2020年08月27日 (木) 22:50
さてさて、④ではファンタジーや政治面を抜きした、『本当に陸自は強いのか?』を焦点に当てたエッセイを記したいと思う。
大本は私、永久恋愛がさる本を読んだ事に始まります。それは世界の軍事情勢と、(軍事・警察の)世界的な大会と陸自の参加、その内実。そして陸自の訓練内容についての内容が記されていました。
若い頃、島嶼に中国が来寇し占拠する。それを陸自やその特殊部隊が強襲し、華麗に奪還。という内容の漫画とかを楽しく読んでいたのですが……今回の本を読んで、本当に大丈夫なのか? と疑問や疑いを抱いた事が始まりとなります(念のために言うと、私は過激な反戦平和主義者ではないぞ!)。
その疑問や疑念を、今回記していきたいです。
まず、あるTVで陸自の訓練内容が放送されました。仮設の建物に踏み込んで敵の掃討、という屋内戦での訓練内容だったのですが、それを見たアメリカで本場の技術を学んだプロ曰く、アレじゃあ全滅だよ、だそうです。
勿論、見せていいレベルと、見てはいけないレベルがあるのは分かりますが。
で、本の中身は後日そのプロのインストラクターが陸自隊員に指導する、という内容なのですが……。
えっ? という内容ばかり! 勉強になります。
まず、陸自の平時の訓練が戦時に対応した訓練ではない事に驚き。
例えば銃口管理(マズルコントロール)から始まって、平常の、平時の訓練内容が徐々に『お役所仕事』によって実戦的から遠ざかっていった中身に驚き!
例えば、隊長! 実戦ではこんな事は――という若い隊員からの苦情が、いいからやれと言ったらやるんだ! マニュアルに書いてない事はやるな! という典型的なお役所というか、シナリオ的な訓練が第一な苦情によって揉み消されたとか。訓練内容(シナリオ)に無い事は実戦では起きないと、防衛省の連中は思っているのでしょうか?
その訓練も、訓練内での死亡判定された者は四時間後に復活、という謎ルールが適用されており(!)、偵察の訓練では路上をとにかく進め! バンバン撃たれたり、地雷で死んでもまた復活出来る! 撃たれた場所から敵の居場所がわかる! という事を隊員は上官から強要されているなど……そのシナリオ的訓練には、『えっ、嘘だろ!』ばかりです。
勿論、こうした訓練や参加した部隊は、陸自の一部、なのですが……驚かされました。
他には世界と陸自のギャップも大きかったです。
自衛隊も参加するオーストラリア主催の大会と、自衛隊不参加のヨルダン主催大会と二つ紹介されていたのですが……驚いたよ。
オーストラリアの大会では、派遣された陸自が好成績を収めた、7・62ミリの狙撃銃で上位入賞した(確か別の本では一位になったとか)と書かれているのですが……その大会の実態は、オーストラリアが有事の際に周辺国(特に味方)の実力がどれくらいあるのか、と情報収集する場であり、単なる『国際射撃競技会』でしかない点です。米英仏といった先進国の第一線部隊を出さずに、予備役を派遣しているのも、情報を盗られるからです。韓も中も同じ理由から、参加していません。ロシアも単なる射撃競技会と見て不参加です。
そんな大会で好成績を示して意味があるのか?
勿論実力というか、隊員の技量を発揮出来たり、推し量れる場は必要でしょう。ですが予備役相手に勝ってもねぇ~……。それと狙撃銃の方も、世界の主流では最早7・62ミリクラスは古く、世界の狙撃銃はより大口径が主流になっている現状、上位になった、一位になったと一喜一憂している場ではない、とその本は書かれています。実際に世界の現役の陸軍の狙撃兵では一キロクラスの狙撃が常態化しています。そんな中で、陸自が使う7・62ミリNATO弾では荷が重い。
逆に不参加のヨルダン側の大会では、世界の現役の(軍隊・警察の)特殊部隊が参加し、射撃能力だけではなく、自己の技能・技術といった肉体面も重視した競技種目が組まれています。各国の特殊部隊や現役の兵士は、己が戦技を競い合い、他国の同クラスの部隊の実力を知り、学び、技術を得て帰国し次に繋げる事をしています。残念な事に我が国に陸自にそういう機会はありません。勿論実戦経験豊富なアメリカより指導は受けていますが、世界を見た場合、果たしてどこまで通用するのか大いに疑問です。
競技の中身も、走り、登り、踏破し、押し入り、撃つなど、市街戦の要素を含めた内容にあっております。こうした訓練こそ、射撃会よりも陸自に必要ではないでしょうか?
なお、ライバルたる中国は毎回参加し、かなり熱心に取り組んでおります。派遣された特殊部隊には優勝実績もあります。世界第一線の実力者達相手にですよ!
漫画では日本の部隊が華麗に中国兵相手に勝つパターンが多いですが、いざ世界の実情へ目を向けていれば……特殊部隊対決では中国が華麗に勝ってしまう可能性が高そうです。むしろ北朝鮮相手にでさえ、苦戦するかも。ロケットで耳目を集めますが、かの国は世界最大の特殊部隊国家です。むしろロケットなんぞよりも、そっちの方が大いに脅威でしょう。
他は銃弾や銃についての考察もあって勉強になるでしょう。
世界各国のトレンドでは、現在7・62ミリNATO弾を使うバトルライフルへの原点回帰が起きており、弾体をいじくれる〝余裕〟のある7・62ミリの方が、威力、射程、精度共に5・56ミリ弾よりも上で、発展余裕がある、と。昔は弾頭部には裂けやすい加工を施すなど(ダムダム弾やホローポイント弾など)は国際条約で禁止されていますが、現在はそうした条約に抵触する事なく、弾頭の工作や材質その物を変える事で、条約違反にならずにホローポイントと同程度の威力(破壊力)のある銃弾が製造・使用が出来ると、まるで詐欺師と魔法使いがタッグを組んだような情勢です。そんな情勢では、発展に限度のある5・56ミリ弾はもう古くなった、と。
むしろそうした小口径高速弾はアサルトライフル専用と、300メートルまでの近中距離限定で、バトルライフルなどはより遠方から、安全な場所から正確な一撃を加える、というタイプが現在のトレンドのようです。400や500メートル先から、相手を狙い撃つ。一昔前では専門の狙撃兵の仕事が、銃器の光学機器(ダットサイトやスコープ)の発達、銃本体の性能のアップ、そして平時より専門の、高度な訓練を受けてきた兵士達によって代替されています。そして本職の狙撃兵は、800から、一キロクラスの狙撃を担当、と。
そんな事が現在の陸自に可能でしょうか?
少なくとも、支給小銃(サービスライフル)を無改造で使用し、訓練している状況ではとてもとても。例えば陸自主力の89式小銃は、普段はアイアンサイトで狙い、訓練しております。陸自の本によれば、訓練によって300メートル先を狙えるようになっている、と。そうした面は素晴らしいと素直に思えるのですが、軍事面で見た場合、他国でもだいたい状況は同じです。むしろより遠方から撃つ方に変わってさえいます。それも高度な光学機器によって、ダットサイトによる近距離での素早い射撃から、スコープにより精度の高い射撃まで。対する陸自はほぼアイアンサイト。他の光学機器や、改造に必要なアクセサリー類は隊員の自腹です! そんな状況では他国のように、アクセサリーの追加で能力の底上げを、などは無理ですね。
89式のアイアンサイトは最大で500メートルまでしか対応しておらず、それ以上の遠方を狙う場合にはどうするつもりか? 無論、そんな遠距離を裸眼で狙って当てるなど大変な苦労(というか無理!)を伴いますが、当たらずとも相手の頭を下げらるので撃ちまくる戦法も有効です。しかし他国の照門は500メートル以上にも対応可能!
他、他国では7・62ミリクラスの銃弾を使用する機関銃が復活しつつあり、そうした機銃を用いた無人砲塔による機械による射撃で、より遠方の敵を、より精密に、より低コストで撃滅が可能になってきている。例えば露店の射撃陣地を狙う場合、以前は迫撃砲で100発撃って3発命中という状況が、今ではGPS付きの迫撃砲弾だと試射を含め3発で済む、と。リモートコントロールの機銃砲塔では、より低コストで一方的に殲滅出来る。
そんな科学技術の発展で、魔法のような事が現実に起きているのが現在の軍事業界なのですよ!
では我が陸自はどうかというと! 7・62ミリクラスの機銃を排し(一応、まだあるが銃としては欠陥品)、低威力射程不足な分隊支援機関銃(ミニミ、実質的な軽機関銃)を装備しています。しかも世界的な目では、最早ミニミは遅れた装備です。トレンドからは大きく遅れています。仮想敵国はどれも7・62ミリや、それ以上の大口径機関銃や火力を有する装備を持っている状況では、陸自の火力不足は深刻でしょう!
実際に帝国陸軍時代よりも、火力不足は深刻ではないか、と言われている状況です。帝国陸軍では一応大口径の機銃はあったし、足りない火力は安価で数を揃えやすかった重擲弾筒で対応していました。機関銃を正常な編制より増加した沖縄戦では、防衛線ですがアメリカ軍相手に持ちこたえています(最終的には敗北しましたが)。それに帝国陸軍には経験がしっかりとありましたが、経験の無い現在の陸自が実戦でどれだけ通用するか……信じましょう。
……訓練だけではなく、質的にも陸自は他国より劣っているのでは? と疑ってしまいます。特に中国では、敵の発射音から隠れた位置を特定する射撃位置探知装置が開発されています。それも掌サイズに小型化され、銃や肩に装着が可能ときています。暗視装置、サイレンサー、軍用ライト、レーザーポインター、各種光学機器。そのどれもが現在の陸自隊員は持っていません! そうした発達したアクセサリーで武装した仮想敵国に、今の陸自がどれだけ通用するのか……?
コンバットメディックについても遅れています。
撃たれた場合、どう対応すればいいのか? 現在の陸自ではそうした分野が全く教育されていないのが現状です。例えばアメリカでは専用装備を開発するのではなく、コストをかけず、ほぼ教育だけで30パーセントの死亡事例を1パーセントに落とす事に成功しています。しかも同ノウハウは、機密でも何でもありません。公開されております。しかし日本はアメリカより2000年代初期の外傷治療のプログラムを導入後、進展はありません。その内実も、交通事故が主な教育内容になっており、戦闘外傷に対応した教育はないときた!
一応日本もアメリカより、撃たれ場合の緊急治療用の装備を購入しておりますが、当の装備は本場アメリカでは、間違った使い方をすると患者を死なせてしまう、という理由からもう使用されていません! しかも日本は同装備を購入、隊員へ配布はしていますが、教育はしていないという謎現象が起きています!
戦場で撃たれた場合、麻酔などの鎮静剤の投入が不可避でしょう。が、日本の薬剤法ではそうした麻酔薬を使用出来るのは正規の医師だけなので、現状での鎮痛用メディックは危険です。法律を変えるべきですが、議論さえもありません。医官の数も不足気味で、ただでさえ数の足りていない医官に、一人二役、三役を求めている状況なので普段よりオーバーワーク。疲れてしまっています。これではいざ有事にはどうするのでしょう? フランスでは前線に医師を派遣して、救命率を上げています。アメリカも似たような努力で救命率を上げています。では日本は? ――まったく進展なしです。
よく装備――武装や兵器の話に、優越で軍事力の優越を決める場合が多いですが、少し調べたり読んでみると、どうにも陸自の問題は『それ以前』になるような気がします。こんな状況の陸自が、いざ実戦に投入しても、本当に大丈夫なのか? 法律や憲法といった政治的な面よりも、大事に思えて仕方ありません。
長くなりましたがここまで!
皆さんはどう思います?
ではでは。
永久恋愛も知らない情報があり、なるほど、と勉強になりました。
内部の情報、とか。
確かにバトルライフルへの原点回帰や、5・56ミリ弾について、7・62ミリの汎用機関銃については、私も先走りすぎたかなぁ~、と読み返して思ってしまいます。
実際アメリカじゃ、M27IARとかいう、普通のスコープ付きのライフルとそうは変わらんのを、〝機関銃(実際は違うんだけどね)〟として使っているので、世も変わった・技術革新凄い、と驚くばかりです(同銃の実態は狙撃銃としてのライフルと、軽機関銃としての利便性を最高密度にマッチさせた銃なんですけどね)。そういった意味では、現在のトレンドは射撃〝時間〟よりみ、射撃〝精度〟を重視する傾向のようですな。
現場の兵士曰く、5・56でも重い弾頭(ブラウンチップ)を使えば、7・62ミリ弾と同程度の威力を発揮出来る、と。実際に撃たれた(敵の)兵の死体を検死した医者(軍医?)も、撃った自軍兵士の証言を聞くまでは7・62ミリ弾で撃たれたのだと思っていたくらいですしね。
ですので、やはり5・56弾もまだまだ現役は続くと思います(ただ、弾頭の改造はもう限界であり、続く一番の理由が、同弾が余剰在庫ありすぎる。がホントのようですが……)。
……陸自の小銃の射程不足への解答。より長射程の火器を使う。うぅ~ん……いざ実戦でそんなに都合よくいくかなぁ~、と不安が大きいです。使える火器が手元になかったり、大火力使用禁止を言い渡されたりとか。陸自が戦う場所って(建前上は)国内限定ですしね。
ただ、自分は擲弾はライフルグレネード派です。(銃身下の)擲弾筒よりも、小銃擲弾の方がカッコイイじゃないですか!(趣味全開の妄言です)
昔の話になりますが。
ソ連がアフガンに侵攻など、世界情勢がキナ臭くなっていった時。〝もしも〟に備えるために北海道に特別規模の戦車部隊を揃える事になったんですよね。ソ連の北海道侵攻に備えて、普通の編制よりもより大部隊にして。
で、編制が完了したのがソ連崩壊直前、と……。
緩いと嘆くべきか、我が国の官僚制度はどこまで融通が利かないのかと驚くべきか。
そうした話を耳にしていくと、本当に大丈夫なのか……我が国の陸上自衛隊は。
以前べりや先生が返信で書いてくれた通り、華麗な描写の多い我が国の陸上自衛隊――しかし、ぶっちゃけ、19世紀末から20世紀初めくらいの技術力を有する異世界国家相手でも負けてしまうのでは?
色々と調べていくと……本気でそう思ってしまいます。ガクブル。
ではでは。(いつも返信・返答、ありがとうございますねー)