辺り一面を覆いつくす野花の中に浮かぶ、揺れ動く影・・・。
そしてその影の前に、男が一人立っていた。
男が影へ手を伸ばすと、影はその腕に絡まった。
『頼んだ』―。
男には、影がそう言っているように感じた。
すると一陣の風が吹き、影は花の香りと共に塵となって消えた。
男が呆然とその様を見ていると、
「おぎゃあ!おぎゃあ!」
その跡から、赤子の声が聞こえてきた。
男は黙ってその赤子を拾い上げると、その場を後にした。
そして赤子は、いつしか少女となっていた。
これは、一人の少女の運命を辿る冒険譚――――