2020年11月12日 (木) 14:54
書き散らかした。反省する気がない。
少々長くなったので二回に分けまー。
場外乱闘2 深海の国にて下の後。
--------
ボクの国に闖入者がいると気づいても全然興味が湧かなかったが、そこに花の妖精女王の祝福があるとわかり、もぞりもぞりと身を起こした。
こうやって体を動かすのはいつぶりか。深海の更に深く光という光も色と言う色もない冷たい場所からずるぅりと抜け出し、緩やかに浅い方へ浅い方へと泳いで行く。
果てしなく広い海の中、どこだろうと魔力の波を飛ばせば、魚人と人魚の集団の中にヒトの子がいた。
あぁ、あれだ。天上の花のニオイがする。
魔族と妖精族と会話をするヒトの子には、ケルベロスと複数のスライムがついている。それなりに躾られてるみたいだけど、ボクの力では爪で弾く程度で十分。けど厄介な魔石もあるな。
額に印がある。アレだ。あのニオイ。
甘く色づき、綺麗で、憧れて、欲しかったニオイ。舐めてもいいかな。
ヒトの子の手に見知った印を見つけた。遥か遠い祖先。同じ龍種から細く枝分かれした子孫の印だ。
何々?『激弱。取扱要注意』?そんなに弱いの?弱い癖に妖精女王の祝福を持ってるの?
ティターニアから口づけをもらったの?
欲しかったのに。
ボクが欲シかっタのニィ。
水を撫でれば耳元から数本の髪が踊った。美味しそう。途端に、夜の王の守りが泡を弾く。
でもここはボクの国。どんどん泡を増やせば、衝撃音と波とともに深海の世界に閃光が走り、輝き、岩場に影を作る。
あはは。あはは。
久しぶりに楽しくなってきてグイっと力を入れていたら、淡い妖精の光を纏ったヒトの子が気絶して、包んでいたシャボンも割れた。
あっけない。つまんない。
壊れた玩具。
その瞬間、ヒトの子の胸元から幾筋もの稲妻の刃が放たれ、縦横無尽にボクの肌を焼いた。
最後にそれを覚えていたのはいつだろう。焦がされた感触が脳に伝わり、激昂し、一口で喰ってしまおうと向くが、既にヒトの子の姿はなくなっていた。犬もスライムもいなかった。
「……藻屑になるには早すぎない?」
ぐるぐると周辺を探すが、ヒトの衣の端も見当たらない。毛の一本くらい置いて行ってもいいのに。あの魔力を帯びた髪は美味しそうだった。
「あーいたいた。見つかりましたよぉ。」
聞きなれない声がして、深海の闇からごうごうと音を立てながら、オンボロの船がイカ墨のように現れた。あれは、亡霊の巡視船?
看板にいる骸骨騎士が、海の亡霊となった巡視船の乗組員(死霊族)に「ご案内頂き、ありがとうございます」「いえいえこちらこそ」「お土産もありがとうございます」「どうぞまた、よしなに」と挨拶を交わしている。
白い岩場の目立つ砂浜に降り立ち何かを拾い、ヒラヒラと手を振って亡霊船を見送る。
深海でも酸素も呼吸も圧力も温度も関係なく、濃い魔素も瘴気の中でも不便なく自由に動ける体…冥界出の魔族か。
そうして、手に持っている白い小さな物体…全体的に丸くて三角の耳がついた動物型の…ゴーレム素材?依り代?を撫でている。
「おやまぁ、ケルベロスにスライムまでにゃんポケに吸い込まれるとは。初めての環境で大変でしたでしょう。」
『 』
「えぇ、魔力不全症になってません。身体も心も大丈夫そうですね。あなたたちがちゃんと守ってくれてたからですよ。」
『 』
「深海の王の威圧によく耐えました。頑張りましたねぇ。ヨシヨシ。」
『 』
「はい、おやすみなさい。」
白い物体の中にいる何か(内容からすると犬かスライム?)と会話し、撫でた先から記憶を辿り読み解いた骸骨騎士は、「回収完了。さて、帰りましょう。」と懐?に入れた。去ろうとする骸骨騎士を長い尾で囲い込み、待ったをかけた。
------
忘れなければまた明日~