2016年04月04日 (月) 14:25
5.妖視能力について
本編第2話で不可視状態の妖魔を見る能力ーー妖視能力について、若干の説明がありました。ここでは更に詳しくお話ししていきましょう。
妖視能力は妖魔の見え方により、通常最下位のEから最高位のSまでの六段階に格付けされます。これに「特殊」とされるSSを加えた全七段階の解説は、以下の通りです。原文には作者が描いた(上手くない)イラストがとりあえずはあるのですが、スキャナーがないのでここでは文章のみとします。
①E段階
何かの輪郭線がモヤモヤと動いている程度ーースライム状にしか見えません。せいぜい「あー、あそこに妖魔がいるなー」ぐらいが関の山で、妖魔の種別判定は全く不可。一般人が身を守るのに用いるのであればさして問題はありませんが、紙士としてはお話になりません。
しかもこのE段階の者は、折妖の周妖光が見えないのです。よって紙士養成学校はこの段階を「妖視能力」とは認めていません。この程度ではまだまだ力不足といったところでしょう。
②D段階
E段階のように輪郭線が揺らめくことはありませんが、辛うじて外観の輪郭線がわかる程度。妖魔の大まかな形はわかるので、特徴的な外観を持つ妖魔であれば、種別判定が可能な場合があります。
この段階になって、ようやく周妖光が見えるようになります。しかし、このD段階でも紙士としては不適格。あともう少しなのですが。
③C段階
輪郭線のみがはっきり見え、かなりの数の妖魔の種別判定が可能となります。特に長い尾や耳、角といった突起状の物はよくわかります。
このC段階が紙士養成学校が「妖視能力」と認める最低の段階です。ただし、折士と染士限定です。妖魔狩りを行う漉士は妖魔の種別判定が生命線。「かなりの数」では許されないのです。
④B段階
妖魔の目、鼻、口、体表の筋まで見え、表情も窺えます。殆どの妖魔の種別判定が可能です。
漉士を志す者は、少なくともこの段階以上なければならないと紙士養成学校では定めています。また先天性妖視能力者、俗に言う「鬼の眼持ち」は、最低でもこのB段階はあると言われています。
⑤A段階
妖魔の体表細部ーー爪や毛、髭、羽毛に至るまでくっきりと見えます。体毛の長短までわかるので、全ての妖魔の種別判定が可能です。
ここまでくれば妖視能力としては申し分ありませんが、このA段階以上の者は紙士全体の三割程度です。つまり残り七割は、CもしくはBということ。A段階以上の者は妖視能力者としては優秀な部類に入るのです。
⑥S段階
妖魔の体表だけではなく、骨格までもうっすらと見えます。妖魔の中には変身能力を持つ者もおり、他種の妖魔に化けることもあるのですが、骨格の違いから見破れることもあります。例えば、目の前に尾が長い妖魔がいたとしましょう。なのに尾の先の方まで骨が入っていない。これはおかしいーーといった具合に。
このS段階の者は殆どが鬼の眼持ちですが、そうでない者も素質に恵まれればここへ到達することは可能です。
⑦SS段階
妖魔の特殊能力の一つに「穏形((おんぎょう)」というものがあります。不可視状態から更に姿を消す能力で、これを使うと妖視能力者は勿論、他の妖魔の目までも欺けます。この状態の妖魔ですら見えるのがSS段階の者です。見え方はS段階と同じですが、「特別」扱いされる理由はその貴重性。紙士養成学校百年の歴史の中で、数人しか確認されていないからです。穏形を使う妖魔は忍包(しのびづつみ)のような格の低い種が多いのですが、中には青雷鳥(あおらいちょう)のように和州でも指折りの強力な妖魔も含まれています。故に穏形を見破れるSS段階者は重要視されているのです。
この段階は訓練によって到達することは不可能で、全てが鬼の眼持ちです。そのことがSS段階者が貴重である最大の原因であると言われています。
さて、鳳凰兄妹のような鬼の眼持ちはいいとして、それ以外の者はどうやって妖視能力を身に付けるのでしょうか? これはもう訓練しかありません。紙士養成学校に入学して四月から六月までの三ヶ月間、学生はこの訓練に明け暮れます。ただ、これには薬物などによる科学的な処置は含まれません。肉体&精神の鍛錬のみです。
故に妖視能力を得るには「素質」が重要となります。この素質を見抜くのが、紙士養成学校の入学一次試験ーー適性試験です。ここで試験官は受験者に妖視能力を身に付けるだけの素質があるか、厳しくチェックします。受験者にとってこの適性試験が最大の難関であり、不合格者の九割はこれにひっかかると言われているのです。ただし、鬼の眼持ちはその能力を確認するだけで、難なくパスできます。鳳太も凰香も余裕で通過ですね。
最後に本編第5話までに登場した人物の妖視能力について参考までに紹介しておきましょう。なお、カッコは故人です。
C段階:井上彰彦 (墨田智明)
B段階:大木和馬 墨田仁 須藤圭一
A段階:砂川鳳太 沢崎喜代美 櫛山瀧也 (渡十郎) (柴山六郎)
S段階:三木塚朋子
SS段階:砂川凰香
大木は偉そうなことを言っているわりには、漉士としてはぎりぎりのB段階。折士の鳳太より下ですね。あららー。沢崎も櫛山もA段階なのに染士。勿体ないですね。沢崎は度胸満点、気も強い。親の反対さえなければ、間違いなく腕のいい漉士になっていたことでしょう。櫛山は本人が染士を希望したのかも知れませんが、性格面では漉士としては問題ありそうです。自分より立場が上の者には弱いようですし。
因みに鳳太は紙士養成学校の教師からは「希望すれば漉士クラスでもいい」と言われていました。では何故折士クラスを選んだかというとーーそれは妹を守りたかったから。先に漉士クラスに行くことを選択した凰香とコンビを組むため、折士となることを決心したのです。ただーー鳳太は手先があまり器用ではありません。鯛を折るのも面倒くさがっていましたし。果たして折士になって正解だったかはちょっと疑問ですね。