2017年03月25日 (土) 02:17
私は「幼少」という言葉は偉い人や目上の人に使うもので、自分には使わないと思っていたのですが、最近はよく「私の幼少の頃は~」のような表現を見かけるような気がします。
気になったのでネットの辞書で調べてみたところ、三省堂の『大辞林』にその記述がありました。
【おさないこと。子供であること。 「まだ-の頃」 〔自分のことについては用いず,偉人・貴人について用いる〕】
でも青空文庫内を検索すると、自分に対して「幼少」を使っている用例が結構見つかります。
どういうことでしょうか?
偉人・貴人に用いていたのはもっと古い時代で、古語的用法ということなのでしょうか。
「幼少の砌(みぎり)」という場合は当然偉人・貴人でしょうけど。
むしろそこから「幼少」単独でも偉人に使うと誤解された、という流れなのでしょうか。
【日本語考】とタイトルにふっておきながら、まだきちんと調べていないので疑問を提示しただけとなりました。
この件についてご存知の方がいらっしゃったらご教示ください。
余談ですが、青空文庫での「幼少」検索結果を眺めていたら、島崎藤村の作品に「幼少い」という表現が多くあって、本文を見ると、「幼少い」に「をさない」と「ちひさい」の二種類のルビがふってありました。同一作品内で。しかもルビが無いところもあるし。ややこしい。
【追記】
おしえて!gooで同様の質問と回答が載っていました。そこでは『大辞林』の記述が怪しいんじゃないかと書かれています。日国の内容を書いている人もいて、調べる手間が省けました。
やっぱり偉人・貴人にのみ用いるわけではなさそうですね。
どうしてそう認識されるようになったんでしょう。
私はどこかで読んだか聞いたかしたような気がするんですけど。『大辞林』はあんまり使うことは無かったと思うんですよ。うーん。
用法ではありませんが、少納言を使って「幼少」の用例数を調べてみました。
なるべく年代ごとの資料数に偏りが無いように、検索対象は【書籍・白書・韻文・法律・国会会議録】に限定します。よって、資料は1971年~2005年のものになります。
比は小数点以下四捨五入です。
【幼少】
年代 70年代 80 90 2000
用例数 6 33 83 210
比 1 : 6 : 14 : 35
年代が下るにつれ用例が増えていますが、他の語でも同様なので、元々の少納言の資料数に偏りがあるものと思われます。
試しに「私」という語で調べてみると、以下のようになります。
【私】
年代 70 80 90 2000
用例数 4,012 18,452 42,903 71,324
比 1 : 5 : 11 : 18
「私」という語は、年代によって多く使われたり少なく使われたりという現象は無いだろうと考えると、他の語についても、特別な理由が無い限り大体同じような割合で用例数が増えていると思われます。
「幼少」の類語については以下の通り。
【幼い】
年代 70 80 90 2000
比 1 : 4 : 15 : 29
【幼年】
年代 70 80 90 2000
比 1 : 2 : 8 : 12
これだけで判断するには早計かもしれませんが、「幼少」は他の語に比べて2000年代に入ってよく使われるようになったと言えます。90年代と比較すると約2.5倍です。
近年では「幼年」よりも「幼少」が選ばれることが多いようです。