偽善者とバレンタイン 2018

2018年 02月14日 (水) 00:00

バレンタイン 記念更新です
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夢現空間 礼拝堂

 バレンタイン……この説明は去年もやった気がするから省いておこう。
 あの頃は終焉の島に召喚される前だったので、ただただ【嫉妬】の心を以って世界を妬み、復讐を行っていた。
 しかし、今の俺は勝ち組と言っても過言ではないだろう。
 愛すべき家族と(仮想空間内でだが)体を合わせ、親愛に友愛に情愛に恋愛……様々な愛情を感じている。
 一方通行……かも知れないが、家族愛があることだけは確信している。
 ――だって、みんなに言ってもらったし!



「……しかし、何故俺はここに?」

 最後に残る記憶は……確か、みんなに配るチョコを作っていたところだな。
 メルとしての活動もあるし、友チョコでもと思って腕を巻くっていたんだ。
 だが……その先が思い出せない。
 衝撃的な何かを見たのかくらったのかは分からないが、そこで記憶が断絶している。

「まあ、とりあえず体が動かない時点で殆ど検討は付くが」

 スキルも使えないし、礼拝堂そのものに結界が展開されている気がする。
 ……少なくとも、スーは関係あるようだ。

『その通り、メルスを断罪する』

「いや、なんでさ」

『もちろん――チョコが美味いから』

「ああ、なるほど…………って、ハァ?」

 チョコが美味い? それが、罪?
 七つの<大罪>を統べるこの俺に今さら突きつけられた罪が――チョコが美味しい?

『まず、私たちはメルスにチョコを作る』

「ああ、言ってたな。一部の奴が媚薬を探してたから止めといてくれ」

『それは全員だから、気にしない』

 ……超絶気にするんだが、今はまあいい。
 どうせ媚薬の類は無効化できるからな。

『美味しいチョコを作る時、メルスならどうする?』

「そりゃあ……一人一人に想いを籠めて、思うがままに作るけど」

 その回答で、静寂が起きる。
 その時間がひたすら俺の心を痛めつけるのだが、眷属たちは気付いていない。

 俺の場合は(生産神の加護)があるしな。
 真心を籠めたいと願うだけで、料理の方はある種のオートモードでできる。
 うん、作るなのかは微妙だけどな。

『…………は、話を戻す。普通の人は、どうすると思う?』

「レシピを見るんじゃないか? あとは、他の人に作り方を訊くとか」

『一番美味いのがメルスなのに、チョコをあげたいから作り方を教えて、なんてリーが言えると思う?』

「あー、すまない」

 どこからか、『どうしてワタシを例に出すの!』という声も聞こえた気もしたが……気のせいだろう。

 ちなみにだが、あげたい相手に作り方を教わるってのは……案外シチュエーション的に燃える。
 意外と萌えるな、そういうのって。 

『とりあえず、メルスのチョコを研究することになって……今に至る』

「なんで!?」

 ちょっと思考に耽っていると、すでに話が完結していた。
 いやいや、なんで研究したら俺を拘束することになるんだよ。

『曰く、女子力の権化』

「曰く? ……ああ、誰かのか。って、女子力は無いから。生産チートだから」

『曰く、理不尽の権化』

「味がか? デザインがか? お前らがくれた物なら、どんなチョコも美味しく感じられるんだけどな」

『曰く、リア充爆ぜろ』

「……どっちだ、おいどっちなんだ」

 俺ってリア充なんだろうか。
 少し考えると、ここは地球ではないからリア充じゃない、と言える。
 ……まあ、そんなの意味ないから置いておくとして、結局リア充なんだろう。

「結局俺は、どうすればいいんだ」

『チョコ禁止、メルスは食べるだけ』

「……え?」

『メルとして配るのも禁止。全部任せる』

「…………え?」

『この状態で待機、食べて一人一人に感想を言う』

「…………えー」

 その後必死に交渉し、チョコを作らないだけで勘弁してもらえた。
 ――そして、ココアクッキーを作って怒られました。

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