四方を石壁に囲まれた閉鎖空間で意識を覚醒させた主人公は、自分自身に関する記憶の一切を喪失していることに気付く。
そこが独房であるらしいと察するも、呼びかけに応じる声はない。
異常な寒暖差の気候、日に二度ドアの下から差し入れられる信じ難いほどに不味い食事、何より自分の置かれた状況がまるでわからない不安が、気力と体力を削っていく。
そして、意識を取り戻して十日目、彼は唐突に独房から解放される。
自分と同じ粗末なローブに身を包んだ異形の集団とともに移送されたのは、円形闘技場を彷彿とさせる施設だった。
そこで彼を含むローブの集団は、巨大で凶悪な〝魔獣〟なる生き物との一対一の闘いを強制される。
境遇を同じくする者たちが次々と凄惨な死を迎える中、主人公はどうにか生き残ろうと行動する。
しかし、彼は未だ知らない。
それが、異世界での過酷な生存競争の幕開けであることなど。