2017年09月30日 (土) 23:20
お疲れ様でございます。
まとまった休暇欲しいです。
まずは脇役でなくでごめんなさい。
休暇欲しいです。この一言に全てが詰まってます。
察してくだせー。
毎度新規小話だらっと落書きてしまったのですが、これジャンルなんじゃろーと首を傾げ。
小説でございというには、ちょっとどーよ?と思ったので又しても活動報告に載せてしまう私です。
相変わらず乙女ゲー転生ネタな上にモブ。
このジャンル(最早ジャンルでいいよね)好きすぎて困ります。
本当は切ない恋愛物とか書いてみたいんですけどね…全身痒くなるので無理ぽ。
本当は権謀術数なファンタジー物とか書いてみたいんですけどね…。頭悪くて無理ぽ。
ではまたー。
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[悩む王様]
「頭の痛い事だ」
執務室の豪奢で座り心地の良い椅子に体預け大きくため息をついた。
彼が頭を悩ませているのは世継ぎのことだ。
普通に考えて…というか、当然のことながら次代王は正妃との間に生まれた第一王子だ。側妃などいないし、普通に優秀な王子に疵がない以上は誰がどう見ても変えようもない未来だ。
今の所は。
王が世継ぎについて懊悩しているなどと周囲が知れば仰天するだろう。
なぜ悩む必要があるのかと。
それは王だとて客観的に見れば同感である。
しかし彼には誰にも明かしたことのない事情があるのだ。
人に話せば笑われるか、頭を疑われる事情であるから、今まで誰にも打ち明けられなかったこと。もっとも信頼する忠臣の鏡ともいうべき乳兄弟にすら明かせなかったこと。
それは彼にはどうやら前世らしき記憶があること。その上、この世界が前世で見知った乙女ゲームという物の設定に酷似しているということだ。
百歩譲って前世までは話せたとしても、カードゲームや簡単なボードゲームしかないこの世界でどう説明したものやら。いや、劇や小説とそっくりでいう言い換えも出来るかもしれないが、どの道異端であるとの認識をされてしまう確率の方が高そうだと判じた。
どこの世界に自分たちが虚構世界の住民であり、他人の想像上の人物だと思いたい輩がいるものか。王子時代にうっかり漏らせば廃嫡ものだろうと思ったのだ。
ゆえに今だに誰にも話したことはなかったが、正直相談できる相手が欲しかったと心底思っている。
もっともこの世界がゲームに酷似していると気付いたのは数年前の話だが。家臣に第一王子の学園入学の話をされた時にやっと気づいた。
王子が学園に入学するまでに最良の環境を整える必要があると進言され、人員の精査や環境、設備などを見直す必要に迫られたのだ。その際に思い出したのだ。ゲームのことを。
もっと早くに思い出せれば良かったが、後からよりはマシであろう。
今の所、ゲーム通りに事態は動いているようだ。王子の人柄、環境、状況しかり。側近といえる学友しかり。
生まれた時から分かっていればまた別の教育の仕方もあったが、今さらである。王子の人格は確定された。これから大きく変えようもない。後は転がる先を見守るしかない。
来年、第一王子は王立学園に入学する。それは決して違えられない事項だ。
次期王となる者は必ず王立学園を卒業しなければならない。必須事項だ。
限りはあるが、学園内では身分差は良識の範囲内で。学問成績評価は平等。
貴賓の差なく切磋琢磨して学び合い、広く視野を広げ交流を若いうちに持つことが目的とされる。
鉄は熱いうちに打てということでもある。
そこで身分を超えた友情が生まれることもあるし、互いに主従を見つけることもある。
…生涯の宿敵に出会うこともあるが。
ともかくも生まれた時から傅かれる王族や上位貴族にとって王立学園は、それまでの身分制度といった固定概念を崩し世界を広げ、大人になる過程において大切な場である。
才能ある平民にとっても身を弁えつつ、人脈や後見を見つける場でもある。
ゆえに最低限の身分による作法が求められる。全くの平等ではない。ありえない。上下の差を知り、学ぶ場でもあるのだ。
懸念材料はその「平等」だ。
ゲームヒロインというのは男爵家の令嬢であるが、長く妾であった平民の母親の元にあり庶民として育った。だが男爵家のただ一人の嫡男が病により死去し、婿を取り男爵家を継がせる為に本宅に引き取られた。故に貴族としての教育は付き焼き場。その価値観や思考はどこまでも平民だ。学園が認める学術上の平等を拡大解釈するのだ。
ヒロインら無知であるが故に身分制度を壊す存在だ。明るく前向きに真の平等を語り行動する。
それは学園に一石を投じ、波紋を広げるだろう。
それに惹かれるのが攻略対象者達だ。
良い意味で影響されるのは良いのだが、一歩間違えれば王国の根幹を揺るがす価値観だ。身分の上下を否定し、平等をうたうというのはそういうことだ。
前世の記憶。その歴史を鑑みても、世界の流れが民主化の大流にのまれているならともかく、平等主義の思想そのものが存在いていない現在、王族や貴族子息がこぞって通う小さな社交場であり王国の顔となる学園に王権制度を根幹から覆すような思想が広がり、政治にまで影響を与える可能性があると捉えられたら。ましてや次期王から感化されていると他国に知られたら、国の弱体化どころでなく、危険と判断され侵略される危険が増す。
近隣諸国が警戒しないわけがない。国の将来を担う留学生もいるのだ。力をつけるべく励む向上心ある若者が。
権力者にとって危険思考を植え付けるモノを野放しにできるわけがない。全力で潰しにかかるだろう。学園に、我が国に圧力がかけられる程度で済むならまだマシだ。
最悪は近隣諸国が手を結び我が国を滅亡に追い込んでくることだ。彼らが平等思想をどの位危険視するかにもよるが、完膚なきまでに国土を蹂躙し、民を虐げる可能性が否定できない。我が国の民族という理由でその後迫害されるかもしれない。
考え過ぎとは言い切れない。それだけ王家や貴族にとって不都合な危険思想だからだ。前世の市民革命を思い出せばわかることだ。
なにも自由民主主義を否定しているわけではない。仮にその思想が広がり自身の地位権力が脅かされたとしても。それが時代の流れなら逆らっても事態は悪化するのであろうし、多くの国民が幸せになれるなら例え命が刈られるとしても受け入れられる。覚悟もする。
ただ今の世界ではまだ早過ぎる。全くと言って良いほどそのような思想も、そういった思想を生み出す土壌や人が育っていないのだ。そんな中で不自然に唐突にそんな思想が上から上がったところで圧倒的権力で潰される。
王はこの国を、民の平和を守る義務がある。民の生活の向上の為に、魔物や他国から守る為に邁進してきた。それをそんなゲームなんぞの為に破壊されたくはないのだ。
杞憂に過ぎないかもしれない。
だがヒロインが王と同じように前世持ちかつ、ゲームの記憶を所持している可能性はゼロではない。
ただでも学園に一陣の風を吹き込むのだ。
ましてそれが記憶持ちで「攻略」という概念で現れたなら。
ヒロインを入学させないで済むならそうしたいが、まだ何も問題を起こしていない者を理由無しに排除する訳にはいかない。
用心に越したことはない。打てる手は全て打っておくべきだ。
王子が攻略された場合を思い出す。
幾つかエンディングパターンがあった筈だ。
穏便な物もあれば、公衆の面前で元婚約者を吊し上げるような騒動も。
「王子と同年で攻略対象者とは遠い者。かつ信用の置ける人物…か。いや当然一人では足りぬ。教授陣にも対象者があったな。学園内に今いる人員の他に幾人か送り込む必要があるな」
彼の息子を含めた攻略対象者への監視役。ヒロインに絆されるようでは困る。あくまで傍観者であらねばならない。
「誰ぞに命じてリストを出させるか」
早急に候補者を選定し、周辺の調査が必要だ。
彼は大きく溜息をつくと侍従を呼ぶ為に机上のベルを鳴らす。
第二王子の教育も見直さなければならない。
そもそも王家に限らず次男というのは生まれた時からの後継である長男のスペアとして教育される。それでも後継ではないから全てにおいて扱いが異なる。いざという時に成り代わらせる為に長男に近い教育はされるものの、だからと言って長男の健在時に逆らったり下剋上されても困る。ゆえに扱いは複雑だ。複雑にならざるを得ない。王家においては尚更だ。
下手に王位へ色気を出されれば国が乱れ他国に付け入る隙を与えてしまう。
王なりに第二子に気をかけ、気遣ってきたが、今後はさらに慎重に教育をしなければならない。
心底あって欲しくはないが、第一王子を廃嫡する事態もあり得るのだ。
愛する家族であっても時には心を鬼にして決断しなければならない事もある。
冷徹な判断を下さねばならない時、特に思う。王でさえなかったならと。
前世のように平凡な一市民であったならと。
「言っても詮無きことだな」
独り言を拾い、一礼して入室してきた侍従の問いたげな顔に何もないと片手を振る。
腹心の一人を呼ぶように指示すると、椅子を回し窓の外を見た。
庭師が丹精込めて育てる見事な庭園が広がっている。日々激務をこなす彼を慰め癒す為の庭園。
王を王とする為に為されてきた全ての事。
最高の待遇に環境。者、物。
今迄の、これからの、与えられてきた、与えられる恩恵。それらに応えなければならない。
生涯を国に、民に捧ぐ。
前世への憧憬。
けれど今生の血肉は、全てはこの国の民に与えられ捧げられた。投げ出す事など出来はしない。
「さて、仕事、するか」
王は一度閉じた目をゆっくりと開ける。真っ直ぐに前を見据える目は力強く、迷いなど何処にも見当たらない。
今日もここから国を動かしていく。
より良い王国の未来の為に。
FIN
この王様は賢王と呼ばれてます。いわゆる内政チートな事はしてません。前世知識を利用してないわけでは無いですが、あくまで現在の世界情勢や文化に合わせた政策を取り、急進的なことはしてません。
あやや。
他にもあったような気もしつつ。