日露戦争の講和条件に関するあれこれ(1)
2015年06月07日 (日) 22:07
 日露戦争の講和条件ですが、私が調べた限りですが、ポーツマス条約以前の日本の世論というか、主な新聞の主張は私の目からすれば正気には思えない主張です。樺太占領以前の段階なのに、樺太に加え、カムチャッカ半島や沿海州を日本に譲渡させ、更に30億円(小説中にも書きましたが、当時の日本の国家予算の約12年分!)は最低でも賠償金を露が支払うか、それでは露が講和を受け入れないなら、受け入れるまで戦争を続けろ、という主張だったみたいです。奉天会戦で辛勝して日本海海戦に勝ったことで、この主張ですから、この世界では林中将が作中で慨嘆しているように同様、いやそれ以上の講和条件が主張されるでしょう。

 では、その条件を露が受け入れる可能性はあったのでしょうか。私の見る限り、それはありえません。露皇帝ニコライ2世が断固として、領土割譲も賠償金支払いも拒否して、小村外相が講和会議を蹴った場合、史実の世界だと奉天、遼陽は露陸軍の大反攻の前に奪還されてしまった可能性が高いでしょう。そうなったら、あらためて締結される日露の講和条約は史実のポーツマス条約より日本に悪い条件になったと思います。この世界でバルチック艦隊の回航に露が失敗して、史実通り日本が勝っていたとしても、露が断固、領土割譲も賠償金支払いも拒否したら、日本はどうにもなりません。やはり、史実通りの条件で講和するしかないと思います。そして、日比谷騒動は史実以上の規模になりそうです。ただ、この世界で日本海海戦に勝ってこのまま継戦していると、露が第一次ロシア革命で大混乱になり、露は崩壊して、日本と講和はできなくなり、国際法上は終わらない戦争になる可能性も。私個人としては見たい世界ではありますが、小説で納得いく描写が出来るかと言うと私の力量を超えてしまいそうです。
コメント全2件
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山家
2015年06月08日 21:48
 新聞社は経営がありますから、ある程度は仕方ないと思いますが、それにしても節度を持った報道が出来なかったのか。日清戦争といい、日露戦争といい、本当に節度を持って新聞が報道していたら、日比谷騒動等は無かったと私は思います。
五反田猫
2015年06月08日 10:14
確かに、日露戦争に関する新聞社の報道は、凄かったようですね。
その中でも凄かったのは、大阪朝日と大阪毎日の報道合戦で、大阪朝日は号外389回、大阪日日は498回のようです。
当然 号外と同時に、本紙の記事も派手になり、戦地に記者を送り込み報道合戦、実際には戦闘の場所には行けないので、兵士からの聞き取りを尾ひれをつけて報道して、真実の報道からは離れてゆきます。 そのゆきついたものが、日論戦争講和の後の焼き討ち事件、そして昭和の中国戦線での、百人切り報道となり、モデルに仕立てられた将校の刑死につながります。
そうした問題を踏まえてお書きになっているのは、とても好感をもてます。
これからも楽しみにしております。