『お顔をお見せすることは出来ません。どなたにも。例え、その方が私の夫となる方でも――・・・・・・』
美しいその娘の一言が、全ての始まりだった。
王位第一継承権を持つイシュトシュタイン王女・リリアンヌ。絶世の美女と噂され縁談も後を絶たないが、彼女は誰にもその姿を見せたことがなかった。『顔なし姫』と呼ばれるようになった彼女の『最後の縁談』を受けることとなったリガルド国騎士副団長・オーウェンは、視察を兼ねてイシュトシュタイン国を訪れる。しかしそこには、王女を渦中に様々な思惑が潜んでいて――。
「貴女はそれで・・・・・・幸せになれますか」
「少なくとも、誰も不幸にならない道ですわ」
孤高の王女と若き騎士の出会いが、互いの運命をも変えていく。