2017年02月07日 (火) 16:03
スライム倒して300年 三度目の重版が決定しました!!!
そして、アキバblogさんで2巻の情報なども書いてます!!!
下のURLがアキバblogさんです。
http://blog.livedoor.jp/geek/archives/51541260.html
さて、SSです!
発売日決定用記念SS 若かりし頃
「あ~、どうして、この世界にはカメラがないんだろ」
「姐さん、また言ってますね……」
空中をぷかぷか浮遊しているロザリーがあきれていてた。ロザリーからだと私が娘二人の「おままごと」を見て、ほっこりしているのがよくわかるんだろう。
なお、ファルファとシャルシャのおままごとはやっていることが異様に高度なので、おままごとと呼んでいいか不明。
今もファルファが数学の教授役ということで「今日は自然数という概念について教えるから、生徒はわからないことがあったら質問してね!」とシャルシャに言っていた。自然数という概念が出てくるおままごと見たことない。
「では、問う。人間における自然状態とは何か。服を着て、家に住んで、本を読むは自然状態なりや」
シャルシャの質問もおかしいでしょ。数学は関係ないよね、それ。
おままごとの内容は関係ないので、元に戻します。
「あのね、ロザリー、私がかつていた世界だとね、こうやって目の前で起こっている出来事を写す道具があったの。それで娘の成長を記録できたんだよ。ほぼ成長してないけど」
五十年生きてて、見た目は双子の幼女だからな。そういう意味ではあまり性急になる必要はないかもしれない。
「ちなみにロザリーみたいな幽霊を撮影すると、心霊写真という恐ろしいものになるんだよ」
「どうして、アタシが写ると恐ろしいんです?」
あらためて、そう聞かれるとよくわからないな……。幽霊が悪意ないうえに見えている状態では何も問題ないのか。ていうか、ロザリーが写ってもただの家族写真だな。
「なんにしても便利なものがあったんですね。この世界だと、記録用に絵を描くしかないから大変ですよ」
カメラができるまで、たしかに上流階級の家だと、家族の絵とか描いてもらってたもんなあ。
その時、ふと、思い至ることがあった。
この家の住人は子供の頃の絵とか持ってないのかな。見てみたい。きっと、ほかのメンバーも見てみたいに違いない。
善は急げということで聞いてみた。
そしたら、ライカに関しては実家に戻ればとってこれるという話になったので、言わずもがな、とってきてもらった。
「アズサ様、こんなのでよろしいんでしょうか……?」
実家から戻ってきたライカが出した絵は、かなり写実的な一枚の絵画。大きさも相当なもので、額縁にも入っているからこれはドラゴンでないと持ち運び不可能だろう。
見た目八歳ぐらいのライカの絵だった。
ゴスロリっぽい服が絶妙に似合っている。今のライカもかわいいけど、この頃はこの頃で素晴らしくキュート! 角が成長しきってないところもいい!
「ず、ずいぶん前の絵ですから恥ずかしいですね……」
当人のライカはやりづらそうだけど、家のほうではものすごく話題になった。ファルファとシャルシャの二人もその絵をのぞきこんでいる。
「かわいい!」「無垢な感じを受ける」
その横で、フラットルテは「じ、自分の子供の頃のほうがもっとかわいいからな!」と謎の対抗心を燃やしていた。フラットルテのほうは絵がないので検証は不可能だけど。
ハルカラは、ぐっと拳を握り締めている。
「そうです。こういうのがいいんですよ、こういうのが! もう、万人受けする天使ですね!」
「ハルカラの反応はわからなくはないよ。ああ、こんな妹いたら、毎日お菓子買ってあげて破産するな」
「二人とも変なこと言わないでください……」
むずむずしたような顔になっているライカと絵の幼女ライカを見つつ、私はふと思いつくことがあった。
「ねえ、ライカ、人間の姿って、基本的に変身でなっているものだよね?」
「はい、我の本体はあくまでもドラゴンですので」
「じゃあ、この姿にはなれないの?」
私は幼女ライカの絵を本人に向ける。
「で、できません……」
私は内心で、「ちっ」と思った。
こんなライカも楽しめたら最高だったのに……。
「あっ、そうだ、そうだ。お師匠様、わたしも一枚、絵を持っているのを思い出しました」
ハルカラもそう言い出した。ああ、あったんだ。
「じゃあ、持ってきて」
「はいはーい♪」
ライカの時と比べると、かなりその絵は小さなサイズのものだった。
小学校でパパやママの顔を描きましょうといって、教室の後ろに掲示した時の絵のサイズ。額縁にも入ってないので、かなりシンプルな印象を与える。
あと、その絵は本人そっくりではあるが、ほとんど同じ世代の絵だった。薬が並んでいる部屋にいるハルカラだ。
「美化して描いてるのかもしれないけど、やたらと理知的だね。ほかはとくに感想はないな……」
「えーっ! もうちょっと反応ほしいですよ!」
「とはいえ、若かりし頃でもなんでもないからなあ。よく描けてますねぐらいしか言いようが……。もっと年代の離れたもの持ってきてくれないと……」
むしろ、なんで、自分の絵を持ち歩いてたんだ? ナルシストなのか? たしかにハルカラはどっちかというと自分が好きな子かもしれないけど。
「アズサ様、妙なものに気づいてしまいました」
ライカがなぜか表情をゆがめる。
「どうしたの? 絵の中に霊でも描かれてるとか?」
「これ……絵の隅に変な文字が……。
そこには、こうあった。
遺影用
「わっ、ほんとだ……!」
「いやあ、この絵、毒キノコを間違って食べて死にかけた時に一族が発注したもので、無事に一命をとりとめて無駄になったんですが、何かあった時のために、故郷から離れる時に荷物の中に入れてたんですよ~。どこで死ぬかわかりませんからね~」
「そんな呑気に語られても、エピソードが重い!」
「わたしが死んだらこれを使ってくださいね」
「だから重いって! 幼い頃の写真見てなごむタームだったんだって!」
久しぶりに、やっぱりハルカラはハルカラだと思った。
SS 終わり
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