2018年05月05日 (土) 00:00
こどもの日記念更新です
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こどもの日。
主に男の子たちが祝われる日であるが、各家庭には五月人形や鎧兜が飾られることだろう。
あれには二つの意味があり──男の子が武士のように強くたくましく成長してほしいという祈りと、災いが外から侵入することを防ぐという目的があった。
……昔は、奉納するパターンもあったらしいけどな。
五月人形はその独立版、むしろ神の依り代として飾って祈る──|人形《ひとがた》信仰というものが流行っていたらしい。
「──要するに、レベルアップと耐性スキルの向上を願ったってわけだな」
《元も子もありませんね》
「仕方ないだろ。異世界で魔力やスキルの概念が混ざったんだから」
去年はこいのぼりを作ったので、今年は本格的に鎧兜を作成している。
紙の物で満足するなど、生産の神に一度でも到達した者としてどうなんだろうか。
──ということで、張り切っております。
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第一世界 特設会場
「ひゃっはー! 暴れろガキ共ー!」
『うわぁぁぁぁぁぁぁい!』
「くっ、大人の力を教えてやろう!」
『うぉぉぉぉぉぉぉぉお!』
はい、そして子供たちに完成した鎧兜を渡した当日。
──なぜか、子供対大人による模擬|戦《いくさ》が行われていた。
「理由は簡単、俺が嗾けたから」
子供たちは全員『名刀:幼戒』と『幼子の具足』を装備しており、各々仲のいい友達といっしょに選ばれた大人たちへ突撃する。
本来ならば勝つ可能性は低い、それは子供たちも了承している。
──だが、俺の与えた武具がその小さな可能性を極限まで高めていた。
装備者を子供だけに制限することで、補正効果を高めることに成功したのだ。
「勝てば柏餅! 負ければ柏の葉! さぁ子供たちよ、勝利をその手に掴め!」
『柏餅ぃいいいい!』
「負けてはならないぞ! 俺たちもちらし寿司が待っているぞ!」
『ちらし寿司ぃい!』
互いに求める物がある。
故に争い、傷つけあう。
嗚呼、なんと儚くも切ない戦いだろうか。
いがみ合う彼らを止める方法は、本当に無いのだろうか。
「──どうせ全員に食べさせるくせに」
「なんのことかな、アリィ?」
子供っぽいヤツ、と言えばこの人。
二重人格であるアリィさんのご登場だ。
「ふふんっ、アリィには分かっているんだからね。メルスは間違いなく、そういう悪いことはしないんだって」
「……まあ、そうだけどさ。そこにアリィを含めないって点まで入れて、ちゃんと理解しているんだよな」
「──そりゃ当然よ。だからこそ、こうして接触しているわけだし」
「アリスか。それで、どうするんだ?」
もう一人の人格、アリスが腰に両手を当てながら話す。
「簡単よ。どっちが勝つか予想して、当てたらそれを寄越しなさい」
「賭けじゃないのか?」
「未来が視える反則に、一々抗うつもりはないわ。もちろん、アリィとアリスたちだけが干渉してもいいって言うなら、話は別ね」
「……はいはい。じゃあどっちが勝つか予想してくれよ」
その後、勝利チームにも敗北チームにも食べ物を配って宴会となった。
そこには、アリィも交ざっていたとさ。