2019年10月22日 (火) 22:10
書いたはいいものの特にアップの予定がなかったので記念SSとして置いておきます。ひたすらにいちゃいちゃしてるだけです。
「真昼、何塗ってるんだ」
ソファに座った真昼が何やら半透明のスティック状のもので唇をなぞっているのを見て、周はぱちりと目を瞬かせた。
「リップです。はちみつ味なんですよ」
そう言って塗っていたリップを軽く揺らして見せてくる。確かにhoneyという文字がリップの外装に書かれていた。
「今どきは味ついてるのか……」
「おじいちゃんみたいな言い方を……。最近は味つきのもありますよ。チョコとかいちごとか青リンゴとか。私普段は校則的に薬用しか塗らないんですけど、千歳さんがこういうのもいいよって」
どうやら千歳のおすすめらしい。真昼も気に入ってるのか、上機嫌そうにリップの蓋を閉めている。
そんな様子に「ふーん」と言いつつ真昼の唇を眺める。彼女の唇は、リップを塗ったからかいつもよりもぷるんとして何とも言えない清楚な色香を匂わせていた。
「……何です?」
じっと見つめていた事に気付いた真昼が、不思議そうに首をかしげる。
「いや、キスしたら甘いのかなって」
「ふふ、試してみます?」
冗談だと思ったのか、悪戯っぽく笑って唇を指差した真昼に、周は「それなら遠慮なく」と返して、真昼の唇に噛み付いた。
まさか本当に実行に移されるとは思っていなかったらしい真昼がびくっと体を震わせているが、真昼が誘ってきた事なのでやめてあげるつもりはなかった。
いつもより潤いの強い唇の柔らかさを堪能しつつぺろりと唇の輪郭をなぞると、honeyという文字に相応しい甘い蜜の味が口の中に広がる。
「……ほんとだ、甘い」
感想を呟くと、真昼が真っ赤な顔でやや睨むように見上げてきた。
「……照れるなら自分から言うなよ……っていてっ、分かったごめんって」
べしべしと掌で叩かれるので、これ以上口ではからかわないと決めつつ真昼の唇をゆっくりと味わう。
いつものキスとはまた違った甘さを感じるし、舐めるたびに真昼が恥ずかしそうに身じろぎをするのがなんともたまらなかった。
「……しかし、甘いなあ」
「っん、……あ、あの、リップ取れちゃいます」
そろそろギブアップしたいのか周の胸を掌で押す真昼の、恥じらいに湿ったカラメル色の瞳を覗き込む。
「ダメ?」
「うっ。……塗り直しです、もう」
どうやら、許可をもらえたようだ。
何だかんだ許してくれる真昼に愛おしさを感じつつ、周はもう一度唇を重ねた。
翌日の真昼は、リップを塗った状態で周の隣に腰かけてきた。唇の彩られ方が違う。
思わず笑うと、真昼が気付いたのか微妙にたじろぐ。
「な、なんですか」
「いや、俺の彼女可愛いなって」
「いきなり何を……んっ」
全部言い切る前に軽く口を塞いで唇を味わうと、甘さの強めな甘酸っぱい果実の味が広がった。
わざわざ違う味に変えてきてくれた真昼のいじらしさに、唇が自然と緩む。キスされる事を期待して違う味のリップを塗ってくれているのだと思うと、ついついキスも長くなってしまう。
「今日はいちごかな」
しばらくして唇を離してから確認すれば、真昼は熟れたいちごもかくやといった頬の赤らみを見せた。
「明日は何にしてくれるんだ」
「……唐辛子にしましょうか」
「真昼の口が腫れるなそれ」
「どうせ周くんに沢山キスされたら腫れます」
拗ねたように呟く真昼に、一回やらかした事のある周は苦笑して宥めるように優しく口づける。
「それなら、甘い味で腫らせたいな。なんなら真昼からしてくれてもいいぞ」
「……チョコのリップを周くんに塗りたくってやります」
「どうぞご自由に」
キスするのはいいんだなと思ったが口には出さず、何故かやる気を出した真昼に微笑ましさを感じつつ、今は真昼の唇を余す事なく堪能する周だった。