2010年12月15日 (水) 22:27
リハビリ作品その二になります。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
小さな村に存在する、野外の酒場はハンター達の集いの場でもある、依頼書などを酒場の中に置いてある板に張り出し、それを見てパーティーを組み戦いに赴(おもむ)くのである。
小さな村である故に村人とハンターが皆知り合いであるという良い村であり、情報の出回りなどもとても速い、だからこそ、『彼』が来る前にこの人達が来たんだろうなぁ、と心の中で少女はぼやいた。
「「アイツが戻って来るって本当なの!!」」
酒場の受付嬢として働いて来たけれど、ここまで眼が血走り叫ばれた事は一度も無く、その上、こんな怖い顔で近づかれるなんて事一度も無かったなぁ、と思いながらも、やっぱり怖く、つい……近くの床に置いてあったハンマーを振り下ろしてしまっていた。
「リーザもサラちゃんも慌て過ぎよ? それにお昼でもお客さんはいるんだからもう少し静かにしないと駄目よ?」
地面に埋まるかの様に倒れている二人にそっと言葉をかけた私こと、ルナ・ラクウェルはそそくさとハンマーを隠した。
「る、ルナさん、だからってハンマーは酷いと思うんだけど私」
「そうよルナ! ただ愛しの少年が帰って来るって言うから聞きにきただけなのに~!」
私もやっぱりハンマーは酷いと思いますが、二人の顔が修羅の如く怖いからいけないんですよ?
そんな事を頭の中で考えながらも軽く謝罪して私は懐から一枚の手紙を取り出す、そこには大きくとある少年の名前が書かれていて、それを見た二人はすぐさま手を伸ばして私の手から手紙を奪おうとするも、私は手をひょいと後ろに下げて奪われるのを回避した。
「ルナさん……その紙を渡してくださいっ! その紙は私宛のはずですっ!」
「ルナ、すぐに私に渡すのよ! サラちゃんには悪いけどね、それはきっと私の宛てのはずなんだからっ!」
冷静沈着のランス使いと呼ばれているサラちゃんも、鉄槌のハンマー使いと名高いリーザも彼が送った一枚の手紙でこんな風になってしまうのも凄いなーっと思いつつも二人から伸びる手から回避し続けた私は、中から一枚の手紙を抜き出して二人に見せる。
「私が読んであげますから、二人とも大人しくしてください、どちらに向かっての手紙かも最後に言ってあげますから」
その言葉に納得してくれたのか、二人は小さく頷きつつ近くのイスをカウンターの前に持ってきてすわり私の言葉に耳を傾け始める。
『ココットの村から離れてかなりの時間が経過したが、やっと此方の用事も終えたので皆の元に行きたいと思う、と言っても他の皆もハンターだ、色んな場所で狩りをしているだろうから探す旅に出るはめになると思う、そこら辺に村についてから話したいと思う。どこの手紙はリオに空から先にいって送って貰った。僕もゆっくりと歩きながら向かうので待っていてほしい……』
最後に誰宛なのかを言わなくちゃいけないのだけど、目の前の二人が食い入る様に見ていて、少しだけS心を擽(くずぐ)られます、それに丁度タイミングも良い……という事で私は紙を二人の後ろに通り越す様に投げました。
「「っッ!!」」
二人とも歴戦のハンターであり反応速度は異常と言えます、まぁ、こんな事で発揮するのはどうかと少しだけ思いますが、真上を見ながら変な形で手紙に手を伸ばし掴もうとしますが……、その瞬間、軽い風が吹いたかと思えば手紙が微塵切りになりそのまま空に舞(ま)って行きます。
二人の顔が凄い絶望的になりながら、変な形で取ろうとしたせいでそのままイスごと後ろに倒れていきます、そんな中、私は二人の真後ろにいて双剣を懐にしまう青年に言葉をかけました。
「おかえりなさいラセ君」
「ああ、ただいま……それでこの馬鹿二人は何しているんだ?」
私はにっこりと笑い「さぁ?」と答えながら、酒場の奥に歩き出しました。今日は忙しくなりそうです。
後で二人が誰宛だったのか聞いて来る事は無かったので、誰宛だったのかは皆さんの想像にお任せします、それではまたどこかで……。
またゆったり読ませてもらいましょう(`∀´)