2025年04月25日 (金) 07:09
こんにちは、名紗すいかです。
『妻の隠し子 〜白い結婚をした私と愛妻と愛娘(時々、旅するぬいぐるみ)〜』が先行配信開始です。4巻!
鈴ノ助先生のかわいいアナたちの書影はこちら!
みんなかわいい! かわいいは正義!
今回サブタイトルのジェノベーゼ部分は、旅するぬいぐるみです。
恋するぬいぐるみと迷いましたが、内容的に旅するぬいぐるみかな、と。
ちなみにこっそり妻の部分も愛妻になっておりますよ。
そして前よりお値段上がっております。
書き過ぎたせいですよね、ごめんなさい……!
色々盛り過ぎました。反省……。
その分、エピソードは盛りだくさんだと思います。
コメディ部分ですと、アナと王太子(+ジェノベーゼ)のやり取りが気に入っております。
王太子はしっかりと突っ込んでくれるからありがたい存在です。
番外編の厨房のシリウスなどもお勧めです。
↓今回はアナ宣伝担当部長による告知SS! またまた空飛ぶジェノベーゼ!
【シリウス視点】
「よんかん、はいしんなのー!」
大型犬サイズのジェノベーゼに乗ったアナが、城の周囲をすいすい飛び回りながら告知を行っている。
王太子の執務室から、しばらく呆然と眺めていたシリウスは、慌てて窓辺へと駆け寄って空へと叫んだ。
「アナ! 危ないからだめだと言っただろう!」
にこにこするアナは色とりどりの花びらを撒き散らしており、ジェノベーゼは気持ちよさそうに、すいーっと風に乗っている。どちらにもシリウスの声などまったく届いていないようだ。
「どうした、シリウス…………って、なんだあれは!?」
王太子の驚愕の声に、なにがあったのかと側近たちもぞろぞろ寄ってきて絶句する。とうとうジェノベーゼの真実がみなに知れ渡ってしまった。
だが、誤魔化すのは後回しだ。今はそんなことよりも、一刻も早くアナを地上へと連れ戻さなければ。
「はいしん、かいしなのー!」
「アナ! 告知はいいから降りて来なさい! ジェノベーゼも!」
ようやくシリウスの声が届いたらしいジェノベーゼが、くるりと方向転換して執務室へと一直線に飛び込んで来る。
窓枠を器用に潜り抜けて、ととっ、と床へと降り立ったジェノベーゼは、アナが背から降りると、疲れたのかするすると元の大きさへと戻った。
「危ないからアナを乗せて空を飛ぶのは禁止だ」
ジェノベーゼは聞いているのかいないのか、ぬいぐるみのふりをしてこてんと横に倒れて見せたが、もう色々と手遅れだ。執務室の全員に目撃されている。
どう言い訳をすべきか考えを巡らせながらシリウスが振り返ると、執務室にいた全員気絶していた。
「…………」
一瞬思考が停止したが、慌てて机に伏すように倒れている王太子へと駆け寄ると脈と呼吸を確認する。正常であることを知って、シリウスは深く胸を撫で下ろした。
ジェノベーゼショックで過労死を誘発してしまったのかと、少し焦った。
「ねんね?」
「ああ、全員眠っているだけだ」
全員の生存確認を終えたシリウスはようやく安堵の息をついた。
集団で気絶するなど異常な状況だが、あながちないとも言い切れないのが王太子の執務室だ。
天国に一番近い場所は間違いなくここである。
ひとまず全員このまま床に寝かせておくことにして、シリウスはアナが室内を走り回ってみなを踏まないよう、膝に乗せるとひとり仕事に戻ることにした。
「いいか、アナ。ジェノベーゼに乗って空を飛ぶのは危ないからだめだ。わかったな?」
「うんー」
「ジェノベーゼも。わかったな?」
ジェノベーゼも目をきらっとさせて了承したので、小言はおしまいにして早速仕事に取りかかる。
みなが寝ている間に少しでも進めなくてはと書類を手に取ると、アナが手を伸ばしてきた。
「あなもー。ほしゃするー」
「では、この書類に捺印を頼む」
「うんー!」
アナはジェノベーゼの前脚に朱肉をつけて、ぽむん、と押した。なかなかうまく押せている。
「では次はこの書類に」
ぽむん、ぽむん、と軽快に書類を捌いていき、最後の一枚にも、ぽむんっ、と押印したアナは、なにを思ったのか、くるっと後ろを振り返ると、シリウスの顔面へとジェノベーゼの前脚を押しつけようとしてきた。
やめなさい、と言おうとしたが、なぜか声が出ない。どんどん近づくインクつきのジェノベーゼ前脚。せめて目だけは守らなくてはと、ぐっと目を瞑り、ぼむんっ! と顔に押された瞬間――はっと覚醒した。
(ここは……?)
慌てて身を起こした瞬間、顔面からなにかがころりと落ちる。
「……ジェノベーゼ?」
シリウスはあたりを見渡す。どうやらここは執務室ではなく、自宅のソファのようだ。
そういえば仮眠を取っていたのだった。すっかり寝入っていたらしい。
シリウスの顔面から落ちて腿にぽすんと着地したジェノベーゼを、アナがすぐさま掴んで言った。
「おとしちゃ、めっ、なのー!」
「だめでしょう、アナ。パパのお顔にジェノベーゼを置いたら」
サフィニアに叱られたアナは、ジェノベーゼを掲げて反論する。
「ぎしきなのー!」
「なんの儀式だ」
どうやら顔にジェノベーゼを載せて遊ばれていたせいでおかしな夢を見たらしい。
夢でまで仕事に追われているとは。なおかつ執務室の全員が気絶していてもおかしいと思わなかった自分に驚きしかない。
しかし、夢でよかった。
(正夢でなければいいが……)
「うなされていましたが、なにか悪い夢でも?」
「悪い夢というか……変な夢ではあったな」
「もう少し仮眠を取りますか? 膝枕でもしましょうか?」
断る理由がないので、サフィニアの膝を借りることにして、シリウスは再び目を閉じた。
またすぐに眠気に誘われたが、幸いにも今度は悪夢を見ることもうなされることもなかった。
アサヒコ様
電子書籍版、お手に取っていただきありがとうございます!
家族のほのぼのエピソード増し増しの書き下ろし番外編だったので、そちらも読んでいただけて嬉しい限りです。
アナ、かわいいですよね!
そしてシリウスとサフィニアもかわいいふたりです。
『妻の隠し子』は全体的に腹筋強化仕様となっておりますので、静かなところと飲み物を飲んでいるときは注意が必要だったりします。笑
4巻は半分以上が書き下ろしですので、そちらも楽しんでいただけたらと思います!
コメントありがとうございました!