断熱圧縮についての補足
2022年06月28日 (火) 20:31
 本編では熱エネルギーモデルを『部屋の中にいる発熱体』と例えました。
 しかし、科学的には――

 熱エネルギー ≒ 熱振動 ≒ 原子の振動

 というのを、まず踏まえるべきです。
 そして先に最低温度を――

 部屋の中に、一人も発熱体がいない状態

 と定義するべきだったりも。
 ちなみにマイナスの温度は存在しません。
 どっちむきだろうが原子が振動してれば、それはプラスです。
 なにより「発熱体がマイナス――原子がマイナスに振動しているって何だよ?」となってしまいますし。
 勘の良い方なら察したかもですが……この断熱系は『絶対零度』を導入して考えないと、色々とバグります。
(驚くべきことに古典科学では、マイナスの温度が定義できないのです!)

 そして0℃は絶対温度表記で273.15Kですから――

 10畳の部屋で、2731人の発熱体が暴れている状態

 と表現されます。
 これが1/10へ圧縮されると、一畳あたりでは2731人ですから――

 なんと2457.85℃!

(現実には圧縮した速度なども影響するし、ここまで劇的変化はしない。が、イメージモデルと同じく反比例はしている)
 そして断熱膨張の場合、10畳を100畳へですから――

 一畳あたりは27.31人、つまり約245℃ほど冷えた

 となります。
(やはり実際には、もう少し緩やかな変化)

 まれに断熱圧縮を利用し、溶鉄などしている作品がありますが――

 おそらく説明されていない『何か』があります。

 確かに適当な熱源で温めた気体を、溶鉄に必要な1600℃以上へ熱を偏らせることは可能です。
 しかし、仮に1/10へ圧縮した場合、それは10気圧の状態なわけで――

 超高熱かつ超高圧なまま操作

 ということになります。
 あるいは、高熱へ偏らせた後――

 なんらかの触媒へ、熱の均一化を利用して熱を移す

 必要が。
 もちろん、これは物凄いロスに!
 さらに繰り返す前提だと、すぐに物理的限界へ到達してしまいます。

 実際、断熱圧縮を利用した溶鉄炉などは構想されていて、学者先生が研究してらっしゃいますし、最先端の炉では部分的な活用もされているようです。
 が、まだまだ完全な実用には程遠く!

 実用が成功している範囲でいうとエアコンや冷蔵庫、エコキュートなどの湯沸かし器ですが――
 それらですら、ここ百年で驚異的進化を!

 現在の最先端 > 昭和・平成期 > 大戦機 > 工業時代突入 > 手工業 > 転生者が作らせた製品

 でしょうから、いま現在から七世代ぐらい前の技術となります。
 集積回路の技術で例えたら、真空管レベルでしょうか?


 また溶鉄の場合、「そんな超高温を、どうやって捕まえておくのだ?」と御馴染みの問題が。
 ……ようするにコークスと耐熱建材を使った方が手っ取り早い。


 最先端のエコキュート系の場合、使った電力に対して5~60%を利用――お湯を沸かせられます。
(これでも電熱器などの数倍。効率300%などを謳っている場合は、この比較)

 しかし、何らかのパワーソース――火力、原子力、風力など――から50%の力を抜き出せたら、それは超高効率なシステムと見做されます。

 なので「風車から超高効率でパワーを抜き出し、それを50%の効率で熱変換した」が理論値25%の論拠です。

 そして効率1~2%でも冷凍庫としては成立しちゃうんですから、この技術のぶっ壊れぶりが分かって貰えたり?

 ちなみに作中では割愛しましたが、熱媒体の塩水へ氷点下の熱を移し、金の針金を伝わらせて冷凍室へ運び、内部の放熱板で冷やしています。
 昔の1ドア式冷蔵庫と同じ仕組みですね。
 熱媒体が塩水なのは凝固点を下げる為(飽和食塩水で-21℃に)
 内部が黄金製なのは錆対策と、優良な熱伝導を見込んで。……もちろん値段を跳ね上げる目的でも。
 またS〇NYタイマー的な仕込みもしていて、分解すると元に戻せないし、無理させるとすぐ壊れてしまいます。
 リュカ的にはガイウスの代で失伝させたかったりも。

蛇足

 現代の工業力なら、人造温泉ユニットも実用可能では?
 一馬力程度の小さな水車でも、効率25%なら毎時8リットルのお湯が!
 つまり、常に家族風呂一杯分が湛えられて!?

 逆方向で現代工学の粋を集めれば、二桁台の馬力な水車や風車も!
 もう本物の人造温泉が!

 ……いけると思うんだけどなぁ。
コメント全7件
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curuss
2022年06月30日 00:22
 かなり面倒な技術ですし――
〇メリット
・運動エネルギーを熱エネルギーへ変換できる
・操る温度に理屈上の制限がない
〇デメリット
・自由自在に扱うには、非常に高度な工業力が必要
・技術力が低い場合、他の手段に負けがち
 程度の把握でOKかと。
 溶鉄炉とかならともかく、それほど凄い道具でもありませんし。

 ただ「細かく考えると色々と割愛してるし、それも提示はしとかないと駄目だろう」が、今回の趣旨です。
地の草木
2022年06月29日 23:54
自分の馬鹿に気づきました、熱量ではなくて基本の理解が出来て無いのが恥かしい。
考える前提が違ってました・・・自分を大馬鹿と認めます。
断熱膨張に関する熱力学の法則は正しい。

私の大馬鹿は断熱膨張は気体に関する事象と言うのを忘れてた事でした。
さらに物質は気体と液体や固体と変化する性質を考慮しなかった事。
℃と言うのは固体と水蒸気の指標で在る事を忘れてた事。

科学思考で考えるなら特定の対象物を決めて考えるべきでした。
断熱膨張の法則は対象物が気体の場合に適用できる、つまり℃なら水蒸気の場合だけ。
そして断熱膨張を℃で考えるなら固体に変化した時点で膨張は不可能。
氷点を零度としてるからマイナス温度には下がらない。

なんとなく空気の断熱膨張を試行錯誤してましたが・・・
酸素、窒素、二酸化炭素など多数物質。
という事は物質ごとに気体と液体や固体の変態点を零度とした指標単位で計算し合わせる。
厳密には他の要素や性質が関係してるので単純な逆比例では無いでしょう。

絶対温度を使うのは全ての気体を扱えるからだと思います。
絶対零度は原子が停止してる状態らしいから気体の全てに指標を使える。
断熱圧縮、25℃を100倍圧にすると2500℃、10倍でも250℃だから水を沸かせる。
思考は正しいです、難点は10気圧の装置作りは困難と言う点・・・
地の草木
2022年06月29日 07:22
変だなあ?計算が違うのか考えが違うのか?
25度を10倍に膨張すると2.5度、2.5度を10倍に膨張すると0.25度。
という事は25℃を1000倍に膨張して0.025℃という事・・・どこが変なのかなあ?
3000倍に膨張すれば0.08・・・標高3000mで0度らしいから計算値は近い。

もしかして?
膨張前の温度から熱の変化量を引き算しないからマイナスにならない!
膨張後の温度=膨張前の温度ー変化熱量。
気体の比熱は変化無しとして、なら温度変化で変化熱量も変わらない。
それで膨張前の温度が1℃で変化熱量が10℃ならー9℃と成るのか・・・
つまり傍聴後の温度が変化熱量より高い場合に圧力変化と温度変化は比例する?
℃でマイナスに成るのは単に引き算の結果・・・℃指標の定義からの特徴。

現実でも10気圧を大気圧に膨張しても涼しい程度、周囲に大量の空気が有るから変化は小さい。
3000気圧から大気圧に放出すれば0℃近い。
変化熱量を得る計算式に比熱が使われる意味、知らなかった「熱力学は難しいよーーー」
空気液化の困難は超低圧空気圧縮機と断熱方法・・・多段階圧縮方法を使ったのは当然なのか。

アンモニア製氷機の特許と実用化は1860年で南北戦争の前年、らしい。
2022年から162年前の事・・・転生者レベルで可能、と思う。加熱は火を燃やせば良い気が・・・
curuss
2022年06月29日 00:49
 『10分の一だと2.5度、20分の一で0.25度』だと、どんなに希薄しても最初の温度から0℃へが限界となります。
 なので絶対温度で計算し直さないと、色々と不都合が生じてしまいます。
(本文では分かっていたので『完全に真逆』と説明し、誤解を避けました)
地の草木
2022年06月29日 00:17
うーん・・・
深く考えずに単純に浅く考えた方が判りやすい気が・・・
使う単位は℃、対象は気体で空気、熱の定義は分子運動と決めます。
25度の空気を10倍に圧縮すると温度は250度、10分の一だと2.5度、20分の一で0.25度。
理想気体の場合と決めます。

現物の空気は大量の水を含んでるので圧縮すると現物化つまり水が現れる。
温度がさらに上がると気化熱を吸収して気体に・・・さらに圧力が上がり・・・水が出来て・・・
おまけに現物空気は粉じんや化合物を含むので圧縮で現物化?し装置に悪影響が発生。

技術的に10気圧を扱うのは精密機械工作?を必要かも具体的には100分の一ミリ以下かシール技術。
タンクの破裂防止に安全弁や圧力計。そして圧縮機と配管類・・・
こういうのを作れるなら蒸気機関やタービンや内燃機関や中退複座器の大砲も量産出来そう。
機関銃も・・・

3気圧に圧縮し近くの暖房に使う方が良いと思う、周囲に大量の木が有るんだし。
異世界ならこんなものを作るよりアンモニアを分離し吸収式冷凍機を炭火で稼働の冷凍庫。
動物や人間の糞尿から分離する、まあ家畜が少ないと言う事情はありますが・・・

機械技術的にこちらの方が異世界に向いてる気がします。現物地球でもアンモニア製氷機が先と思う。
ただしアンモニアは爆発する気体なので慎重なる扱いを要します。


curuss
2022年06月28日 23:31
FじゃなくKでした!
訂正しておきます。
他は事前にwikiで再確認しており、そちらに合わせた結果です。
畢竟 吾煌
2022年06月28日 22:57
ども。失礼します。
>熱振動 ≒ 原子の振動
「振動」ではなく「運動」とした方がよいと思います。

>マイナスの温度は存在しません。
レーザー光を作る時などに、一応マイナスの温度の概念があります。
励起状態の原子の不均衡など、もしくはアインシュタインとか、調べたら面白いかも。

>そして0℃は絶対温度表記で273.15Fですから――
単位ファーレンハイト温度、華氏なら「°F」です。絶対温度はケルビン「K」では?