青年は幼い頃から『異世界』に憧れていた。
隣ばかり気にする大人たちを見て育ってきた彼にとって『異世界』とは夢の場所だった。
しかし、いざ社会人として働いてきた三年の月日は残酷にも無慈悲で『笑う』か『笑われる』か。
いつしか憧れを持つ自分自身を『喋らない』ようになり、周囲からは『仮想敵』となった。
会社の上司からのパワハラ、コソコソと小さな笑い声、現実逃避とも言える理想の『異世界』への執着。
やがて降り積もった雪が固まって落ちるように仕事中に倒れてしまう。
そして目が覚めた場所は望んでいた『異世界』。
だが、忘れてはいけない。
さっきまでは現実逃避できたが今は紛れもない現実世界という『異世界』なのだから。