2017年03月16日 (木) 01:33
ふと何気に本屋に行き、ふと何気に手に取って買ってみた新刊があたりだったときは嬉しい。
今回一巻目の「とんがり帽子のアトリエ」白浜鴎(しらはまかもめ)氏の漫画を買った。
何の予備知識もないままだったのだが、あ、この人は上手いだろうなぁ、と。
絵の基礎(デッサン)ができている人というのは見るとすぐわかる。もちろんそれで漫画が面白いとか判断できるものではないのだけど、少なくとも絵がうまいと、作者が描きたいこと(シーン)を描ける。だから自然と構成がうまくなる。わかりやすくなる。
無論漫画家なので、だれが見てもわかるような絵になっているのは大前提なんだけど、その中でもうまい人と下手な人は、物語全体の完成度にかかわるほど違いがある。「絵が上手いだけじゃん」ではない。絵がうまければ脚本が生きる。
概要としては、魔法使いの見習い小娘の話。ファンタジーながら緻密に組まれている(であろう)設定は私の琴線にヒット。人物の書き方動き方、表情、どれをとってもヒットの連打。これは続き買います。
隣にあった「空挺ドラゴンズ」桑原太矩(くわばらたく)氏の作品も同じく一巻目だったので、同時に購入。こちらは『風の谷のナウシカ』から『天空の城ラピュタ』あたりの宮崎監督のテイストをリスペクトしていると見え、絵のタッチもかなり影響を受けているなという感じがする。絵の書き込みには感心します。(宮崎センセはもっと単純な線でグイグイ押し込んでくるところがすごいんですが)
商業的にドラゴンを狩る、というお話なんですが、捕鯨船の龍バージョンと考えるとわかりやすいかも。画力はあるし世界観はとっても好みですし、先にどう展開するのかは興味深い。
ただ惜しむらくは、もっと動かせるだろう、と感じてしまうところです。『とんがり~』と比べてしまうと、ここには圧倒的な差がある。何が? どこが? と訊くなかれ。読めばわかります。
この漫画家の画力、描写力、演出力、というのは、言わずもがな我々の『文章能力』にあたると思います。漫画家は言葉の代わりに絵で表現しているだけ。
ただ、劇画的に何でもかんでも緻密に書き込めばいいという話にならないところが、物語における表現枠というやつなんだろうと思う。
やっぱ世界を生み出すってのは、おもしろいなぁ、と。
正直なところ漫画家はすごいと思います。駆け出しの頃なんかは特に、あれを全部ひとりで仕上げちゃうわけですから。いわば脚本、監督から、デザイン、美術、音楽こそないものの、俳優までこなしちゃうわけですから。
私は多少絵を描きますが、あるものを見て書く、あるいは模写なんかは誰でもできるんです。けど存在しないものを描く、というのはこれすごいんです。
小説でもそうですけど、絵はしっかり描かなきゃいけないという点で(しかも表側だけでなく背中やスタイル、服装、装飾、まで細かに決めてないとダメ)ごまかしがきかないんですよね。
自分で小説を書いている私でも、自作品をビジュアル化しようとすると筆が止まります。これはひとえに描写がなってないという事でもあるんでしょうけどw