エルフの森にそびえ立つ生命の樹。
かつて、生命の樹は十年に一度だけエルフを生み出していた。
樹から生まれた子は魔法の才に恵まれ、長寿であったとされる。
しかし、今は亡き魔王によりけしかけられた邪龍によって樹は傷つけられ、
それからは樹からエルフが生まれることは無かった。
エルフが生まれなくなってから五百年。
生命の樹から新たなる命が誕生した。
「それがあなたよセレン」
「ほえぇ・・・」
「お姉ちゃんの話ちゃんと聞いてた?」
「じゃあ、私たちにパパとママはいないのか~」
「そうよ、しいて言うなら私たちの親はあの生命の樹ってことになるかしら」
「五百年・・・か」
「・・・私の顔に何かついてる?」
「リリねぇごひゃk(ズガァ!」
「これでわかった?あなたは村から出るべきではないわ・・・」
「どぼじで?」
「五百年・・・その年月はエルフにとっても決して短いとは言えないの。何かしらの不調があなたにはあるかもしれないわ・・・」
「ぞれでも!!」
「セレン・・・」
「ぞれでもぞどのぜがいがみでみだい!!」
「鼻血を拭きなさい」
渡された布切れで鼻血を拭いてもう一度聞き取ってもらえるように今度は大きな声を張り上げた。
「それでも世界を見てみたいの!!!!!」
「聞き取れてなかったわけじゃないわよ・・・」
キンキンと鳴る耳に顔を顰めながらリリエルは考えた。
セレンは昔から言ったことを曲げない子だから、きっと今回も何を言っても聞かないだろう。
勝手に旅立たれても困るし、ある程度場所を用意して手綱を引いた方が安全で尚且つ安心だ。
「はぁ・・・わかったわ」
「え!」
「外の世界に出てもいいわ」
「ほんとに!?やったー!」
「ただし」
「?」
「まずは王都イルザルムへ向かってそこのウィルエス魔法学校に入学しなさい」
「にゃじぇ?魔法は好きだけど・・・」
「俗世の知識を学んだ方が世界を楽しく見て回れるし、身の守り方も教えてくれるわ」
「うにゃ!」
「それじゃあ、村長さんと相談してくるわね(乗ってくれて良かったわ・・・)」
「リリねぇ!」
「ん?」
「ありがと!だいすき!」
「・・・しょうがない子ね(鼻血出そぅ・・・)」
ここに一人、夢見る少女がいる。