2016年06月08日 (水) 21:49
読んでくださった皆様、ありがとうございました。
ここでは短編小説「少女が散るときショパンは鳴る」の制作過程や、細かいシーンの解説等をしていきます。
今作は小説家になろうの企画、「文学フリマ」に応募するために書き下ろしたものです。
「異世界」以外の四万字以内の新作短編が応募要項だったので、参加しました。
一番初めに出てきたアイディアは
「みんなの記憶から、誰かのことを消せる力がある女の子」だけでした。
どこにでもあるありふれた設定だと思います。とりあえずこれをメモ帳に残しておきました。
次に出てきたアイディアは
友達のことはそれでみんな消した。
一人ぼっちの女の子。
歌を歌うのが好き。
廃墟によく行く。
最後は自分のことを
みんなの記憶から消し去る。
が、主人公の記憶には
彼女がよく口ずさんでいたラブソングが残っていた。
という設定でした。
今思うと原型が六割というところでしょうか。
この時点で「罪悪感で自分を消してしまった女の子を主人公が救う話」にしようとなんとなく決まりました。オチと設定さえ決まってしまえば、あとはなんとなくでストーリーが繋がっていきました。
とりあえず第一話を走り書き。完成版と殆ど変わっていません。続いて第二話。第三話は必然パートだったのでスッと書けました。とりあえずもう一人殺して、その流れで過去編に突入することも流れのままに書いたらそうなりました。そのまま過去編もスラスラと出てきて、楓が雨木を救うところまで一日で書けました。文字数にして約25000文字。僕が一日で書いた自己最高記録は、恥ずかしながら5000文字だったので、約五倍の量を執筆することが出来ました。
どうしてそんなにいきなり書けるようになったかというと、まずここのパートまでは風呂敷を広げるだけだったということと、友達にあることを教えてもらったからでした。
「物語はすでに完成されていて、自分はたまたま縁があって、この物語を書くことを任されただけ」
「だから、上手に書こうとしなくていいんだよ」
このたった二つのアドバイスのおかげで僕は今作で成長することが出来たと思います。
残りの15000文字はさすがに辻褄合わせの作業があったので大雑把にプロットを組んで執筆して完成。
三日間の休日を使って書き上げました。自分としては頑張りました。
自分の得意な題材×恋愛物×グロ だったので、殆どなにも考えて書いていません。
唯一考えたのはラストシーンで、どうすれば読み応えのあるラストになるのか。ということを意識して書きました。
ここでの自分の基準は「読んでいて自分の心が動かされるかどうか」です。
基本的に友達に見せて調節しながら書くということを僕はしない(したところで聞かない)ので、せめて自分自身は面白いと思える作品にしようと考えていました。
ラストシーンの雨木の意識が戻った理由なんですが、一応設定はあります。
①フミが雨木のことを思い出したため(記憶はなくなっても体は覚えています。ヤンキーにボコられたときも傷だけは残っていました)
②今回は雨木が自分自身を消すという過去に例を見ない特殊な状況だったため、なんらかの誤作動が生じた。
③流れ星がフミの願いを叶えてくれた。
でもこれらの描写はすっ飛ばしました。正直これを書いたら物語のテンポが悪くなると思ったのと、この三つの要素を匂わせる描写は書いていたのでそれでいいかなって。
僕はあまりこういう設定の理由を物語の中に求めるのは好きではありません。物語の考察をするのは好きですが、それは読んでくださった方々にお任せすることにしています。それは物語の読み解く宿題のような楽しみになりますし、作品に深みを与えます。全部が全部答え合わせされた物語に僕は面白さを感じません。
物語は不完全だから美しいのです。(個人的な美学です)
それに物語の中でフミも言っていました。
「そんなことはどうでもいい。雨木が生きているだけでいい」と。
だから設定なんて本来はどうでもいいのです。大事なのは生きていることなのですから。
さて、この物語のテーマなのですがそれはズバリ「罪悪感」です。
生きている限り、たぶんみんな綺麗な人生を生きたいと考えていると思います。出来れば誰かを不幸になんかさせたくないし、誰も恨みたくない。誰かに恨まれたくない。誰かを傷つけたくないし、傷つけられたくない。
出来たらなんの罪も背負わずにみんなに好かれて生きて人生を終えたい。
でも、皆さんも知っているとおり、この世界は必ず大なり小なり罪悪感を背負わされます。
それでも生きなくていけません。そして僕はそれでも生きてほしいと思っています。
例え許されない罪を背負おうと、誰にも必要とされなくても生きてほしいんです。
自分勝手な願いだと思います。皆さんの事情をこれっぽっちも知らずにこんなことを言っているのですから。
でも、生きていたら必ず、楽しいことはあります。僕も何度も自殺しょうと考えていますが、それでも新しい人と出会い、知らない作品と出会い、そのたびに「あぁ、生きててよかったなぁ」って思うんです。
毎日が地獄のように辛い日々でも、毎日泣いてばかりでも、誰からも必要とされなくても、自分は生きているだけで邪魔で迷惑な存在なんだと思っていても、思われていても。
そういうときは、誰か困っている人に優しくしてあげてください。
街を歩けば困っている人は案外たくさんいます。
切符の買い方が分からない人。駅の乗り場が分からない人。道に迷っている人。こけてケガをしている人。なにかを探している人。寂しい人。泣いている人。死にたい人。
そういう人に声をかけてあげてください。
それで、貴方に助けられた人が家族や友人の前で「こんな親切な人に助けてもらったよ」と笑顔で話していたら、もうそれだけでいいと思えませんか?僕は単純な脳みそなので思います。
そしてその助けてもらった人が、今度は他の誰かを助けて、その優しさが巡り巡って自分のところに帰ってきたら素敵だと思います。
罪悪感は消えません。消せません。忘れることも出来ません。忘れられないのは、貴方がそれを大切にしたいと願っているからです。だから忘れないでください。それが貴方の優しさなのです。
罪悪感を背負っている人は優しい人なのです。
だから、自分をそんなに責めないでください。自分に優しくしてあげてください。せめてこれを読んだ一日だけは優しくしてください。僕からのお願いです。
あなたが笑っているだけで幸せになれる人がいます。
それを忘れないでください。
目を閉じて誰かの顔を思い出してください。
その人の笑顔を思い出せますか?
思い出せたのなら、それはその人が貴方のためだけに作ってくれた笑顔です。
貴方に笑ってほしくて、プレゼントしてくれた笑顔です。たとえそれが作り笑いだったとしても。それでもいいのです。
読んでくれてありがとうございました。
伝えたいことは伝えられたような気がします。
僕は今、ちょっと体調を崩し気味ですけど、それでもまた物語を作りたいと思っています。
自分が生きている間は、作品をつくり続けます。
だから、またどこかであったときは笑顔で生きていてくださいね。
僕もちゃんと生きれるように頑張りますので。約束です。
ありがとう。