2016年08月31日 (水) 00:40
十二時に五合目を出発してから五時間ほど登った十七時半ごろ、
八合目の池田館(3250メートル)に着きました。
ご来光を見るため、今夜はここで素泊まりをし深夜に出発する予定となっていました。
素泊まり5500円に1000円追加することで晩御飯のカレーが提供されるようでしたが、
それだけ量が多いとは限らないことを理解していたので、
手持ちの食糧で済ませることにしました。
前の仕事から離れてもうずいぶんだらけた生活をしていたはずなのに、
意外とここまであまり栄養を取らずに進むことが出来たので、
後の事も考えて満腹になるまで食べることが出来ました。
休むと言っても何もしないわけにはいきません。
まず、防寒対策です。
下山する人からその時の山頂の気温を聞いたところ、五度だったそうです。
これから夜は更けていき気温も下がっていくはず、友達は
下にスパッツを履き、厚めのジャンパーを用意しました。
私も私で服こそ持ってきてはいませんが体を横にして体力の回復に努めます。
いつもしている休みではなく、本当の意味で休んでいました。
それとトイレです。
幸いにもここのトイレは宿泊者に対しては無料で使わせてもらえるのですが、
基本、山中のトイレは有料です。富士山にとって水は貴重品なのです。
無駄なお金は使いたくないので、
今のうちにスポドリを飲み、用を足し、全快の状態で向かおうと考えていました。
「……眠れん」
池田館では寝袋を宿泊者に貸してくれるのですが、
妙に暑いので私はそれ脱ぎ、下に引いて寝転んでいました。
そこへトイレに言っていた友達が戻ってきました。
「ちょっと外、来てみろよ」
そう言われて私は池田館を出ました。
すると、そこで見たものは満天の星空でした。
「へぇ~。やっぱりここまでくると見えるものなんだな」
某アニメでは星がない空の下に広がる夜景は最高だとか、
人間の営みの結晶だとか言ってましたが、
これはこれで味のある景色だと思いました。
「あれってデネブ?」
「いや、ベガでしょ。こと座だもん。北極星ってどこだろ?」
「北斗七星からどうのこうのな場所にあった気がする」
とか、星の知識に疎い私たちが一丁前に星座観察なんかをしてもいました。
「俺、高山病になりかけてるかもしれない」
「え? マジで?」
星空を見た後に中へ戻ると友達がそんなことを言いました。
「なんか頭痛いし、寒気がする」
「そりゃ気のせいだ」
「もし俺が途中で倒れたら、先に言ってくれ」
なんて友達がありきたりなセリフを言うものだから私は
「良し。躊躇なくおいて行ってやる」
と逆に挑発して登らせる言葉を返してやりました。
一人で行くなんてとんでもない。
友達が高山病で苦しいように私だって足が痛い。
しゃべる相手がいなければ「もうここまで登ったしいいか」と
自分を甘やかしてしまう。
たった一人でも登り切ってやるという強い精神力があれば、
もしくは痛くても黙々と登り続けられるほど精神が死んでいれば
前の仕事を続けていたかもしれない。
そのどちらでもない私にはどうしても一緒に登ってくれる人が必要でした。