衝動的書き殴り
2013年01月16日 (水) 02:07
 ゴシャリ。
 初撃。
 躊躇いなく放たれた拳は頭蓋を打ち砕き脳髄の大部分を破壊した。

 バキッ。バキュリ。
 即座に追撃が飛んでくる。間髪入れず二発。
 一発目で棒立ちになったところで足首を踏み砕かれ、返す刀で左腕を肩口から引き千切られた。

 夜の雑木林と言うこともあって周囲に人の気配はなく、ただ惨劇の音だけが響き続ける。
 断末魔さえ上げさせることなく、確実に、迅速に、執拗に。
 関節を、筋肉を、骨を、内臓を――――彼は、人体としての機能をただ容赦なく、機械的に奪い続ける。

 ……数刻後。
 音に軟らかいものが混ざり始めて、ようやく惨劇は終演を迎えた。
 音が止んだ時、血溜りに浮かんでいたのは、もはや人とは呼べない有様になった肉塊と、それが生前に着ていたであろう、スーツの切れ端。
 そして、返り血に塗れた青年が、それらを見下ろしていた。
 生気のない瞳で。能面の様な表情で。
 拳を解くことなく、己の罪を脳裏に焼き付けるように。

「……終わったか?」

 いつからそこにいたのか、少し離れた位置にひっそりと佇んでいた小さな人影が、静かに声をかけた。
 生い茂る枝の影がその姿を隠して入るが、声の高さや響から恐らくはまだ年端も行かぬ少女であろうことは推測できる。
 惨劇の名残が色濃く残る中でも平然と振る舞って見せる少女は、余りにもこの場に似つかわしくなく、そしてこの現状の異様さを一段と引き立てていた。
 だが、そんな異様さも青年には関係ないらしく、少女の声にも反応せず、ただじっと足元の“人だったもの”をその目に焼き付け続けていた。
 ……わずかに、少女の雰囲気が剣呑なものに変わる。

「……終わったのなら帰るぞ。いつまでもここにいて近隣の住人に目撃されては洒落にならん。後始末は、“本部”の連中の仕事だ」
「……ああ、分かってる」

 今まで沈黙を守っていた青年が、ようやく口を開く。
 気だるげに踵を返した青年に、おもむろに少女が手を差し出すと、彼は拳の血をシャツで拭い、自然な動作でその手を握った。

「甘さは重石にしかならないと、教えたはずだろう? いつになったら捨てられるんだろうな、君は」
「それを捨てるのは、俺が俺じゃなくなった時だけだ。それぐらい、分かってるだろ」

 ……かもしれないな、と。
 少女がため息混じりに呟けば、青年は嬉しそうに笑う。……少女の雰囲気が苦み走ったものに変わったのは、きっと気のせいではないのだろう。
 戯け者め、と口の中で毒づいた少女は仕切り直す様にコホン、と咳払いをして、

「……もういい、それらはまた矯正するとしよう。……これが、私達からのあいさつだ。それでは、」

 ――――“魔女狩り”を始めよう。

 徐々に寒さの増してきた晩秋のこと。
 少女はいないはずの誰かに向けて宣戦布告する。










 ……これは、日本の片田舎で行われた、“不幸な事故”の真実の記録であり、そして、小さな“魔女”の、語られる最初の物語である。










 本命の執筆が進まないストレスのせいでこんなものを書いてしまった。連載にするのも面倒だし、しかしお蔵入りさせるのは悲しいと酷く自分勝手な理由から割烹に掲載。プロットは考えてあるけどたぶん続かない。




 P3おもしれぇwwwwwwwww
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