彼に名前はない。
記憶も、思い出もない、本当に、ただの空っぽだった。
そんな彼が目を覚ましたのは、月の薄明かりが僅かに差し込む、狭く小さな暗い洞窟。
スチャラカポコタンというこのふざけた名前の星には、彼と同じような空っぽが大勢いる。
あらゆる次元の星々から零れ落ちてきた多種多様な彼らは、総じて"リンネ"と呼ばれ、この星の上で、それぞれの住処を持って割と呑気にチャラチャラ暮らしている。
リンネの中には、不思議な宿命を背負う者が稀にいる。
前世を呪って死んだ咎人が背負う"業苦"。
強い光と願いを抱きながら命を落とした者が授かる"奇跡"。
相反する2つの宿命のうち、彼は"奇跡"を宿していることに気付かされる……望む、望まないに関わらず。
そして、苦悩する。
時に、自らの奇跡に怯え。
時に、自らの奇跡に自惚れ。
時に、自らの奇跡に励まされ。
時に、身に余る大力に押しつぶされそうになりながらも、経験を少しずつ糧として、自分の武器に変えていく。
彼はこの星で、様々なリンネが抱える"業苦"と"奇跡"という2つの宿命と向き合い、自らの存在意義と、そして、失われた記憶の謎を追い求めていく。
一歩一歩、確かに歩いていく。
その道すがら、出会う人々との絆を深めながら。
無限の旅路がもたらす、出会いと別れという、溢れんばかりの奇跡と希望を噛み締めながら。
誰かの物語の終わりと、無限の旅の始まりを、その瞳に宿して。
って感じ。