2023年02月28日 (火) 21:47
大きくて真っ赤なランドセルを背負った女の子。肩から斜めに掛けた水筒と、黄色い帽子がとてもよく似合っています。楽しそうに友達と歩くその姿は、可愛らしいとしか言いようがありません。
その女の子が、友達に言いました。
「私、側転できるよ」
「ほんと? すごいね」
微笑ましいです。
「じゃあ、ここでやってみて」
「いいよ」
女の子が両手を振り上げました。
まさか、その格好のまま側転をするのか?
私の心配をよそに、女の子が体を反らします。
そして、勢いよく側転を始めました。
そして。
ガッシャーン!
水筒が地面にぶつかって大きな音を立てました。女の子は、地面に仰向けになってしまいました。
ブリッジみたいな格好でひっくり返っていますが、背中のランドセルのおかげで頭は打っていない様子。
蓋がしまっていたおかげで、ランドセルの中身も飛び出していません。
ゴム紐のおかげで、黄色い帽子も脱げていませんでした。
ちょっと呆然としていた女の子が、やがて立ち上がります。その顔は、少し恥ずかしそう。
でも、女の子は挫けませんでした。
「ちょっとこれ持ってて」
ランドセルを地面に置き、水筒を外してそれを友達に差し出します。
どうやら女の子は、果敢にも再びチャレンジをするようです。
なかなか根性あります。
それなのに。
「もういいよ」
友達が冷たく言いました。
可哀想です。とっても可哀想です。
女の子は、無言で水筒を掛け直してランドセルを背負いました。
そして、先に歩き出した友達を小走りで追い掛けていきました。
あの女の子は、これで学んだに違いありません。
側転する時は、身軽でなければいけないということを。
チャンスは、そう何度も訪れないということを。
そして、人は、興味がないことでも興味があるように言うことがあるということを。
これが人生です。人は、失敗して初めて成長するのです。
あの女の子の健やかな成長を心から祈っています。
あ、そうそう。先ほど短編を公開しました。
一話完結の短編です。よろしければお読みください。
コメントありがとうございました。
遠吠えする中学生……ドキッ!
中学、ではなく小学生の時、なぜか「パオーン!」と叫ぶのが流行りました。声変わり前の、子供独特の高い声で「パオーン!」と叫びながら歩いていたのは、何を隠そう私です。
路上は舞台です。たくさんの役者さんが、堂々と、あるいは密やかにドラマを演じています。それを目に焼き付け、記憶し、そして小話のネタにする。そんな不埒な視点で歩いているのは、何を隠そう私です。
こちらは今日も風が強くて、いろいろな物が飛んでいました。
とくに、目には見えないくせに目をやたらと刺激してくる花粉という奴は厄介です。sanpoさんも花粉症だとしたら、どうぞご自愛ください。