となったポリドリ(触れ込みはバイロン)作の“吸血鬼”(1814)、“ドラキュラ”(1897)でしょうか。
 ポリドリの“吸血鬼”は他と比べてこそ無名に近いですが、創作の背景や吸血鬼の人物モデル等、非常に興味深く面白い逸話が多く、貴族然とした吸血鬼のイメージはこの作品により定着したとも言われています。
ブラム・ストーカーの“ドラキュラ”はそれ自身の人気もさることながらベラ・ルゴシ主演の映画が大ヒットし、現在では吸血鬼の“代名詞”とまでなっている状況、語るべくもありません。以前、“ドラキュラ”の名が“種族”名称としても扱われていることを活動報告で愚痴ったことがありますが、この時期以後の西欧で翻訳された吸血鬼像とそれ以前(あるいはそれ以外の)吸血鬼を区別するラベルとしては、かなり便利。使う予定はあまりないのですが、前言を翻ししばらくの間は使ってみても良いかもしれませんねぇ。
……積ん読のままにしている自分がそう言い切っていいのか判りませんけれども。
 ちなみ、この作品は流入する移民が上位社会にまで上り詰め幅を利かせることに対する恐怖を風刺するものである、との説があるとか。現在の選民意識が高く民衆から血税を搾り上げ優雅に暮らす封建貴族のメタファのような吸血鬼像とは、若干の乖離があるのかもしれません。……読む(あるいは観てみる)しかないか……

 さて、現在の吸血鬼像を語るためには上記のような西欧で醸成された作品群、についても触れなければならないのですが、それら作品の“元”となった吸血鬼の譲歩は当時の文化の中心であった“西欧”ではなく、18世紀ごろからその支配・影響下に置かれるようになった地域・東欧に土着し信じられていた怪異・伝承に基づくものでした。
 そこに伝わっている吸血鬼について調べてみると、現在一般的な幻想作品に登場しているような吸血鬼よりも遥かに多彩、多様で魅力的で、しかし同時に土臭い存在で、妄想の“素材”とするには非常に有用そうな存在であったりします。
実際に作品を作る上では態々そのように多様な吸血鬼達を分類し、区別していくことは無意味であり、時にナンセンスでしかありませんが、“肥やし”にするのであれば、あえて区別し分類してみることも面白いこと。
手元にある資料は一冊きりではございますが、ネット上の情報なども参照に東欧の吸血鬼達についてかいていって見ようと思います。


 で、まぁ、そのヴァンパイアやモーラについて土地柄交えつ書いていきたいナ、とやっているのですけれども、資料の読み取りミスに気づいて大規模修正が必要になったりしてテンションが下がったり、ね……。
こんな調子の文章、読んでみたいという方いるのでしょうか、はぁ……・


東欧の吸血鬼小説おまけ
 レ・ファニュの“カーミラ”(1872)も知名度では一等抜けているのですが、いざ影響を述べようとするとドラキュラの前駆、となってしまいますので記述見送り…… 耽美な雰囲気は好きですが。
 この頃の吸血鬼小説では、某所にて芥川龍之介が翻訳したものが読めるテオフィル・ゴーチエの“クラリモンド”なども面白かったです。神に使える僧侶に恋をしてしまった女が吸血鬼となって蘇る悲恋話。すぐに読み切れる短編ですし。
ジョン・キーツの“レイミア(ラミア)”(1819)を彷彿とさせるせつない作品でした。
ヴァンパイアの吸血属性はギリシアの「ラミア」「エンプーサ」からの移行ではないか、という説があることを考えると興味深くも思えますね。
 いや、似たような構図の作品に毒娘ことホーソーンの“ラパチーニの娘”(岡本綺堂訳の場合ラッパチーニの娘)や白蛇伝なんて言うのもありますし、偶然、何でしょうけれどもね。

駄文、失礼しました
コメント全10件
コメントの書き込みはログインが必要です。
トーラ
2016年07月07日 22:23
>柚子茶様
お久しぶりです! あいやー…… そいつは困りましたねぇ(汗
一応複アカの問題があるかもですから、運営さんと連絡取って見るのも手かもしれませぬ(汗

>豚鼻
アレは超音波発生装置なのです、エコロケイションに使うものなのです、便利だから、生存に有利だから蔓延してしまったのです! ……例え醜くても暗闇で見えねぇからわからねぇいしぃ、とずぼらをするようにぃ。

>倍率どん!
はらたいらに全部っ!!  ゴールデンハンマーとごちゃごちゃにしていたよう(汗)
ぱーじぇーろー! たーわーし! YES/NOまくーら!
薫る柚茶
2016年07月06日 00:02
携帯変更で新たに登録になっちゃいました。

どくだみ続編どうしよう、とりあえず初期作品リスペクトしてみてるな薫る柚茶です。

〉コウモリ

そうですよね。何百何千種類もいるくせに、ブタバナだけは変わらないとか凄すぎると思いませんか?
どんだけ強烈な遺伝子なんですかね…。

〉きたこれ

いや、隠れ場所が恐怖のドラキュラっぽくなさすぎるからいいかなと…。
さらに田舎だと日当たり待った無し!

倍率どんっ!て奴ですな。
トーラ
2016年05月20日 22:14
薫る柚子茶様 コメントありがとうございます!! ひゃっぽい

>吸血鬼は噛んで食べないから
 その発想はなかった。なるほど。 ちなみ、吸血鬼はともかくヴァンパイアは蘇った死者なので生前の食生活に影響されるものと思われます。
頑丈な顎を持っていたであろう狼男由来のヴァンパイアさんは、めっちゃ角顎になっていそうですナ。

>吸血蝙蝠
 やつは確か中南米ですナ。餌をとれなかった仲間に血を分け与える、仲間思いな奴にございます……
狂犬病を媒介しますが、な!!  これも、凶暴化ですとか恐水症状ですとか、ヴァンパイアや狼男の元ネタでは?等と言われております。
……しかし、ウオクイコウモリとか白いもふもふなシロヘラコウモリだとか、南米はコウモリ多様性すごいなっ!?

>カッター五六枚消費
 ポップ用のハレパネを切るときに、鉄定規のからはみ出た指の端を切り落と…… おもいだすだけでにぎゃあ、です。 くっつけて圧迫して湿潤式ばんそうこうはって…… 未だにちょっと指紋ずれていて跡残っているものなぁ
柚子茶様も気をつけてぇ……

> き た こ れ
なにがっ!?
楽しみにしております
薫る柚茶
2016年05月18日 15:48
トーラさん〉
こんちには。
よく噛む人はエラが発達します。
吸血鬼は噛んで食べないからアゴ細く小顔な美形に育ちそうですよね。

吸血鬼の話はあまりよく知りませんが、ヨーロッパやアフリカに吸血コウモリがいて家畜の肌を傷つけてから出てきた血を舐めると言います。

吸血鬼にやられて死ぬと言う話の元になった生き物なのは確実ですが、中国の楊貴妃のように罪人などの血を風呂にいれて美肌だになろうとしていたと逸話があり、そう言ったヨーロッパに似たような行いをした貴族がいたから吸血鬼伝説が生まれたのかもしれませんね。

何にしても、私は毎日小刃のカッター五・六枚消費する仕事をしているので、手を切らないよう気をつけてます。

血をみたいだの殺意だのは、日常的に手を切る事のない人が考えやすい。

爪の間にトゲが刺さったりリアルに地味な痛みの辛さを知ると、傷つける行動に移りにくいです。

貴族はケガをしなかったから痛さを知らず無体を働く者も多かっとされています。故に、吸血鬼のモデルになったんですかね?ドラキュラ伯爵とかカーミラも貴族的だし、今はやりの村人経D(ドラキュラ)じゃ…ダメだよな。



夜な夜な家畜や村人を襲う村人ドラキュラは、日の当たらない肥溜めのなかかかかとか漬け物が置かれた地下室で眠りについていた。


き た こ れ

さらばじゃ!
トーラ
2016年05月15日 21:56
 夜桜さま コメントありがとうございます!!
ウィキペディアのカーミラ、ストーリーかなり詳しいところまで載せてますよね、ちょっとびっくり。
貴族のお嬢様の手記といった風情の彼の作品、なかなかに素敵でございましたよぅ。映像化作品は、見たことがないのでなんともなのですけれども。

そうなんですよね、多様性があるが故、色々の設定を好き勝手つけていけるのが吸血鬼の良い所! 好きな設定をチョイスいたしましょう!
そのような主張をし、受け入れたうえで、類型化したり、その源流を探ってみたり、それはそれで、良いことなのではないか、そんな思いからこんな文章を……・
リクエスト受けたし土曜日あいたし書いてやるぜ!とヴァンパイア編を頑張って9割がた仕上げたのですが……
保存を間違えてしまいまして……・ な、悩み抜いた末に仕上がった構成が……っ! 自分の記憶サルベージの妖しさは異常です
夜桜
2016年05月13日 23:21
あっ!カーミラだ(・∀・)!!!
昔、吸血鬼をモチーフにしたお話を作る際に、資料を集めていましたら、カーミラのお話があり、気になって読んでみたことがありますよ。(ウィキペディアさまで)
ウィキペディアさまで読んでいたら、文中に『ミラーカ』の名前が出てきて、その瞬間、これ絶対カーミラだ!と、思ったり。ウィキペディアさまのあらすじだけでも、かなり引き込まれるお話でした。
いつか、本で読みたいです。それか映像で観たいです。

吸血鬼は色々な設定を付けやすくて、執筆するのが楽しいですよ!
血液が飲めない、もやしっ子吸血鬼や『聖水?飲料水と変わらないよ?』なんていう吸血鬼を創りだしたり。
……あ、なんだか吸血鬼が出てくるお話が書きたくなってきました。執筆意欲を刺激するトーラさまの資料、是非、作品に挙げて欲しいです!では、ちょっと吸血鬼のお話、執筆してきます!

長文、失礼致しました。
トーラ
2016年05月13日 20:58
org様、初めまして。
その方は零した米粒や豆を一粒一粒数えながら拾うみみっちぃ方ですか?サンザシのような棘のある樹木を以上に恐れる方ですか?もしかして鏡に映らないとかありませんか?
で、あればもしかしたら吸血鬼かもしれません…… げふんげ

 吸血鬼とトマトジュウス。自分も短編のネタでやりましたけれど、アレは最近ギャグパロディなどを通じて付与された属性でございます。恐らく日本独自でしょう。 色々と情報を集め、整理し考えながら取捨選択することは楽しいですが、同時に適当でも全くかまわない。それが幻想怪異妖怪の楽しい所でございますよぅ!
oga
2016年05月13日 18:35
はじめまして

知り合いがトマトジュースめっちゃ好きなんですけど、あれは吸血鬼なんですかね?
トーラ
2016年05月09日 18:15
 秋月様、コメントありがとうございますw
一応、現在のイメージに繋がる種みたいな情報、はあったみたいなんですが、現在の形とはかなり異なったものであったようです。
んー…… ゾンビ、あるいは人狼、地域により蛇婿や牡丹灯籠?

秋月さまはハンターDですかっw 自分は、なんでしょうね…… 手塚治虫か藤子不二雄か悪魔城? それぞれ断片づつのような気がしますですわ(汗

 いやー…… なんというか、気どらず読みやすい秋月様の作品と比べてしまうと……
読みづらい感を感じてしまいましてね?
専門語多くて読みづらく、それでいて所詮孫引き、その上もっと優れた情報がネット上にはわんさか……
一応、続くヴァンパイア・モーラに関する部分が出来たら、一作品として纏めてみようかな、とは思うのですが(苦笑)
秋月 忍
2016年05月08日 18:08
吸血鬼の現代のイメージって、近代のものなんですねえ。ルネッサンス以降の。

私の場合は、バンパイアというとハンターDが一番愛読した本なので(^^; たぶんいろいろ間違っておりますねえ。
一時期、SFでもバンパイア系生物流行しましたが……

って。トーラ様、また、活動報告じゃないっすか。もったいない。
この十分の一にもならん考察を堂々とシリーズでやっていた私の目から見ると、作品として挙げればいいのに、と思ってしまいます。