短刀と小剣と短剣の違いとか『愛しのヘルガ』第13話『修羅の楽園』6 更新
2021年11月10日 (水) 02:42
『修羅の楽園』は強豪だらけの連戦で格闘ものらしい背景なのに、グータラ女海賊と不良巫女のせいでシモネタまみれという謎構成になっています。

 以下、今回の本編にあった刀剣の解説に関連して。
 武器の分類は諸説も例外もあって難しいですが、創作執筆ではそうも言ってられません。
 軍事考証警察が見逃してくれそうな程度に『わかりやすい必要最小限』で説明や表記分けをしています。
 でも以下の説明を比べてもわかるとおり、重複している部分も多いです。
(なお一般に「剣・ソード」なら両刃で「刀・ブレード」なら片刃ですが、これも例外あり)

『短刀(ナイフ)』(刃渡り5~15センチほど)
 細かい『手元』作業用。『隠し持つ』『投げる』にも向く。
 衣服に入れて目立たないサイズと形状。

『小剣(ダガー)』(刃渡り15~30センチほど)
 日常生活で邪魔にならない『携帯』向きの戦闘用ナイフ。
 衣服へ入れるには目立つサイズと形状。

『短剣(ショートソード)』(刃渡り30~60センチほど)
 戦場で敵や味方が『密接』していても振りやすい。
 胴体のシルエットに収まりやすいサイズと形状。
 屋内などの『狭所』にも適しているため、潜入や暗殺にも向く。

『長剣(ロングソード)』
 標準的な『間合』を重視した刀剣。


 以上の説明にある『手元』『携帯』『密接』などはあくまで私が自作品に合わせた分類基準なので要注意。

 小説ではふつうに「ナイフ」「大きな(刃の長い)ナイフ」「短めの剣」みたいに書いたほうがわかりやすくてよいと思います。
 短刀・小剣・短剣は字面で違いがわかりにくい上、各マンガやゲームどころか専門書ごとにも分類のゆらぎがあるので、娯楽系だと損なこだわりです。
 私は短刀や小剣を出すなりサイズのわかる描写を入れるか、どう解釈されてもいい運用にしています。


『小刀(こがたな)』
 読みが「こがたな」のほう。
 短刀でもより細く薄いか、戦闘でなく作業用の印象が強い。
 婦人が懐(ふところ)に隠し持つ護身具もこの名称になりやすいような?

『短刀(たんとう)』
 ナイフでも長刀に似た幅と厚みがある印象。

『短刀(ドス)』ヤクザダガー?
 懐に隠せるけど、対人戦闘用の印象。隠し持ち用ダガー?

『匕首(あいくち)』
 昭和の小説とかではナイフの訳語としてよく出てくる。
 字の通りに首を裂く以外は致命傷になりにくいサイズ。
 でも字面が物騒で戦闘用の意味を含むので、ダガーぽい刃物の訳語でも多い気がします(根拠希薄)
 なお「あいくち」は『合口』とも書いて、本来は短刀(ドス)のように鍔(つば)無しで鞘(さや)と柄(え)がぴったりあう形状のこと。その読みを中国語の匕首にあてたもの。

『投剣』
 投擲に適した重心と形状でないと、投げても刺さりにくい。

『手裏剣』『苦無(くない)』
 投剣だけでなく工作用具なども兼ねている。

『サバイバルナイフ』『アーミーナイフ』
 キャンプ用でもナタやノコギリを兼ねたサバイバルナイフだと、携帯性が落ちるしもはやダガーが妥当な戦闘力。
 逆にアーミーナイフは対人用ながら動作の邪魔にならないサイズが重要なほか、ライフルの銃口につけて銃剣にするなら過度な重量も邪魔そう。現代だと工作用具(障害撤去や設置作業など)としての役割が大きそう。
 どちらもサイズやデザインが多様なこともあって、対人戦闘用であるダガーに分類するかどうかはものによる。あるいは作者による。

『包丁(ほうちょう)』などの転用
 ものによるが、刃渡りでダガーなみでも、厚みがないと折れたり曲がったりしやすいし、肉切り用とかでないと刃こぼれしやすい。
 刃先が刺突に向く(出刃とか)か、鍔の有無、握りのすべりどめ性能、などでも対人戦闘での使い勝手が変わる。

『脇差(わきざし)』『小太刀(こだち)』『小刀(しょうとう)』
 江戸以降で侍の作法となった「大小二本差し」の短いほう。
 サムライショートソード? ショートブレード? サブカタナ?
 なお二刀流でも左右の長さを変えたほうが振りやすいです。
 でも長いやつを両手に持たせた絵面も捨てがたいから娯楽創作では必然性をでっちあげるんだ。やれ。

『片手剣』『細剣(レイピア)』『針剣(フェンシングソード)』
 片手専用は銃砲の発達で甲冑が廃れて軽量志向になってから拡大?
 なお『ブロードソード』は「当時の一般的なレイピアに比べれば幅広(ブロード)なだけの細剣」というクソこまけーツッコミやらかすめんどくせー考証マニアさんには親近感をおぼえます。

『片手半剣』『長刀(ちょうとう、ヤッパ)』『太刀(たち)』
 バスタードソードが有名ですが、日本刀をはじめ「片手でも使えるが両手で振るほうが力が入る」分類は多そう。
 騎乗の手綱を考えても片手専用のほうが少ない? 両手専用はさらに少なそう。

『両手剣』
 ツヴァイハンダー以外にもクレイモア、フランベルジュ、バイキングソードあたりがメジャーぽい。
 ただし片手だと厳しい重量や寸法だと、槍や戦斧などのほうが使いやすそうで運びやすそうで安価そうなので、誇示や威嚇などの意味が大きそう。

『大剣(グレートソード)』『斬馬刀』
 かなりの腕力でないと扱えない重量と寸法。
 やはり槍や戦斧などのほうが利点が多いとは思うものの、実用性が怪しいロマン武器だからこそ創作では必然性をでっちあげろ。大鎌とかも大ちゅき。


 というか剣そのものが……史実だと戦場の主武器は「弓>槍(長柄武器)>剣(片手武器)」が基本です。
「避けるほうがはるかに大変なんだから先手必勝、射程が最重要やん」というみもふたもなさ(士気の問題も大きい)
 剣は近接される前の弓手が持っていても邪魔にならない携帯性とか、密集する状況や、城攻め市街戦など槍が運用しにくい状況で居場所があります。
 あとは槍が邪魔になる戦場外、特に都市部や屋内。

 創作者でちゃんばら好きなのにリアル志向だと必然性に苦労する。しろ。がんばれ。人型巨大ロボよりは解消しやすい課題だ。


 ……ファンタジー関連のノーガキは止まらんのでやばいです。
 短刀と小剣の差異を味わうとか、短剣の特性を活かす描写が好きなのですが、世界設定からマニアックな作品になるので手をだしにくいです。

 今のところ自作だと『迷宮地獄~』のヒロイン師匠(砂の聖騎士ヒギンズ)が常人では最強格なのに短剣使いですが、その理由は特に解説されないまま。
 競技環境に狭所が多いほか、護衛が主な役割(味方と密接しやすい)、腕力と速度で人間を圧倒する獣人も多い……みたいにノーガキたれたいけど、主眼はコメディなのでそのあたりのリアリティに注目されるとほかの不自然が目立ってしまいがちなので割愛。

『異世界へ転生したことにする』は魔法をからめながらも槍と剣(と斧、鞭、盾、杖、弓、自転車)に別の存在意義とバランスを設定しているあたり、密かに趣味が出ています。

 このあたりの趣味をガチガチに固めたファンタジーとかも書きたいですが、とりあえずは商業で結果を出さないと……あわよくば両立……いずれにせよまず現在の掲載作品で質を上げていかねば。
 読んでもらえて反応があることは、やはり鍛錬には貴重この上ない環境です。
コメント全4件
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平井星人
2021年11月17日 14:50
>不覚たん 様

ロングボウが「縦に構える」という意味……!?
知りませんでした。あわてて検索。

クォーター……木材に対して、という意味だったような? 検索……
『持つ部分』説もあったりして、よくわかってないのですね。これも初耳です。

身長の四倍=樫の育成~伐採~運搬で効率がよい長さ。かつ馬防槍として折れないで使える樫の強度限界。
身長の二倍=馬上や単独歩兵でも扱いやすい槍。
身長=狭所でも使いやすい長さの護身具。

みたいに思ってました。

小説を書きはじめてから、わかっているつもりだった単語を調べて驚く頻度がずいぶん増えました。そして減らない。どういうことなんだか。

『バスタード』が『~バスター』的なかっこいい意味かと思っていた時期は私にもありました。これも武器あるあるですね。
不覚たん
2021年11月16日 16:22
剣ではないのですが、ロングボウが「長い」の意味ではなく「縦に構える」という意味だったのを見て、ちょっとびっくりした記憶があります。武器あるあるかもしれませんが。クォーター・スタッフなんかも、なにがクォーターなのか考え始めると脳細胞が死滅しそうです……。
平井星人
2021年11月10日 21:04
>NOMAR 様

おおっ、サムライショートソード経験者様ですか。
私は「結局は射程?」みたいに単純化しがちですが、小太刀が間合の不利を埋める『誘い』も「相手の太刀筋に寄り道させる」相対的な距離かせぎとも解釈できそうですね。

槍は短槍(個人で背負って運びやすい全長)の分析に悩みます。
剣より有利な面もありますが、もぐりやすさ、つかみやすさなど、実戦で「刃渡りの差」が自他へ与える影響を不勉強かもしれません。

『愛しのヘルガ』は時代的にまだ武術の理論だてが未発達(次回で組み技についても少し書きます)で、そのぶんシロウトと達人を混ぜたり、珍奇な装備を持たせやすかったりしますが、リアリティとのバランスとりで試行錯誤が続いています。
NOMAR
2021年11月10日 10:58
武器はこだわりだすときりが無いですね。剣、とあればそれでいいから話を先に、という人もいればゲームなどから入って武器の設定に拘る人も。

ヘルガは闘技場の物語なので、武器の選択と習熟が命に関わるから登場人物は拘るのが当然という気がします。

駒川改心流の小太刀の型をやってみると、刀の間合いの内側に入る、その為の誘い、踏み込み、受けが重要という感じでした。隙を見せて首を斬らせて、小太刀を折られ無いように柔らかく刀を受け止めつつ接近、というような。

槍は戦場では強くても持ち運びが結構大変で、槍や薙刀を持って電車で移動するのはなかなか苦労します。剣や小剣はやっぱり携帯性に優れますね。