2016年07月11日 (月) 00:10
この記事は『神様によるペナルティ』のショートストーリーです。
1つ前の記事の『仲直り大作戦2』の続きの話となりますので、
まだその話まで読んでいない方にはネタバレとなる要素がいくつかありますので、
この話を読むときはご注意ください。
今回は健吾視点です。
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「で? 何か言うことはあるかしら?」
ゲーセンを出て少ししたところで僕は真琴と優花ちゃんに捕まり、息も整ったところで真琴がジト目でそう聞いてきたんだ。僕は全面的に僕が悪いこともあって、視線を下へ向けて
「……ごめんなさい」
何とか絞り出したような声で謝ったんだ。すると少しの間があった後、ふぅと1つ息をはく音が聞こえてから、
「まぁただ踏ん切りがついていないだけだと高を括って、無理矢理にでも直接合わせれば何とかなると安直に考えて京の気持ちを考えなかったのが悪かったわね」
そう言っているのが聞こえたんだ。その言葉に慌てて僕は顔をあげて、
「そんなことない! ただ逃げるだけで健吾に会おうともしなかった僕と健吾を合わさせてくれたのに、僕がまた逃げちゃったせいで……」
真琴が言ってきたことを否定したんだけど、している途中でまた自分の不甲斐なさに最後まで言葉を言い切ることが出来ず、再び俯いていると、
「……京さんは今回のことは迷惑ではなかったのですか?」
優花ちゃんが俯いている僕に尋ねて来たんだ。僕はそれに小さくだけど頷いて返すと、
「京さんに相談なくしてしまい、京さんに辛い思いをさせてしまったかもしれないと思っていたのですが、それならばよかったです」
優花ちゃんは安堵のこもった声でそう言っていたんだ。僕はその声を聞いてゆっくりと顔をあげて
「2人は怒ってないの……? 僕のために小野君たちにまで連絡を取って場を作ってくれたのを僕が台無しにしちゃったのに……」
恐る恐る2人に尋ねると
「一度引き受けたことだから引くつもりはなかったけど、今の2人の様子を見せられたら余計に引くつもりはなくなったわね」
「そうですね。今のお2人は見ていられないものですからね。是が非でもお2人には仲直りしていただかないと」
2人は当然と言ったようにそう言ってくれたんだ。
「……ありがとう」
頼ったにも関わらずにしてくれたことを無下にしてしまった僕を見捨てないでそう言ってくれる2人に僕は気が付くとお礼の言葉を口にしていたんだ。すると、真琴はパンと音を立てて両手を合わせてから
「さてと、それじゃあ改めて2人の仲直りの仕方について話し合いしましょうか」
真琴がそう話を切り出して来たんだ。僕と優花ちゃんがそれに頷いて返すと、
「まずは改めて確認なんだけど、京は中山君との仲直りは早い方がいい? それとも夏休みの時間をかけてゆっくりした方がいいかしら?」
真琴が僕にそう尋ねて来たんだ。僕はどちらの方がいいか少しだけ考えてから
「出来るだけ早く仲直りはしたいかな。時間をかけちゃうとまた僕が逃げ出しちゃうかもしれないし……」
自分で言っていて情けなくなるけど、絶対に僕のことだから嫌な妄想をしちゃって足が竦むのが目に見えているからね……。そんなことを考えて内心で自分に苦笑しながらそう返していると、
「そりゃそうよね。放っておいたら京はまた暴走して中山君にはもう会えないとか言い出しかねないし」
真琴はそれを見透かしたかのように、呆れたような、それでいてからかうような笑みを浮かべながらそう言ってきたんだよね。
「あはは……」
僕は内心を悟られないようにそれを乾いた笑みで返すと、
「それはともかく、京さんも早く仲直りしたいようですし、どのようにするか決めましょうか」
優花ちゃんが真琴にからかうなという意味も込めて真琴が何か口にする前にそう言ってくれたんだけど、
「……も?」
僕は優花ちゃんの言いまわしが気になってしまい、思わず聞いちゃったんだよね。すると優花ちゃんはコホンと軽く咳払いをしてから
「すみません、少し言い方を間違えてしまいました。それよりも仲直りの方法を決めてしまいましょう」
改めてどうするか聞いてきたんだ。だけど、方法をと言われてもすぐには思いつかなくて2人は何かあるのかなと様子を窺っていると、
「そうね……。まず京は早い方がいいって言ったけど、それは今日でもいいの?」
真琴が少し考える素振りを見せた後にそう僕に問いかけて来たんだよね。
「えっと……、うん。やっぱり早いことには越したことはないし……」
僕は本当に今日でいいのかどうかで悩んだんだけど、さっき逃げ出してしまったことをそのままにしていては駄目だと思った僕はそう答えたんだ。すると、
「わかりました。それでは了承も得られたことですし。こちらも丁度良さそうなので動きましょうか」
優花ちゃんはチラリとスマホを見て何やら操作をした後僕にそう言ってきたんだ。最後の言葉が少し気になったけど、2人もこうやって考えてくれて何か思いついたみたいだし、ついて行けばきっと上手くいくと思った僕は頷いて返した。
…………
……
「そこの中の1部屋を借りたんですよ」
僕が頷いた後、優花ちゃんは再びスマホを操作してどこかへと電話をしていたんだ。それで通話が終わった後、優花ちゃんは行きましょうかと言って歩きだしたんだよね。どこに行くのかを尋ねたんだけど、小さい会議室を借りたからそこでより詳しく決めましょうと帰ってきたんだ。ただ話すだけなら喫茶店とかでもいいんじゃないかなって思ってまた聞いたんだけど、そこにあるボードを使いながら具体的にしたいって帰ってきたんだよね。
その後も優花ちゃんに色々と聞こうとしたんだけど、真琴に僕の意見を重視したいから健吾と会ったときにどうするかについて考えてくれと言われちゃったんだよね。確かに2人に任せっきりもよくないと思った僕は2人についていきながら健吾と会ったときにどうするかを考え始めたんだ。まずは謝るとして、嘘をついていたことについてどうやって説明すれば許してくれるかを考えていたんだけど、中々上手く考えをまとめることが出来ずに、その借りた会議室で2人に相談しようと心の中で決めた頃、優花ちゃんがそう言ってある建物を指さしてそう言ったんだ。
会議室って聞いていたからすごい建物なんだと思っていたんだけど、想像よりも普通の建物だなぁと思っていると、
「さぁさぁ。早く入りましょ? もう予約した時間は過ぎているんだから」
と言って真琴は建物の中へと入っていったんだよね。それを見て僕と優花ちゃんは軽く見合わせて2人で苦笑してから建物の中へと入ったのであった。
…………
……
「この部屋なの?」
真琴に続いて建物の中へと入ってある程度進んだ後、真琴はある部屋の前で待っていたんだよね。どうして中に入らずに待っていたんだろうと疑問に思った僕はそう尋ねると、
「えぇ、そうよ」
と真琴は返してきたんだよね。だけど、それだとなぜ部屋に入ろうとしないのかがわからずに首を傾げていると、優花ちゃんが部屋の扉を開けたんだよね。それを見ていると、いつの間にか僕の後ろへと回った真琴が僕の背中を押し始めたんだ。
「えっ? ちょっ!?」
いきなり背中を押されたものだから、状況が理解出来ずに戸惑っていると
「「がんばって」」
と真琴と優花ちゃんが僕にそう言って部屋の中へと僕を押し出したんだ。
「わっ!?」
僕は変な声を出しながら部屋の中に入ったんだよね。一体何なんだと思いながら体勢を整えていると、ふと誰かが部屋の中にいることに気が付いたんだよね。一体誰がいるんだろうと思って、下がっていた視線をあげるとそこには
「…………健吾」
健吾がいたんだ。
どうして健吾がここにいるのかがわからずに混乱していると、健吾がゆっくりと僕の方へと近づいてきたんだ。ただでさえ状況が理解出来ずにパニックになっているのに、健吾が近づいてくるものだから思わず逃げ出そうとして真後ろの扉を開けて逃げ出そうとしちゃったんだよね。だけど扉はどれだけ押しても引いても開かなかったんだ。何度か開けようとしたんだけどやっぱり扉は開かなくて、何度か試していると健吾がすぐそこまで来ちゃったんだよね。また逃げ出してしまったこともあって、もはや何をすればいいのかもわからなくなるほど頭の中が真っ白になってしまった僕はただ茫然と健吾が何をしてくるのかを見ていると、
「すまん!!」
と言って健吾が頭を下げて謝ってきたんだ。
「……え?」
だけど、まさか健吾が謝ってくるなんて露程も思っていなかった僕は呆けたような声を出していると、
「これだけ俺を避けているってことは俺が何か京にしてしまったんだろ? だけど何をしてしまったのかはわからんが出来れば何を京にしてしまったのか教えて欲しいんだ」
健吾は頭を下げたままそう言ってきたんだ。
「えっと……、健吾は理由はわからないけど、僕に謝っているってこと……?」
余りの予想外のことに逆に冷静になれた僕は恐る恐る健吾に尋ねると、
「あぁ。もしこれでも許してくれないっていうなら土下座だってしてもいい。だから俺に教えてくれないか?」
と健吾は未だに体勢を微動だにさせずにそう言ってきたんだ。僕が悪いのに全面的に俺が悪いと言わんばかりの健吾の態度に思わず僕は
「……ふふ」
と笑みをこぼしてから
「うぅん。悪いのは僕なんだ。だから顔をあげて?」
と健吾に言ったんだ。すると健吾はゆっくりと僕の様子を窺いながら顔をあげて
「許して……くれるのか?」
と聞いてきたんだ。だから僕は首を横に振って、
「許すも何も、全部僕が悪いんだ」
と言って、僕は健吾に記憶を失っていたときのことを覚えていること、それなのに覚えていないと健吾に言ってしまったのが気まずくて避けてしまっていたことを伝えたんだ。今まで悩んでいたのは何だったんだと思えるほど僕はすんなりと伝えることが出来たんだ。ただ、ある一部を除いたことを伝え終わり、最後にそのことを伝えるために気合の入れ直しの意味も込めて一呼吸を置いていたところで、
「京は……あのことも覚えているのか……?」
健吾がそう尋ねて来たんだ。まさかここで健吾から聞かれるとは思っていなかった僕は今入れ直した気合がどこかへ行ってしまい、
「え、えっと……? 何のこと……?」
咄嗟にそんなことを口にしてしまったんだ。すると健吾は
「い、いや。何でもない。それよりも、これからは前みたいにちゃんと会ってくれるってことでいいんだよな?」
首を横に振った後、確認するかのように僕にそう言ってきたんだよね。僕はそれに頷いて
「う、うん。それは大丈夫、これからはもう逃げないから」
まだキスのことを伝えられていない後ろめたさはあって少し言葉に詰まってしまったけれど、それでも全部に嘘をついてしまっていたときと比べればまだ大丈夫と心の中で言い聞かせながらそう返すと、
「あぁ、改めてよろしくな」
と健吾は僕の頭の上に手を乗せてニカッという擬音が聞こえそうなくらい良い笑顔でそう言ってきたんだ。その笑顔を見て何故か顔に熱が集まるのを感じた僕は健吾に悟られないように顔を下へと向け、
「うん、健吾ありがとう。こちらこそよろしくね」
と返したのであった。
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これにてSS1:仲直り大作戦は終わりです。
いかがだったでしょうか。
二学期編の始業式①で『健吾の顔をじっと見ることはまだ出来ない』と表現していたのは、京はまだ一番大事なことを健吾に伝えていないために健吾と会って会話は出来るけれど、まだ前みたいにまっすぐ健吾を見て会話をすることが出来ないと言った状態にあるとしたかったからです。
もし、もっとガッツリと2人の仲が進むと思っていた方がいればすみません(・ω・`)
2人の仲が発展するのは2学期編にしたかったので今回はこんな中途半端な形を取った限りです。
それでは、最後に
①健吾との会話をした後の京視点
②京と会話をする前の健吾視点
③京と会話をした後の健吾視点
をあとがきの後ろに載せるのは若干おかしい気もしますが載せますので、読んでいただければ幸いです。
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①
健吾が出ていった後、まだしこりは残っているけど、健吾が僕が嘘をついていたことを許してくれたし、これからも会えることに安堵の息をもらしていると、
「どうやら上手くいったみたいね」
と言って真琴と、それに続くように優花ちゃんが部屋の中へと入ってきたんだ。
「う、うん。2人ともありがとう」
いきなり健吾と部屋に2人きりで閉じ込められたことにはビックリしたけど、そのおかげで健吾とまた話せるようになったということはさすがにわかった僕は2人にお礼を言ったんだ。ここまでお膳立てしてもらったにも関わらず全部を健吾に伝えることが出来なかった後ろめたさもあって少し言葉に詰まっちゃったんだけどね。すると2人ともやっぱりそこに気付いちゃって、
「……全部が全部上手く言ったわけではなさそうね」
「……京さん」
2人が呆れた顔をしながら僕の方を見てきたんだ。
「いや、あのね? 違うんだよ? 本当はちゃんと言おうとしたんだよ? だけどね? いざ言おうとしたときに健吾から聞かれちゃって、気がついたら……ね?」
僕は両手の人差し指を合わせて、視線を上下左右にくるくると動かしながらそう答えたんだ。すると2人ははぁと溜息をついてから
「過ぎてしまったものを問い詰めても仕方がないわね」
「そうですね。それよりも、また中山さんに誤魔化してしまいましたが、ちゃんと中山さんと会って会話出来るのですか?」
そう言ってきたんだよね。それに僕は
「それは……うん、もう大丈夫だよ。まだ健吾の顔をちゃんと見れるかはわからないけど、それでも健吾にはこれからはちゃんと会ってお話ししようって約束したからね。それは大丈夫」
大丈夫だと自分に半ば言い聞かせるように強調しながらそう返したんだ。すると、
「今はその言葉を信じるしかないですね。ですが」
「いーい京? キスのこともいずれ絶対ボロが出るんだから、中山君に気付かれる前に自分から言いなさいよ? もうこれ以上はあたしたちもこのことは手伝わないから自分でね?」
と言ってきたんだ。
「えっ……? 手伝ってくれないの?」
頼めば手伝ってくれると思っていた僕は思わずそう聞き返すと、
「一番デリケートな部分なんだから、今回みたいにちゃんと面と向かって話し合うだけで解決出来る問題でもないでしょ?」
「なので京さんは自分でがんばってくださいね?」
2人はこれで自分たちの出番は終わりだと言ってきたんだよね。これ以上は何があっても手伝わないということを2人の言葉から察した僕は
「……はい」
と肩を落としながら返事のであった。
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②
「いいか? この部屋で待っとったら篠宮と服部が熱海を連れてくるから、後は自分次第やで?」
小野に案内されて、服部さんが借りたという会議室に着くと小野がそう言ってきた。
「あぁ。だがどうすれば声を掛けたら京は話を聞いてくれるだろうか」
だが、いざ後は京が来るだけとなった途端、また京に逃げられてしまうのではないかと不安になってしまい、俺は思わずそんなことを口に出してしまったんだ。それは小野の耳にも届いたみたいで、小野は俺の方へ向き、
「いっそのこと謝ったらどうや? 中山が知らんところで熱海に何かしてもうた可能性もないことはないんやし。まぁ、中山の話を聞いた限りじゃそんなことはないっぽいからもちろん冗談やけどな」
肩をすくめがらそう言ってきやがった。こいつ他人事だと思ってと、俺は少し苛立ちを覚えながら
「あのなぁ。俺は真剣に考えているんだが」
小野にきつい口調で言い返したんだが、
「気負い過ぎたら大抵あかんようになるんやから、流れに身を任せればええんやって。熱海はただでさえ中山に会うことに何かしら思うところがあるみたいなんやから、そこにお前まで緊張しとったら余計に話せるもんも話せなくなるやろ?」
小野は俺の言葉など気にしない様子でそう言い返してきたんだ。俺はそれにまた言い返しそうになったんだが、こうして京と話せる場を設けれたのは小野のおかげだということを思い出した俺は、出かけた言葉を何とか呑み込み、首を横に振ってから
「……そうだな。京と会ったときのことを今考えても仕方がないよな。京に逃げられないことだけを祈って気楽に待つことにするさ」
そう言って、息をはくとともに肩の力を抜いたんだ。それを見た小野は
「もう大丈夫そうやな。それじゃあ、俺らが熱海に見つかってもうたら元も子もないから出てるな。それじゃあ、がんばれよ」
と言って拳を突き出してきたんだ。俺はそれに拳を合わせ、
「あぁ、ありがとうな。空元も」
と言ってから空元の方にも拳を出した。すると空元も
「がんばるッスよ! 朗報を期待してるッス」
と言って俺に拳を合わせ、その後小野と一緒に部屋を出ていったんだ。俺はそれを見送った後、
「さてと、後は何とかなるように祈っているかな」
と呟き、京の到着の待ったのであった。
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③
「ふぅ」
貸会議室を出て、扉の外で待っていた篠宮さんと服部さんに軽くお礼を言った後、そのまま建物を出ると、そこで小野と空元が待っていた。俺の顔の表情を見た小野が
「首尾は上々やったみたいやな?」
と声を掛けて来たんだ。それに俺は
「あぁ。2人ともありがとうな」
改めて礼を言ったんだが、
「かまへんかまへん」
「そうッスよ。そういう水臭いのは無しッスよ」
2人は気にするなと言ってくれたんだ。だから俺は内心でありがとうともう一度2人に礼を言っていると、
「それで? 熱海が嘘をついとったって謝ってくれたんやろうけど、キスのことはどうなったんや?」
小野が顔をニヤつかせながらそう聞いてきたんだ。
「どうして小野が京が嘘をついていたって知っているんだ? それとキスのことは京は覚えていないってさ」
だが、京が嘘をついていたのはさっき俺が聞いたばっかりなのになぜ小野が知っているのかを疑問に思った俺がそう聞き返すと、
「そりゃ熱海の態度をみりゃ……って、それほんまに言っとるんか?」
何故か小野は驚いて俺に確認するように聞いてきたんだ。それってキスのことだよな? 何で小野がそんなに驚いているのかはわからないが、
「あぁ。京がそう言っていたからな」
まさか一度嘘をついていたと言った後に嘘をつくわけがないだろうと思っていた俺がそう返すと、
「……そのときに熱海の様子は何かおかしくなかったんか?」
小野は京がまだ嘘をついている可能性を諦められないらしく、さらにそう聞いてきたんだ。そのときの京の様子だろ?
「いや、多少言葉に詰まっていたが、たぶん噛みかけただけだろうしなぁ。あぁ、その後に京の頭を撫でたときは何故か視線を外されたのがおかしかったと言えばおかしかったかな?」
あのときのことを思い返しながらそう言うと、
「ほんまに気付かへんの?」
と小野が何か初めてのものを見るような目で俺を見ながらそう言ってきたんだ。
「いや、何が? 後、その目はなんだよ?」
それに俺はそんな目で見られる筋合いはないと抗議の声をあげたんだが、
「……はぁ」
と小野と、何故か空元にも溜息をつかれてしまい、そのことについて問い詰めても2人とも答えてくれず、結局その日はそのまま解散となってしまったのであった。