2012年09月02日 (日) 21:58
はい、どうも。目目連です。
前回のお試し小説の続きです。
そう言えば恋姫の二次創作は解禁されましたね。
とは言え他作品の要素を混ぜていてはいけないようです。修正が大変です。
塵芥と不殺はまぁ可能な範囲かな。他のは…………大変です。
で、とりあえずどうするのですか?
「ふふん。こういうのは定番をいった方がいいのだ」
定番と言うと………仲間探しか宝剣探しとかですか?
「ほほう。なかなか分かっているな、お前」
それでどうするのですか?やっぱり先ずは仲間探しですか?
「そうだな。勇者に姫。そうとくれば次は………」
魔法使いとか僧侶とか後方支援系ですかね?仮にも僕が勇者でメリーさんは戦士ですし………。
「ふむ。確かに妥当なところたが………それでは面白くないな」
あれ?さっき定番がいいとか言ってませんでしたか?
「………よしっ。酒場に行くぞ」
あ。僕、用事を思い出しましたのでここでお別れですねそれではさようなら。
「そうか。それは残念だな―――――その用事はキャンセルだ」
ですよねー。僕は襟を掴まれてズルズルと引き摺られてドナドナされました。
それで仲間といってもどういった人を探すのですか?未だに襟を話してくれないメリーさんに諦めた僕は引き摺られながら訊ねてみた。流石は姫様(ファイター)。何の苦もなく僕を引き摺っていきます。
「そうだな。やはり前衛が欲しいところだ」
姫様の思考はガンガン攻めようぜパターンらしい。仮にも前衛2人なのですから、後衛を入れてみてはいかがなものかと………。例えば回復系で僧侶とか支援系で魔法使いとか、どうですか?
「私の知り合いに僧侶と魔法使いが居る」
あ、そうなのですか?なら、先ずはその人たちを仲間に―――――。
「1人は死体を見るのが好きで蘇生魔法を取得した僧侶。もう1人は我先に前線に出で超広範囲高威力魔法をぶっ放す魔法使い。………それでどちらか仲間に誘うのだ?」
先ずは酒場で情報収集がセオリーですよ。さぁ、行きましょうか。僕は立ち上がり服の土を叩いて落とすと酒場の方へ歩いていく。
「ふふん。やっとやる気になったのだな、勇者様」
前を歩く僕からは見えないけれど、上機嫌な声から察するにメリーさんは勝ち誇ったような顔をしているんだと思う。本当にこれで姫様なのだろうか?
「―――何か言ったか?」
本当に姫様ですか?僕の襟を掴み上げるまでの動作に躊躇いが一切無く、むしろ手慣れた感じさえありますけど………。
「ふふん。お前の目は節穴だな。どこからどう見ても高貴な姫ではないか」
とクルリとその場で一回転するメリー。うん、だからどう見ても流れ者のファイターです。だって一回転し終えた時の決めポーズが軽いジャブですから。狙ってるの?ツッコミ待ちですか?
「ふふん。中々に雰囲気があるな」
酒場に入るとそう呟くメリー。そこはまさに酒場。店の奥にはカウンターがあり、所々にテーブルが置かれている。カウンターで飲んでる人も居れば、何人かで固まってテーブルに座っている人たちも居る。
それでメリーさん、どういった人を探すのですか?
「ふむ、そうだな………あやつとか良さそうだな」
とメリーが指差したのは割と賑やかな酒場の中でその喧騒から一歩外れた隅で哀愁を漂わせて1人小さなグラスを傾けるいかにもな人。装備からするに重戦士。
重戦士とは前線において他の仲間の盾となる職種だ。
うん?まさか、メリーさん?
「ふふん。あれなら―――いい盾になるだろうな」
仲間(盾)をご所望の姫様でした。スタスタと隅の重戦士へと歩いていくメリー。あ、どうしよう、僕この後の展開が分かってしまう。もしや、これが未来視!?
「おい、そこの貴様。少しいいか?」
「ふん。何だ、俺に何かよ―――ふべらぁ!!」
メリーに話しかけられたら重戦士はその重そうな鎧をガシャリと揺らして振り返る。その振り返り様に完全にフォームを整えていたメリーの右ストレートがその頬にめり込む。そう、めり込んだ。これは比喩表現ではなく、事実を表している。その証拠に今、カウンターに座っていたはずの重戦士(哀れな犠牲者)はイスから転げ落ちている。
「ちょっ!?おま!?いきなり何しやがる!?」
当然の反応を示す重戦士さん(哀)。そんな重戦士にメリーは何故か満足げに腕組みをして見下げながら言うのだった。
「ほう。私の一撃を食らってなおこの様子………。ふふん、気に入った!貴様、私に従え!」
勧誘の言葉をそれ以外にないのだろうか?そして僕の時、ストレートによる試験?がなくて本当に良かったと胸を撫で下ろしているのは言うまでもない。
「ったく。何なんだよ、いきなり」
重戦士はメリーの言葉に目を白黒させたが、冷静さを取り戻したのかイスに座り直してメリーの方へ改めて目を向ける。
「で、何だって?私に従え?」
「そうだ。光栄なことだろ?喜びむせび泣いてもいいのだぞ?」
「………」
重戦士はメリーを見て、そして後ろにいる連れの僕へと目を向けた。重戦士さんの目が語るには“コイツ、頭大丈夫か?”。僕はその問いに無言で頷く。“既に手遅れです”の意味を込めて………。
「おい、お前。今、私に対して失礼なことを考えなかったか?」
まるで野生動物並みの感覚で感じ取ったメリーが後ろを振り返り、目を細める。振り返りながらフォームを整えるあたりがメリーさんですよね。
とりあえず誤解ですよ、と弁解してみるとふんっと鼻を鳴らして重戦士さんへと向き直る。どうやら、その一連のやり取りで僕らの主従関係を把握したらしい重戦士さんは僕に頑張れよと目で慰めてくれた。
だけど、重戦士さん。分かってますか?あなたも片足こちらに突っ込んでいるんですよ?
「さて、俺は回りくどいのは嫌いでね。単刀直入に聞くが、アンタらは俺に仕事の依頼に来たんだよな?」
「違うな、仕事の依頼ではない。貴様は私に従えばいい。それだけだ」
「………」
だから、僕に助けを求めないで欲しい。僕はメリーさんの保護者ではないので……。
「……なぁ、嬢ちゃん。俺たちのような流れ者はよぉ、金が名誉でしか動かねえもんだ。それかよっぽと気に入った相手じゃなきゃ無償では動かねえよ」
「ふふん。こんな美少女のお願いだ。男冥利に尽きるだろ?」
「はぁ?俺を誘いたきゃそのまっ平らな胸にパンでも詰めて―――って、溜めを作るな!?」
胸の話をした瞬間に先ほどよりも早くフォームを整え、更に溜めを作り、本気の一撃を放つ準備を始めるメリーさんに重戦士さんは慌てる。雰囲気が正に必殺のそれだったから………。
「いいか、貴様。一度しか言わないから心して聞くがいい。私の問いに答えるときはハイか分かりました、だ。それ以外を口にしようものなら―――」
ギラついた目を重戦士へと向けるメリー。それは幾多の激戦を戦い抜いた重戦士すら肝を冷やす程に堂に入っていた。
どうやら重戦士さんも同じ意見のようだ。さっきからしきりに首を縦に振り続けている。
「ふふん。最初からそう素直にしておけばいいのだ」
満足そうなメリーさん。だから何故そうも脅し文句がハマっているのだろう。
「よし、盾はこれでいいな。―――合計で二つだ」
あれ?今、明らかに計算が合っていない発言が聞こえたような………。
「で、何をするんだよ、アンタら?」
重戦士さんは小さなグラスをグッと飲み干すとこちらに体を向けてくれる。どうやら本腰を入れて話を聞くみたいだ。重戦士さんはとても優しい人だ。こんな荒唐無稽な話に付き合ってくれるのだから。
「私は魔王を倒しにいくのだ!」
「…………やっぱり俺は降り―――」
「そうか、それは残念だな。――――貴様の人生はここで終わりだ」
普通に死刑宣告が出るあたり流石はメリーさん。もう完全に裏路地のドンです。
「そこを動くなよ。一発で終わらせる……」
腰を低くして、溜めを作るメリーさん。目が完全に肉食獣のそれでした。
「ちょ!?待てよ!?お前ら、本気でそんなこと言ってんのかよ!?」
「ふん。貴様の装甲を抜くことなぞ雑作もない」
「いや、違えよ!?俺をオトすことじゃねえよ!いや、それも問題だけどよ。魔王を倒すなんて………言っちゃなんだけどそりゃ夢物語だぜ?」
重戦士がごくごく一般的な反応をする。それはそうだ。ここ百年近く魔王なんてものは現れた記録は無い。それは正に夢物語だった。
「それとも何かの比喩か?」
「いや、そのままの意味だ」
「………」
重戦士は黙る。それは呆れから来る沈黙ではない。メリーの表情からそれが嘘や冗談ではないことを察したからの沈黙だった。
「……そんなこと、こんな所で話していい話なのかよ」
「ふん。心配せずともいい。誰がこんな荒唐無稽な話を盗み聞きするというのだ?」
メリーは周りを見渡す。酒場の中は相変わらずの喧騒。こちらに注目している者ばかり誰もいない。
「何で俺なんだ?そんな荒唐無稽な話を俺なんかに話してどうなるってんだ」
「ふふん。私は人を見る目はあるつもりだ。その私がお前を見た瞬間、コイツだと思ったのだ」
「へ、へぇ。そいつはなんだか照れくさいな」
真っ直ぐな瞳で直球な言葉に重戦士は少しだけドモる。見た目は自分で言うだけあってかなりの美少女のメリーにそう言われて男なら当然の反応であろう。
「それにな、お前はなんだかお人好しそうだ。こんな話を聞けば放っておけなくだろ。それにお前が誰かにこの話を漏らしたところで軽薄そうなお前の言葉を信じる者が居るとも思えんしな」
「色々と台無しじゃねぇかぁぁぁぁ!!」
その意見には大いに同意します、重戦士さん。そして、ようこそ哀れな犠牲者(お仲間)さん。
「改めて自己紹介といこうか。私はメリーだ。この国の王女だ」
「げっ。マジかよ……」
場所を変えて、今は近くの宿屋の一室に居ます。これから詰めた話をすると言うことで流石にそれを酒場ではするのはマズいだろうと場所を変えることとなったわけです。
「マジでお姫様かよ……信じらんねぇ」
なんだか重戦士さんと気が合いそうです。普通あんなアクティブなお姫様は居るとは思いませんよね。
「お姫様と言やあ、もっとこう……ボインボインだろ!」
前言撤回します。ちょっと違ったみたいです。そんなことを思いながら横目でメリーさんに腹パンを食らわされている重戦士さんを見る。
そう言えば重戦士さん、部屋に入ってもあの重そうな装甲を外さないですね。………キャラ付け?
「ぐはっ。何でこの重装甲の上からこんな威力が出せるんだよ……」
「ふふん。私をそこらの格闘家と一緒にするなよ。鎧通しくらい出来て当然だ!」
「くそぉ。なんか気に入らねえ……。ったく、俺はキースだ。見ての通り流れの重戦士だ」
「で、本題だが――――」
「おい、ちょっと待てよ」
どうやら互いに自己紹介が終わったようで。本題に入ろうとしたメリーさんにキースさんは待ったを入れた。
あれだけ鉄拳制裁を食らいながらもメリーさんに意見するキースさん。流石は重戦士。タフですね。もしくはドM?
「違ぇよ!お前、意外と失礼だぞ!つか、お前自身の紹介がねぇだろが」
うん?僕のですか?要るのですか、メリーさん?
「いや、私には必要性を感じないな」
ですよねー。僕も同意見です。
「いやいや、なんでそうなるんだよ。要るだろ、普通」
いや、特にこれと言ってないですよ。僕はただのメリーさんに強制的に拉致られて勇者(笑)に仕立て上げられた村人その1ですから。
「勇者(笑)って………それでいいのかよ、お前は?」
まぁ、いいのではないですか?あ、そう言えばお母さんに帰りが遅くなること伝えとかなくちゃ。メリーさん、ちょっと席を外していいですか?
「いいぞ。―――ただし逃げたら地の果てまでも追いかけて、死なない程度に殴り続ける」
もう脅し文句に一切の違和感を感じられない。そしてバレていた。今のは普通の流れだったと思うのだけれど?
「私は誰も信用していないからな。先ず相手の言葉を嘘だと断定して考えているからな」
………おぉう。どうしよう、逃げ切れそうにない。仕方ない。いざとなったらキースさんとチェンジしてもらおう。
「いや、真面目な話よぉ。名前が分かんなきゃ不便だろ?」
「いや」
特には。
「……なんなんだよ、コイツら。俺がおかしいのか?」
頭を抱えるキース。頭痛薬とか持ってないので、自分でなんとかしてほしいです。
「お前、意外とバカだろ?」
失礼ですよ、キースさん。会ったばかりの人にバカとか。仮にも――――お姫様なんですよ、メリーさんは。
「は?お前、何を言って………」
「ほほう。言うに事欠いて私をバカ呼ばわりか………。いい度胸だ。それに敬意を評して私も本気で相手をしよう」
「は!!ちょっと待て!?俺はアンタにじゃなくて、アイツに………」
「問答は無用だ。語るのであれば己の拳で存分に語るがいい」
男前なメリーさんが完全に臨戦態勢を整えて、キースさんに近づいていく。
「くそぉ、テメェ覚えて――――ぐへらッ!?」
ドスンッと音を立てて、倒れ込むキース。キースがそのまま意識を失ったことで作戦会議はまた後日となりました。
今日の収穫と言えばキースさんの耐久性はメリーさんのストレート3発分であるということだった。
ちなみにここの宿代はキースさんが立て替えてくれることが話し合いの結果(1人は昏倒により欠席)により決まりました。ある意味、便利な盾を僕らは手に入れたのだった。