【義理ッキー】バレンタイン番外編を書いてみた【リリチョコ】

2018年 02月14日 (水) 00:10

お友達ユーザー様がバレンタイン企画なんてやっていたので、便乗して。
(番外編なので、本編とのつながりは直接ないということでお願いします)



「とこれーちょ?」
 ポッチーノが首をかしげる。
「チョコレート。最近、ネオリカで流行ってるんだってさ」
 と答えたのはリリッキー。
 最近、この2人はポッチーノの隠れ家でたびたび“宅呑み”を開いている。まあ、リリッキーが押しかけているだけなのだが。
 この日の話題は隣国、大ネオリカ帝国の食べ物のことだった。
「カカオ豆っていう、温暖な南国の植物なんだって。その豆自体はシップマン海運が少量ながら扱っていたんだけど、これを材料にコンパニア=ルポが発明したのがチョコレート。これが大ヒットで、向こうでは飛ぶように売れてるらしいよ」
「ふーん」
「ま、ルポの連中もよくこんなの思いついたわ。あそこの商魂のたくましさには、アタシですらついていけない時があるよ」
 とリリッキー、珍しく商売の話をしながら呆れたような顔を見せる。
「ボクのお賃金で買えるのかな。ちょっと食べてみたいかも」
「まあ、意地汚いおまえならそう言うと思ったよ」
 リリッキーがそう言うと、ポッチーノはムッとして
「意地汚くないよ。ボク、そこまで食いしん坊じゃないよ」
「そう。じゃあ、おまえのために買ってきてあげたんだけど、そういうことならアタシがもらうね」
「待って! 食べたい!」
 ポッチーノは目の色を変えた。
 いくらリリッキーにからかわれようと、食欲には忠実なのである。
「んー? そこまで食いしん坊じゃないんじゃなかったの?」
「やめてよ。ボクをいじめないで」
「勝手に墓穴掘っただけじゃん。ま、いいけどさ」
 笑いながらリリッキーは、持ってきた鞄から布包みを取り出した。
 どんなすごいものが出てくるのか、とポッチーノは興奮したが、出てきたのは焦げ茶色のサイコロみたいなキューブ。
「それ? ……なんだか、あまり不思議な匂いがするね」
 と、自慢の嗅覚から得られた情報をそっくりそのまま呟いた。
「でも、あまり美味しそうに見えないよ。大丈夫?」
「これを美味しいと思うかどうかは、けっこう意見が分かれるみたい。このエキゾチックな味のファンがいないわけじゃないけど、今のところは好奇心で購入するミーハーの方が多いのが実情なんだとさ」
「リリッキー、詳しいね」
「そこに隙間があれば蛇がいると思え、てね。噂好きじゃない蛇人なんていないっての」
 得意げに笑うリリッキーを前に、ポッチーノは試しに1つ、チョコレートを手に取ってみた。
 意外と固いんだな、というのが最初の感想だった。少なくとも、焼いた肉よりは手触りが硬い。
「食べてみて良い?」
「好きにしろよ。そのために買ってきたんだ」
「ありがと。じゃ、いただきます」
 とポッチーノはチョコレートを1口。
 固そうな手触りだったのに舌の上で簡単に溶けてしまったそれは、ポッチーノに大きな衝撃を与えた。
「に、苦い! 苦すぎる!」
 と目を白黒させたポッチーノ。しっぽがピンと立つ。
 これにリリッキーは大笑い。
「買ってみて良かった! やっぱおまえ、最高だわ」
「ねえリリッキー、本当にこんなのが売れてるの? ボクを騙そうとしてない?」
 ポッチーノがいぶかしむも、
「キシシシッ、おまえのような“お子ちゃま”には早すぎたのかもね。向こうで買ってるのは、大人ばっかだよ」
 リリッキーはそう機嫌よく言いながら、自分もまたチョコを1つ食べ、
「特に、ぶどう酒との組み合わせが最高でね。まあ、確かに、これは売れるわ」
 と言いながら自身もぶどう酒を口にする。
「ルポの連中も最近じゃ商売圏を広げようと躍起だから、そのうち、このエンドポイントでも売られるようになるかもね」
「こんな苦いの、ボクは買ってまで食べようとは思わないよ」
 ポッチーノは渋い顔をしてつぶやいた。

 さて、リリッキーやコンパニア=ルポの名誉のために言っておかねばならないことがある。
 リリッキーはこのチョコレートに、不可解な混ぜ物を盛るような真似はしなかった。
 コンパニア=ルポだって、販売する商品に異物などが入らないよう細心の注意を払っている。
 つまりこのチョコレートは、正真正銘のチョコレートなのだ。チョコレートとは、こういうものなのだ。
 だがこの未開な時代、まだ明らかになっていなかったことがいくつかある。
 例えばチョコレートの材料となるカカオ豆にはカフェインが多く含まれていること、そして、

 犬にとってカフェインは天敵だということだ!





 翌日。
「ついに朝になっちゃったなぁ」
 ポッチーノは毛布から抜け出した。
 あんな苦いものを食べたせいなのか、いつも来るはずの眠気がさっぱり訪れず、ついに眠れぬ一夜を過ごしてしまった。
 だというのに頭はさっぱり眠気を感じない。むしろなんだか興奮気味で、何かをしたいという衝動に駆られている。
 この日、ポッチーノは全速力でハウス・ポスタルの事務所へ向かった。
「今日はまだ早い」
「分かった! じゃあ明日、また来るね!」
 デスドールの言葉も半分くらいしか聞いていなかった。
 そのままポッチーノは建物の外へ出たが、どうにもこうにも血が騒ぎ、ついに街の外で無意味にスナザメと追いかけっこする1日を過ごした。
 そして、この夜も眠れなかった。
 しかも次の日もまた、全く同じことが起き、さらにはこの日の夜もまた全く眠れなかったのである。
 チョコを食べてから3日目。
「宛先はキャピタル・ヘリストンだ。1件だけだから、おまえでも難しくない仕事のはずだ」
「分かった! 全速力で行ってくるね!」
 これまた話は3割くらいしか聞いていなかっただろう。
 手紙を受け取ると、ポッチーノはそのまま街の外へ飛び出した。
 ──チョコレートってすごい!
 ポッチーノは感心した。もう3日も寝ていないのに、まだ休みたいという気持ちがわいてこない。
 この調子なら、キャピタル・ヘリストンへ行って、そのまま休まずに帰路へ着くこともできるだろう。
 すごく早く帰ったら、ボスもびっくりするかな、なんて思いながら砂漠の真ん中を爆速で突っ走っていた、そのとき。

 ……カフェインが、切れた……。

「ふああぁぁ」
 ポッチーノは大あくび。急に体が鉛のように重くなってきた。
 当たり前だ、何せ3日もハードな運動ばかりを繰り返し、そのくせ全く寝ていないのだから。
「どうしよ……、なんだか、ねむ、く、なて……」
 嵐のような睡魔に耐え切れず、ポッチーノは鞄を枕にして、砂地の上へ倒れこむ。
 こんな獰猛な生物が住み着いた砂漠の真ん中で無防備に寝れば、何が起きるか。それは一応、分かっていた。
 しかし、どうにも眠いのだ。眠くて眠くて、たまらないのだ。
 ──これが番外編で良かった。
 薄れいく意識の中、ポッチーノはそんなメタいことを思っていた。
 ──本編じゃなくて良かった!
 すやぁ。



「たく、このバカ犬、俺が通りかからなかったらどうする気だったんだよ」
 バーの一角で、Cは愚痴を吐いた。たまたま宅配からの帰りに、砂漠の真ん中で爆睡するポッチーノを見つけたのだ。
 ポッチーノはソファの上で、まだ眠っている。もう半日は寝ているだろう。
 そして、
「念願の可愛い後輩だろ? そのくらい、多めに見てやれよ」
 往年の親友、ガンマはそんなCにからかいの言葉をかける。
「あのな、俺は一言も犬が欲しいとは言わなかった」
「亜人差別は良くないぜ」
 とガンマ。
「それに、なかなか可愛い顔してるじゃん。Cもいい加減、女たらしばっかしてないで、俺みたいに嫁さん持てよ」
「俺だって好きで独り身やってるわけじゃねえんだよ」
 Cは顔を引きつらせながら答えた。
「つーか、よりによってこんなバカ犬に慰めてもらうって、どんだけ負け組なんだよ、俺は」
「えー? 可愛いじゃん。ま、俺の嫁さんに比べたら半歩劣るとは思うけどさ」
「また嫁自慢か。よそでやれ」
「良いじゃん。Cにも、新婚生活の楽しさを教えてやるぜ。いや、ほんと、可愛いのなんのって」
 酒の酔いも合わさってまさに立て板に水、“ロックゾーラ一の愛妻家”を自負するガンマの嫁自慢が今宵も始まる。
 Cはただ仏頂面で話を聞き流し、その後ろでポッチーノは、苦くないチョコレートを食べる夢を見ていたのであった……。




バレンタイン番外編、書いてみました。
しかし「わんこ戦記」のメインヒロインは、
・恋をするには幼すぎるポッチーノ
・お金しか愛してないリリッキー
なので、こんなことに。ただのチョコレート物語やん。
(最新話にてコンパニア=ルポと愛妻家ガンマを出せていたことが、まだ救いでした)

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