齢九十の老暗殺者ウェイロンには悩みがある。
それは、生涯において一度たりとも死闘を演じていないことだった。
世界最強の拳法使いであるウェイロンは、武術の達人との戦いを求めている。
ところが現実では、銃火器や軍用兵器ばかりが活躍していた。
失望を抱えるウェイロンは、それらを素手で屠る日々を送る。
満たされない人生に彼は精神を摩耗し、ついには老衰で命を落とす。
死亡したウェイロンだったが、突如として神から依頼を受けた。
曰く、異世界を滅ぼそうとする魔王を倒してほしいという。
当初は達観していたウェイロンだが、現地に武術の達人がいると聞いて態度を豹変させる。
依頼を嬉々として承諾すると、希望する能力を授けられることになった。
熟考の末、ウェイロンは神に告げる。
「――若さをくれ。それだけでいい」
特殊な能力など必要ない。
我が肉体と技術があれば事足りる。
それがウェイロンの下した結論であった。
斯くして、ウェイロンは全盛期の肉体を獲得した。
そこに老練された武術が合わさり、彼を世界最強の先へと押し上げる。
強者を渇望する拳法使いは、異世界で新たな人生を歩み始めるのであった。