2021年08月29日 (日) 23:34
8月25日、夏のホラー企画が終わりました。
今年のテーマは『かくれんぼ』。
私は、以前のホラー企画に出した『
ホムンクルス製作キット』、『
飢えた塊』のif続編として『
密航するもの』を提出しました。
テーマが公開された時点では別のアイデアを考えていました。
「犬嫌いの男が、昔いじめた犬が変じた『平面に潜む』怪物につけ狙われる。この怪物がいる部分に触れてしまうと、魂の一部をかじられて持っていかれる」
なんて話はどうかと思ったんですが、大事なかくれんぼのシーンをうまく盛り上げられず、泣く泣く没に。
元々、「もし『
飢えた塊』の続きを書くとしたら」を考えて「駆除を偶然生き延びた個体が、より狡猾な形の生存戦略を選ぶ」筋書きを考えていました。
瀬名秀明『パラサイト・イブ』のように、人の中に隠れてその繁栄を享受する。あるいは、映画『ヴェノム』のシンビオートのようにより積極的な共生を選ぶ、等々。
『パラサイト・イブ』のミトコンドリアのように、体の中から勝手なことを言われたら気持ちが悪い。
諸星大二郎『食事の時間』のように、その気になれば内側から体を溶かして食べることも、ハインライン『人形つかい』のように都合良く操縦することもできるのであればなおさら。
そんな嫌な感じをそのまま作品に乗せたのが、今回の作品です。
また今回は、
風風風虱さまの企画作品『
二週間待て』にも影響を受けました。
どうも教訓めいているというか、どちらかというと分かりやすさ優先でどこかホラーらしくない。「悪魔祓い」の文法で破傷風との闘病を描いた『震える舌』が思い浮かぶ作品です。
防疫を、かくれんぼに例える。
このやり方が良い。
『plague inc.』という、疫病の性質を操作して人類を滅ぼす(コロナ禍の後に防疫側に立つCureモードも追加された)ゲームがあります。
このゲームにおける病原体側の基本戦略は、「いかに人類に気づかれず、効率良く感染を広げるか」というもの。そしてまん延に成功したら、人類に対策の猶予を与えず殺傷する。
難易度にもよりますが、このゲームの人類は強いので下手な操作をするとあっという間に対策を打たれてしまいます。
攻めるにしても防ぐにしても、初動が大切。
人が探し、病原体は隠れる。
まさに種の存亡を賭けたかくれんぼです。
上記ゲームの防疫側におけるシステムにも実装されていますが、人やものの往来が感染を広めるからといって、経済活動を停止させる訳にはいかないのが悩ましいですね。
人を殺すのは病気の症状だけではない。
隔離等によって食い扶持を失っても、保菌者扱いされて社会から弾き出されても、人は死にます。
えらい人は、そういうことも考えて政策を決めなければならない、そういうことを考えられない人のことも考えなければならない。結果がまずければ非難される。大変な仕事ですね。
ありがとうございます。
期限に間に合わせるためあのような形になりましたが、時間があればもう少し踏み込んだ話をするべきだったとも考えています。
あの生きものの情報収集をもう少し具体的に描写したり、体内に入り込まれた側の状況を書いてみたり。
作中の人物が「おかしいはずのことをおかしいと思えない」って、読んでいる側からすると怖いですよね。『人形つかい』はその辺、主人公が寄生されている時の話がすごく面白いです。
こうやって、都合良く誘導されていくのだと示すことができれば。