ミランダは貴族の間では噂に名高い嘘つき令嬢であった。
だけどそれは全くの濡れ衣で、噂だけが独り歩きしていった結果にすぎない。
本人は嘘などついた憶えもないから、世の中の噂などどこ吹く風で、目下の気掛かりは素直で実直すぎる性格の婚約者ホーレス王太子殿下のこと──
ホーレスはその性格から人を疑わず何でも信じてしまう。過ぎたる素直さは愚か者にも同じだと、王国の貴族たちは皆で馬鹿にしていた。
だがそんな王太子にも良いところが一つある。それは貴族の権力を強めるために、政治の傀儡に出来ることだ。
自分の評判など知らないホーレスは、相変わらず他人からの噂を疑わなかった。だからミランダが嘘つきである噂も素直に信じてしまい、とうとう婚約破棄まで決意してしまう。
こんな事は許せない!
婚約破棄が? いいえ違う。
ミランダにとって許せないのは、婚約者のホーレス王太子を、よってたかって愚か者扱いする貴族たち。
素直で実直なホーレスの性格を愛するミランダは、彼が立派な王太子になるようにと一計を案じることにするのだが────
これはこの国でむかしにあった本当の物語。
*全四話
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